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2011年7月5日 水曜 NHKニュース |
ごぼうの種ですい臓がん治療 漢方薬として使われてきたごぼうの種の成分が、すい臓がんの治療に役立つ可能性があることが富山大学などのマウスを使った実験で分かり、治療薬の開発を目指して臨床試験が始まりました。 この研究は、富山大学の和漢医薬学総合研究所と、国立がん研究センター、それに富山県高岡市の製薬会社が、共同で取り組んでいるものです。研究グループは、自覚症状がほとんどなく、手遅れになることが多いすい臓がんの治療に漢方薬を利用できないか調べるため、500種類以上の漢方薬の成分を試験管の中のすい臓がんの細胞に直接、投与したところ、解熱剤として使われてきたごぼうの種に含まれるアルクチゲニンという成分にがん細胞を小さくする効果があることが分かりました。また、すい臓がんを発症させたマウスにアルクチゲニンを口から与えたところ、およそ1か月後には投与しなかったマウスに比べてがん細胞の成長が3分の1ほどに抑えられたほか、アルクチゲニンを与えたマウスでは与えないマウスの倍の100日程度生きていたケースもあったということです。実験結果を受けて研究グループは、先月下旬から、すい臓がんの患者に顆粒状にしたアルクチゲニンを服用してもらう臨床試験を始めており、安全性や有効性を確認できればすい臓がんの治療薬として開発を進めることにしています。富山大学和漢医薬学総合研究所の門田重利教授は「ヒトに対しても治療効果があることを証明し、すい臓がん患者を助けられるよう新しい薬を作りたい」と話しています。 (2011.7.5) ▽記事引用元 NHK(7月5日 5時19分) |
2010年12月23日 木曜日 河北新報社 2010/12/24 デーリー東北 |
キノコから抗がん物質 青森県立保健大グループが発見 青森県立保健大は22日、健康科学部栄養学科の乗鞍敏夫助教(生活科学)の研究グループがキノコの一種・ボタンイボタケから抗がん作用のある物質を発見し、特許を出願したと発表した。 発見したのは「テレファンチンO」という生理活性物質。正常な肝細胞には毒性を示さず、肝がん細胞と大腸がん細胞の生存率を下げ、増殖を抑える機能があるという。 グループはボタンイボタケから、抗アレルギー作用がある「バイアリニンA」の抽出にも初めて成功。テレファンチンOと同様、抗がん作用があることを突き止めた。 少なくともバイアリニンAは、体内でタンパク質を分解する酵素「カスパーゼ」の働きを低下させることも分かった。食品に由来する物質がこの作用を持つことは非常に珍しく、カスパーゼが関係するとみられる肝疾患、虚血性疾患、パーキンソン病などの対策に応用が期待されるという。 ボタンイボタケは直径5〜10センチ。八重咲きの花のような形状で、全国の雑木林に自生している。中国では食用になっている。 乗鞍助教は「食べて吸収されるかどうか、動物実験をしている。将来的には地域の企業と協力して、商品化にこぎ着けたい」と話している。 以上 河北新報社 松林などに自生し、青森県内でも採取できるボタンイボタケというキノコに、高い抗がん作用のある物質が含まれていることを、県立保健大栄養学科の乗鞍敏夫助教と松江一教授らの研究グループが突き止め、23日までに特許を出願した。乗鞍助教は「研究で地域資源を開発し、地元に還元できれば」と話している。 ボタンイボタケは花状のキノコで、ほぼ全国に分布する。中国では食用とされるが、日本ではあまり食べられていないという。 乗鞍助教は、県産業技術センター(黒石市)との共同研究で、ボタンイボタケのアルコール抽出物から「バイアリニンA」と「テレファンチンO」という物質を発見。この二つの物質が、人間の肝がん細胞と大腸がん細胞の増殖を抑制することを突き止めた。 正常な細胞には毒性を示さないことから、薬などへの応用が期待されるが、そのまま食べて効果があるかどうかは、まだ分かっていないという。 乗鞍助教は今後、学会発表に向けて論文作成を進めるとともに、県産のほかのキノコについても研究する考えを示している。 【写真説明】 抗がん物質を含むことが分かったボタンイボタケ=青森県立保健大提供(リンクが途切れたのでスゴモリにリンクしています) 以上 デーリー東北 |
2010年11月10日(水)10時33分配信 日本テレビ系(NNN) |
ケシの代わりに…アフガンでサフラン栽培 スペイン料理などでおなじみのサフランライス。あの黄色のもととなるサフランの花がアフガニスタンで栽培されている。 いまだにテロや戦闘の情報が伝えられているアフガニスタンのヘラートにある畑では、女性たちが熱心にサフランの花を摘んでいる。花自体は紫色で、花から取り出す赤い雌しべがサフランライスを黄色く色づける。 この畑では最近までケシが栽培され、ヘロインの原料としてロシアなどに密輸されていた。その上、収益がテロリストの資金源になっていると国際社会からは批判を受けていた。そこで、地元政府の支援を受けて現地企業が始めたのが、ケシより栽培しやすく値段も高いというサフランの栽培だった。 小さな花がアフガニスタンの未来の一端を担っている。 |
2010年11月4日(木)7時56分配信 産経新聞 |
ウコン、がんにも有効 世界的研究者が報告 酒の悪酔い防止に効果があるとされるウコンが、がんや心臓病の予防・治療にも効果を持つ可能性が高い−。医薬品メーカー「セラバリューズ」(東京都千代田区)が1日に行った研究発表会「ウコン成分“クルクミン”の多様な機能と応用研究の最前線」で、日米の研究者がこのような報告を行った。 都内で行われた発表会には、クルクミン研究の世界的権威で米テキサス州立大MDアンダーソンがんセンター教授のバラット・アガワル氏や日本人研究者ら計5人が参加した。 この中で、アガワル氏は「クルクミンを摂取すると、がんのリスクが低減するほか、肥満、糖尿病、高脂血症などほとんどの慢性疾患を予防できることが実験で示されている」と強調した。 秋田大大学院医学系研究科の柴田浩行教授も「大腸がんの治療中にクルクミンに出合った。クルクミンは数多くの病気の因子を標的にできる成分として期待できる」と報告した。 このほか、静岡県立大薬学部の森本達也教授が「心臓病にも効果がある可能性が高い。現在臨床を進めている」と説明した。 京都大医学部の金井雅史助教は、膵臓(すいぞう)がん治療の新薬としてクルクミンが注目されていることや自然由来の成分であり安全性が極めて高いことを紹介した。 |
シイタケ がんの免疫指標が向上 中性脂肪や血圧下げる成分も 米国でも「Shiitake」として人気が高まっているシイタケ(椎茸)。おいしいだけでなく、免疫を活性化し、中性脂肪値や血圧を下げるなどの健康成分が知られる。きのこになる前の菌糸体をがん再発予防を期す患者が食べ、免疫指標が向上した臨床試験結果も報告された。(八並朋昌) ≪菌糸体に着目≫ シイタケ菌糸体にはβ(ベータ)グルカンやLEPなど複数の免疫活性成分が多いことに着目した財団法人大阪癌研究会の検討会と小林製薬は、がん治療後に再発予防を期す50〜70代の患者13人に、シイタケ菌糸体の抽出物を毎日食べてもらった。 その結果、がん細胞を攻撃する免疫たんぱくインターフェロンγ(ガンマ)と、免疫を抑えるインターロイキン10の比率でみる免疫指標が、20週後に10人で最高4・57倍に向上。この成果を4月の米国がん学会で発表した。 同研究会理事長で大阪大名誉教授の田口鉄男さん(81)は「がん患者は免疫抑制状態になっており、免疫活性化を試みてもなかなか効かない。今回の結果は、ひょっとしたら免疫抑制状態の解除につながる可能性もあるが、効果の判断はがん進行度や生体機能など個々の患者の状態を含め、慎重な検討を重ねる必要がある」と話す。 ≪ジャンボな含有率≫ きのこ(子実体)としてのシイタケの加工や改良も盛んだ。40年以上にわたり、βグルカンの一種、レンチナンの研究を続ける味の素は、超微粒子化で吸収を高める技術を確立し、平成14年に高機能食品として液体の「ミセラピスト」を発売。1袋にレンチナン15ミリグラムが含まれる。 財団法人日本きのこセンター(鳥取市)が昭和56年に開発した「菌興(きんこう)115号」は、肉厚が3・5センチ以上もあるジャンボシイタケとして人気だ。「7、8年前にレンチナンの含有率を調べたところ、一般的なシイタケの1・6倍もあることが分かった」と、同センター菌蕈(きんじん)研究所の所長、福政幸隆さん(59)。 鳥取大医学部と共同で、菌興115号の微粉末をほぼ健康な人に2カ月間食べてもらったところ、「統計的に抗酸化力が高まることが確認できた」。中性脂肪値などを下げるエリタデニンなども含まれ、高めの血圧や中性脂肪値が下がった人もいたという。地元の菌興椎茸協同組合が微粉末を「しいたけパワー115」として販売している。 ≪過大な期待は禁物≫ 手軽な健康法として福政さんは「ピンポン玉程度の干しシイタケをコップ1杯の水に一晩浸した戻し汁を毎日飲むと、血圧を正常化する効果がある」と話す。 干しシイタケは産地偽装されやすく、研究所は重元素で国産か中国・韓国産かを見分ける高精度判別法の開発にも着手している。 財団法人日本きのこ研究所(群馬県桐生市)は、エリタデニン含有量が10倍に達するシイタケ「H−44」を平成14年に開発。「含有量の多い菌種の交配を重ね、5年がかりで開発した。現在は健康食品用に栽培されている」と所長の豊増哲郎さん(62)。 ただ、豊増さんは「シイタケに健康成分が多いことは事実だが、過大な期待は禁物。きのこだけで病気が治るなどと思わないで、病気になったらきちんと治療を受けて」と指摘する。 ■免疫活性成分多く、ミネラルも豊富 きのこは一般的に免疫活性成分が多い。シイタケからは、国立がんセンターが昭和43年、免疫活性成分「レンチナン」の精製に成功。昭和60年に抗腫瘍薬として承認された。ただ、レンチナンは分子が大きく腸からはほとんど吸収されない。菌糸体は、きのこ(子実体)を形づくる菌細胞のつながり。シイタケの子実体は、レンチナンなど免疫活性成分のほか、血管を広げ血圧を下げるアデノシン、コレステロール・中性脂肪値を下げるエリタデニンなどを多く含む。食物繊維、ビタミンB類・D2、ミネラルも豊富だ。 |
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2008年11月27日 記事:共同通信社 提供:共同通信社 |
カテキンの抗がん作用増強 京大、酵素で安定化 緑茶に含まれるカテキン成分を酵素の力で安定化し、がん細胞の増殖を抑える作用を強めることに成功したと、京都大の松村和明(まつむら・かずあき)特任助教らのチームが26日、発表した。 カテキン成分に抗がんや抗ウイルス作用があるのは知られているが、化学的に不安定なため体内で分解されやすく、医薬品としての応用に課題があった。 正常な細胞に対する毒性がほとんどないのも確認。松村特任助教は「将来はカテキンを使って副作用が少ない抗がん剤ができるかもしれない」と話している。 チームは、カテキンの主成分に酵素を使って脂肪酸をくっつけると、分解されにくく細胞内に取り込まれやすい構造になることを発見。がん細胞を移植したマウ スにカテキン成分を投与して1カ月間観察すると、投与しない場合に比べ、がん組織の大きさが10分の1程度に抑えられるのを確かめた。 |
2008年8月19日 記事:共同通信社 提供:共同通信社 |
記憶力向上させる化合物を発見 ターメリックから合成 武蔵野大学薬学部の阿部和穂教授らは18日、カレーの香辛料として使われているターメリックの含有成分から合成した化合物「CNB-001」が記憶力を向上させる効果があることをマウスを使った実験で発見したと発表した。 ターメリックに含まれるクルクミンという化合物にはアルツハイマー病の原因物質と目されている「アミロイドベータタンパク」の蓄積を防ぐ効果があることが知られているが、阿部教授は米ソーク研究所のデビッド・シューベルト博士と共同でクルクミンと誘導化合物の脳に対する作用を研究。クルクミンの化学構造を少し変えて「CNB-001」を合成させることに成功した。「CNB-001」は新しい認知症治療薬候補になると期待されており、研究結果は米老年医学専門誌最新号に掲載された。 |
2007年6月4日 Medscape |
癌患者の倦怠感へのニンジン、ドネペジル、モダフィニル ニンジン、ドネペジル、モダフィニルは有望性の一端は見えているが、癌患者の倦怠感の薬物治療を支持するエビデンスは現在でも十分ではない Zosia Chustecka Medscape Medical News 【シカゴ 6月4日】癌患者の倦怠感をニンジン(オタネニンジン、朝鮮人参)、ドネペジル(商品名アリセプト)、モダフィニル(商品名モディオダール)で治療する複数の最新試験が米国臨床腫瘍学会(ASCO)の第43回年次会議において発表され、若干の有望性が示されたが、いずれも薬物治療を支持するだけのエビデンスは不足しており、ベネフィットに関して一致したエビデンスは唯一、運動プログラムによるものだけだった。この結論は、これら最新試験について考察したトロント大学プリンセス・マーガレット病院(オンタリオ州)のIan Tannock, MD, PhDによるものである。 Tannock博士は、この分野における研究努力を称賛はしたが、さらなる作業が緊急に必要であるとも語った。同博士によると、倦怠感は癌患者が訴える症状のトップであるが、往々にして医師はそれについて尋ねることすらしない。『Annals of Oncology』に掲載された1,000例以上の癌患者の調査によれば、倦怠感を訴える患者は58%おり、これは疼痛(22%)や悪心・嘔吐(18%)を訴える患者の倍以上にあたる。 ニンジンの有望な結果 もっとも肯定的な試験はニンジンに関する試験で、ASCOの記者会見において注目された。筆頭著者であるメイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)の腫瘍科准教授であるDebra Barton, PhDが、ニンジンはもっとも一般的なサプリメントのひとつであり、すでに多くの癌患者が使用しているとコメントした。漢方医学では使用の長い歴史があり、「強壮薬」として知られ、体力を高め、ストレスに打ち勝つ効果があるとされている。前臨床試験では、ニンジンに抗疲労効果があることが示されており(ラットの有酸素的遊泳能力を向上させるなど)、ニンジンをテーマにした2003年のASCOで発表された過去の臨床試験では、癌生存者に有益であることが示されている。 今回の試験で用いられた製品は、Ginseng Board of Wisconsinによる4年物のアメリカニンジンの根で、同会議が製品を提供した。分析は独立した業者が行い、米国立癌研究所(NCI)のCommunity Oncology Programが資金を提供した。 この試験では、推定余命が6カ月以上のさまざまな種類の癌患者282例を対象にして、3段階のニンジン用量(750mg、1,000mg、2,000mg)とプラセボを比較した。患者の約半数が化学療法を受けていた。Barton博士の話によると、副作用の報告率と副作用による脱落数は試験した群の間で差がなく、この製品は「忍容性がある」ように思われた。 ニンジン用量が高い2群は、8週間後の簡易倦怠感質問表(Brief Fatigue Inventory: BFI)と生活の質質問表SF-36の活動性下位尺度への反応がプラセボ群よりも優れていた、とBarton博士は報告した。また、「やや良くなった」と「とても良くなった」と報告した患者の割合は、ニンジン1,000mg群では25%、2,000mg群では27%だったが、プラセボ群と750mg群ではともに10%しかなかった。 Barton博士は結論として「高用量でなんらかの作用があるようだ」と述べ、「これはノイズの可能性もあるが、無視するには強すぎるシグナルである」と言い添えた。同博士は記者会見において、この結果を「非常に有望」なものだとし、さらに規模を拡大した臨床試験を同博士らの研究班が現在準備中であると述べた。 「なんらかの手がかりがあるようで、非常に刺激的な研究だ」と、この記者会見の司会を務めた、ロンバルディ総合癌センターおよびジョージタウン大学病院(ワシントンD.C.)のBruce Cheson, MDが意見を述べた。そうではあるが、Cheson博士、Barton博士はともに、ニンジンの使用を患者へ推奨するにはまだエビデンスが十分ではないと語った。現時点のエビデンスでは、倦怠感に効果がある介入法として支持されているのは唯一、運動のみであることを両博士は強調した。Cheson博士によれば、いずれにせよどのサプリメントを使用するかは患者の自由意志に任されているので、ニンジンが選ばれることが多い。「私が言うべきは、このサプリメントが治療に干渉するかどうかはまったく解っていないので、医師による治療が始まったならば、サプリメントは止めて欲しいということだけだ」。 モダフィニル は認知機能改善に効果がある? 肯定的な効果の手がかりがもうひとつ、乳癌患者を対象にモダフィニル (商品名Provigil、Cephalon社)を使用した試験で得られている。モダフィニル はナルコレプシーを適応として承認されている覚醒促進剤である。この試験で倦怠感に対する陽性の効果が示されたと伝えられており、その結果は筆頭著者であるロチェスター大学(ニューヨーク)のGary Marrow, MDが近々発表することになっている。 ただし今回のASCO会議ではその研究の一部である二次分析の結果だけが報告された。それによると、モダフィニルは認知機能のある側面に対して陽性の効果があることが示された。ジェームスP.ウィルモット癌センター(ニューヨーク州ロチェスター)のSadhna Kohli, PhDの説明によると、この試験は、患者全員がモダフィニルを服用する4週間のオープンラベル期間と、そこで倦怠感に有効な作用が報告された患者のみ(76例中68例)をランダム化して、モダフィニルまたはプラセボでさらに8週間治療する期間の2つの部分で構成されている。今回の二次分析では注意力と記憶速度に有意な改善が見られた。Kohli博士はその結果を受けて、化学療法後の認知障害(『chemofog』や『chemobrain』と呼ばれることもある)を訴える乳癌患者を対象にしてモダフィニルをさらに詳しく検証すべきだとしている。 ところが今回の会議で発表された3つめの試験である倦怠感へのドネペジルを調べた試験の結果は否定的だった。MDアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)のEduardo Bruera, MDの説明によると、抗コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルは、アリセプト(Eisai社)の名称でアルツハイマー病に対して使用されている。同博士らが過去に行い、2003年のASCO会議で発表したオープンラベルパイロット試験では、麻薬使用中の癌患者における倦怠感に対して改善効果があった。しかし今回のプラセボ対照試験では2群間に差が見つからなかった。「癌関連倦怠感の治療においてドネペジルはプラセボよりも優位ではなかった」とBruera博士は結論で述べている。この試験は癌患者142例を対象にして、ドネペジルの用量を1日5mgとし、1週間後に評価を行った。 その最後の2つの要因が今回の否定的な知見の一因になっている可能性があるという指摘が、聴衆の1人からあった。意見を述べたウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州ウィンストン・セーレム)のEdward Shaw, MDによれば、同博士らが2006年に発表したように(Shaw EG et al. J Clin Oncol. 2006; 24;1415-1420)、照射治療を受けている脳腫瘍患者を対象にして行った第II相試験において、ドネペジルは倦怠感に陽性の効果があった。ただし、その時に用いた用量はもっと高い10mgであり、評価は24週間後に行った。Shaw博士は「倦怠感は時間を経るとともに減少し続けた」と述べ、倦怠感のような慢性症状に対する効果を期待するのに1週間では短すぎる、と言葉を続けた。Shaw博士らは現在、癌関連倦怠感に対するドネペジルの第III相試験を準備中である。 American Society of Clinical Oncology 43rd Annual Meeting: Abstracts 9001, 9003, and 9004. Presented June 3, 2007. Medscape Medical News 2007. (C) 2007 Medscape ※(注)アメリカ人参(広東人参、西洋人参で、我々の使う植物御種人参とはちがう、漢方薬局一貫堂) |
2006年8月18日 薬事日報 |
コショウが嚥下反射を改善、誤嚥予防に有用 調剤薬局チェーンのオオノ(代表取締役社長大野武氏)と東北大学の研究チームは、黒胡椒精油由来の「喉下障害改善剤」について特許登録を終え、製品開発を進めている。東北大学医学部の海老原孝枝氏らが中心になって、黒胡椒の嚥下能力に及ぼす作用について研究してきたもので、黒胡麻精油を毎食前に嗅ぐことによって、嚥下能力の改善が図られるとの研究結果が得られている。 海老原氏らの研究によると、胡椒の香りを嗅ぐと反射的に唾液が分泌されるだけでなく、嚥下に関係する脳の特定領域の血流が増加することが分かった。高齢者では細菌性肺炎ばかりでなく、誤嚥性肺炎もかなり多くを占めている。特に、脳血管障害など基礎疾患を抱えているケースでは、誤嚥の予防が重要。食品として使用されている胡椒で予防できれば意義は大きい。研究成果は、近く「アメリカ老人医学会誌」に掲載される。 海老原民らは、黒胡椒精油の嚥下能力改善作用が、唾液分泌ばかりでなく、嚥下に関係する脳の領域にも作用しているのではないかとの仮説を立て、脳血流の検査を行った。その結果、嚥下に関係する脳領域の血流量が増えていることが確認された。 研究は東北大学医学部老年内科が中心になり、入所者の半数以上が脳血管障害などにより、嚥下能力低下が認められている宮城県内の老人保健施設で行われた。平均年齢85歳の男女入居者105人を二つのグループに分け、それぞれ1カ月間、毎食前に黒胡椒精油、ラベンダー精油、水の臭いを嗅いでもらい、食べ物を口に入れてから、嚥下反射が起こるまでの時間を調べた。その結果、実験前は平均15〜17秒だったものが、黒胡椒精油のグループは平均約4秒と大幅に改善されることが見出されたという。 共同研究を行ってきたオオノでは、黒胡椒精油由来の嚥下障害改善剤としての特許登録を、今年1月27日に終えている。特許権者は東北テクノアーチとオオノ。特許登録されたのは、「ブラックペッパー精油の有効成分を経鼻吸入形態にて適用される嚥下障害改善剤」で、製品については現在開発中としている。 |
2006年3月22日 東奥日報 |
発酵ニンニクに強い抗がん作用 ニンニクを熟成させてできる黒い発酵ニンニクの成分に、生ニンニクよりも強い抗がん作用があることが、弘前大学医学部保健学科(佐々木甚一教授)のマウスを使った動物実験で明らかになった。全国的に知られる本県産ニンニクのがんへの効能に、新たな期待が高まる。 実験ではマウスにがん細胞を移植。二日目と四日目、六日目にそれぞれ一回ずつ、発酵ニンニクから抽出した成分一ミリグラムを注射で投与、三週間後のがんの大きさを比較した。 その結果、マウス五匹に投与したケースで、二匹でがんが完治。ほかの三匹は、がんの大きさが比較対照群に比べて、約四割に縮小した。二回目の実験でも三匹でがんが完治。ほか二匹は、がんの大きさがほぼ半分となった。 生ニンニクを使った同様の実験では、がんの大きさは約六割と小さくなったものの、完治したマウスはなかった。 一方、試験管を用いた実験で、発酵ニンニクをがん細胞に直接触れさせてみたところ、がんに変化はなかった。発酵ニンニクの抗がん効果は、がん細胞に直接作用するものではなく、体内の免疫を活性化させたものと推測される。 佐々木教授は今年春で退職となるが「もし、実験設備があったら、今度は、発酵ニンニクを直接食べさせた時の効果を確かめる必要がある。ぜひ、実験したい」と話している。 発酵ニンニクは生ニンニクよりも、ポリフェノールが五倍、体力増強作用で知られる「S―アリルシステイン」が三倍に増加しているのが特徴。食感はドライフルーツに近い。 |
2006年1月17日 毎日新聞朝刊 |
魚食べると心臓病予防実証 魚をよく食べる人はあまり食べない人に比べ、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患にかかるリスクが最大で約4割下がることが、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の約4万人を対象にした疫学調査で分かった。17日発行の専門誌に発表した。 岩手県、秋田県、長野県、沖縄県に住む40から59歳の男女に90年から11年間、追跡調査。食べた魚の種類や摂取量から魚に含まれ、血液の粘りけを押さえるとされるDHA(ドコサヘキサエン酸)等の量を計算した。期間中に虚血性心疾患にかかった男性207人、女性51人の計258人について、摂取量に応じて五つの群に分け比較した。 1日に魚を食べるのガットも少ない群(脂肪酸換算0.3グラム)の発症率を1とした場合、2番目に少ない群(同0.6グラム)は心疾患全体と心筋梗塞ともに0.7と低下。最も多く取る群(同2.1グラム)では心疾患全体で0.58、心筋梗塞では0.35に下がった。DHA量で見ると、脂肪酸0.3グラムは焼きマイワシ0.5匹程度、同2.1グラムは3.6匹程度に当たるという。【山本建】 |
2005年11月5日 MedWave 本日のトピックス |
キャベツやブロッコリーに肺がん予防効果 観察研究では、野菜、特にアブラナ科のキャベツやブロッコリーの摂取が肺がんを予防することが示されている。これらの野菜はイソチオシアネートを豊富に含むが、イソチオシアネートについては、動物実験で肺がんに対する化学予防効果が確認されている。フランス国際がん研究機構(IARC)のPaul Brennan氏らは、イソチオシアネートの排出に関わるグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の遺伝子型により、アブラナ科野菜の肺がん予防効果が異なることを明らかにした。詳細は、Lancet誌2005年10月29日号に報告された。 イソチオシアネートの排泄に主に関わるのは、GSTのうちGSTM1とGSTT1と考えられている。これらの遺伝子型についてはnull型(−)の同型ホモ接合体(欠損型)が存在する。欠損型の人は該当する酵素を持たない。したがって、血中イソチオシアネート濃度が高くなる可能性がある。 これまでにも、アブラナ科野菜の肺がん予防効果を示した小規模な研究は複数あった。著者らは、結論を得るためには大規模なケース・コントロール試験が必要だと考えた。 対象は、伝統的にアブラナ科野菜の摂取量が多い東欧5カ国とロシアの、肺がん患者2141人と対照群2168人。アブラナ科の野菜(キャベツ、ブロッコリー、芽キャベツ)3つを含む23食品の摂取頻度を尋ねた。全員についてGSTの遺伝子型を分析した。 アブラナ科の野菜を1週間に1回以上摂取する人を、1カ月に1回以下の人と比較すると、調整済みオッズ比は0.78(95%信頼区間0.64-0.96)。GSTの遺伝子型で分類して比較すると、オッズ比は、GSTM1欠損型が0.67(0.49-0.91)、GSTT1欠損型が0.63(0.37-1.07)、GSTM1とGSTT1の両方が欠損型の場合は0.28(0.11-0.67)となった。GSTM1とGSTT1が(+)の人に対する予防効果は、有意ではなかった(0.88、0.65-1.21)。 次に喫煙歴で集団を分類。喫煙歴のない集団でアブラナ科野菜の週1回以上の摂取の肺がん予防効果が有意だったのは、GSTM1(+)(オッズ比0.36、0.16-0.79)、GSTT1(+)(0.40、0.22-0.74)、GSTM1とGSTT1の両方が(+)(0.31、0.14-0.70)のグループ。反対に喫煙者で予防効果が有意になったのは、GSTM1欠損型(0.70、0.50-0.96)、GSTM1とGSTT1の両方が欠損型(0.31、0.12-0.82)のグループだった。この結果について著者らは、喫煙者ではタバコ由来の成分により血中GSTレベルが上昇する傾向があり、野菜の効果がGST欠損者で明白に現れるのではないか、と考えている。 著者らは、得られたデータは、特定の遺伝子型の人に対するアブラナ科野菜の肺がん予防効果を示す強力な証拠を提供したと述べている。 なお、GSTM1は、タバコ由来の発がん物質ベンツピレンの分解にも関わる。欠損者では喫煙による肺がんリスクが上昇することが知られている。今回の論文では、GSTM1欠損によるリスク上昇は考慮されていないが、GSTM1欠損者に対する野菜の効果は有意であったことから、禁煙達成までの間、キャベツやブロッコリーを積極的に食べるよう心がけてはどうだろうか。 本論文の原題は「Effect of cruciferous vegetables on lung cancer in patients stratified by genetic status: a mendelian randomisation approach」。現在、全文がLancet誌Webサイトのこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト) |
2005年10月1日 MedWave 本日のトピックス |
植物エストロゲンを多く食べると肺がんリスクが減少 イソフラボンやリグナンなどの植物エストロゲンの摂取量が多い人は、肺がんを発症するリスクが減少することがわかった。これは、米テキサス大学のMatthew B. Schabath氏らが、肺がん患者と対照群の計約3400人を対象に行った研究で明らかになったもの。Journal of American Medical Association(JAMA)誌2005年9月28日号で発表した。植物エストロゲン摂取と肺がんの関連性についての疫学調査は、珍しいという。 Schabath氏らは、1995〜2003年にかけて、肺がん患者1674人と対照群1735人について、植物エストロゲンの摂取量や、ホルモン療法実施の有無などについて調査を行った。 その結果、植物エストロゲンの摂取量が多いグループは、少ないグループに比べ、肺がんリスクが減少する傾向が見られた。具体的には、総イソフラボン摂取量が多い上位25%のグループは、下位25%のグループに比べ、肺がん発症リスクが約32%少なかった(オッズ比0.68、95%信頼区間:0.54〜0.85、p<0.001)。同様に、総リグナン摂取量については、リスクは約28%減少(オッズ比0.72、同:0.58〜0.89、p=0.006)、総フィトステロール摂取量では、肺がん発症リスクは約21%減少した(オッズ比0.79、同:0.64〜0.97、p=0.03)。 また総植物エストロゲン摂取量について見てみると、上位25%のグループは、下位25%に比べ、肺がん発症リスクが約24%減少した(オッズ比0.76、同:0.61〜0.94、p=0.02)。ただし、女性のみについて見てみると、総植物エストロゲン摂取量から、コーヒーや紅茶からの摂取を除いた場合にのみ、摂取量増加に伴う肺がん発症リスクの減少が見られた。 なお、植物エストロゲン摂取量の増加に伴う肺がんリスクの減少は、喫煙の有無にかかわらず認められた。 本論文の原題は「Dietary Phytoestrogens and Lung Cancer Risk」。アブストラクトはJAMA誌Webサイトのこちらまで。(當麻 あづさ、医療ジャーナリスト) |
2005/6/8(水) 共同通信 |
ミカンに肝障害予防効果? 果樹研が静岡で住民調査 ミカンを多く食べると肝機能障害や動脈硬化の予防に役立つ可能性があることが、果樹研究所(茨城県つくば市)などの調査で8日までに分かった。 同研究所と国立長寿医療センター(愛知県大府市)が、温州ミカンの産地として有名な静岡県三ケ日町の男女1073人を対象に調査した。 その結果、ミカンに含まれるカロテノイドの一種、ベータ・クリプトキサンチンの血中レベルが高い人ほど、アルコール性肝障害の指標となるガンマGTP値や、動脈硬化の度合いを示す数値が低かった。同じカロテノイドの一種で、緑黄色野菜に多く含まれるベータ・カロテンについても同様の結果だった。 ミカンは、オレンジの約10倍のベータ・クリプトキサンチンを含み、過去の調査ではミカンを多く食べると血中濃度が高くなることが分かっている。 (共同通信) - 6月8日9時14分更新
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2005/3/9(水) 日経産業新聞 |
リンゴ、乳がんリスクを抑制
米コーネル大学の研究グループは、毎日リンゴを食べると乳がんの発生リスクが低下する可能性があることをマウスの実験で確認した。研究グループはこの結果に基づき、がん予防にはサプリメントよりも果物や野菜を多く摂取するのが有効だと主張している。人間が食べる量に換算して1個、3個、6個に相当するリンゴをマウスに毎日、半年間与え続けたところ、腫瘍(しゅよう)の発生率がそれぞれ17、39、44%低下した。リンゴに含まれる抗酸化物質が、細胞を破壊するフリーラジカルを一掃するためとしている。
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2004/6/29(火) MedicalNews共同通信 最新医療 2004.6.29 |
ウコン、がん発生を抑制
千葉科学大薬学部 カレー粉の約40%を占めているターメリック(ウコン)には「クルクミン」という独特の成分が含まれている。 千葉科学大薬学部の木島孝夫教授が、マウスの背中に発がん物質を塗る実験で、クルクミンの効果を調べた。通常、10週ですべてのマウスの背中にがんができるが、途中でクルクミンを塗ったり、摂取させると、10週で20−30%のマウスにしか、がんはできず、20週経過で80%にはがんができたが、20%には、がんはできず、がん発生を抑える効果が見られた。 肝機能を高めるとされるクルクミンの効果を、マウスにダイオキシンを与え、肝障害を起こす実験で調べた。通常、7週ですべてのマウスが肝障害で死ぬが、クルクミン投与のマウスは80%が生存。肝臓に良いとされる漢方の小柴胡湯の投与では40%の生存だった。 |
抗がん作用 成熟トマトから成分の結晶発見 熊本大大学院研究班 熊本大大学院医学薬学研究部(熊本市)の天然薬物学研究室(野原稔弘教授)のグループがこのほど、成熟トマトから抗がん作用がある成分・ステロイド配糖体の結晶を初めて抽出した。 成熟果実には存在しないという定説を覆す研究で、このほど世界的なオランダの学術雑誌「テトラヘドロン」に掲載された。 トマトの果肉には、抗がん作用があると言われる色素・リコピンも含まれ、野原教授は「トマトが健康に有益だということを証明した。サプリメントなど健康食品の開発につなげたい」と話している。 天然薬物学研究室は、これまでに約四十種類以上のナス科植物を調べ、配糖体の抗腫瘍(しゅよう)成分を探していた。今回の研究では、トマトの果実を水に溶かして結晶を取り出した。こうした研究ではメタノールを使うのが一般的だが、トマトの果肉は水に溶けやすいため成分を多量に抽出でき、化学構造を解明するのに役立った。 同研究室はステロイド配糖体の抗腫瘍作用を調べるため、ヒト乳ガン細胞と、マウスメラノーマ(皮膚がんの一種)細胞に濃度の違うステロイド配糖体を加え、四十八時間後にガン細胞の数を測定した。その結果、両方の細胞の数が減り、がん細胞の増殖抑制効果が明らかになった。このほか、動脈硬化やヘルペスの予防にも有効なことも分かった。 実験に使ったトマトは桃太郎、ミニトマトなどの生食用と、加工用のサンマルツァーノ種。いずれもステロイド配糖体が含まれていた。 この研究に対し、世界的な生化学者で元・ドイツ科学アカデミー植物生化学研究所所長のクラウス・シュライバー博士から、同研究室に「これからの化学、生化学、薬学研究の基礎になる重要な科学的成果だ」との賛辞も寄せられた。 トマトの研究は、大学院生の藤原章雄さん(25)ら学生三人を中心に2003(平成15)年6月から、本格的に始めた。 【語句】 ステロイド配糖体とは 抗菌作用を持つステロイドと糖の分子が結合した物質。トマト果肉のステロイド配糖体は分子量が比較的大きく、糖が多いことから、水に溶けやすい性質を持つ。 |
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2004/5/16(日) 南日本新聞ニュース 07:30 |
奄美のきび酢にがん予防効果? −「白血病細胞に自殺現象」 山梨大院・三村教授が講演 山梨大学大学院の三村精男(あきお)教授(生命工学)は14日、瀬戸内町であった「奄美かけろま長寿食文化研究会」で講演し、「奄美産サトウキビからつくったきび酢には、がんの一種である白血病細胞を自殺させる効果がある」とする研究成果を明らかにした。 三村教授は5年前から長寿者の多い奄美群島の基幹作物サトウキビに着目。きび酢のがん予防効果について、川崎医科大学(岡山県)との共同研究を続けてきた。 研究の結果、奄美産サトウキビからつくったきび酢と白血病細胞を一緒に培養した場合、白血病細胞が自殺現象(アポトーシス)を起こすことを確認。さらに遺伝子を傷つけてがんや生活習慣病などを引き起こす活性酸素を消す能力も認められたという。 三村教授は講演で「『きび酢を飲めばがんにならない』と断言することはできないが、実験結果から予防効果があると考えられる」と指摘。「長寿との関連を実証するため、今後は実際の食生活の聞き取り調査や品種、醗酵方法の違いによる比較研究などに取り組んでいきたい」と締めくくった。 |
2004/4/3 Yahoo news 社会ニュース 4月3日(土)4時20分 |
アイヌの薬草で抗がん剤を 49種に効き目確認 アイヌ民族伝承の薬草で抗がん剤をと、札幌市の北海道立衛生研究所と北海道大が、研究を進めている。既に49種の薬用・食用植物に抗がん活性(がん細胞を殺す働き)を確認。来年3月末までに物質を特定するが、新抗がん剤の誕生につながる可能性もある 3種類の肺がん細胞すべてに強い抗がん活性を示したのはナナカマドの若葉、チシマアザミの茎など4試料。 アイヌは、ナナカマドをかゆや茶に入れて解熱剤に、チシマアザミはかっけ治療薬として服用した。ほかは下痢やせき止め、止血など幅広いが、植物を採る時期や場所で効き目は全く異なる。 北大大学院の井上勝一助教授は「高齢者向けに穏やかで有効なものを開発したい」と話している。(共同通信) [4月3日4時20分更新] |
2004/1/15/03:04 読売新聞 YOMIURI Online |
カツオ精巣の油に抗がん作用…静岡県水産試験場が発見 カツオの精巣と卵巣に含まれる油に、それぞれ抗がん作用とコレステロール低下作用があることが、静岡県水産試験場(静岡県焼津市)などの研究グループによる動物実験でわかった。 研究グループでは「将来的には健康食品などへの活用も可能」としている。 静岡県は、カツオの水揚げ量が日本一で、年間約10万トンの大半は焼津港に水揚げされる。 |
2003年 11月21日 自然療法学会通信より |
国際アレルギー学会・日本アレルギー学会で 天然植物シジュウムの有効性を発表 2003年9月7日〜12日 カナダ・バンクーパーで世界アレルギー学会が開催され 東邦大学第二小児科 鈴木五男助教授よりシジュウムの効果について発表されました。 また 10月28日〜25日・岐阜県・長良川国際会議場、第58回日本アレルギー学会で、鈴木五男助教授が 「スギ花粉症に対する天然植物シジュウムの点鼻液の有効性」 と題して発表されました。 内容: スギ花粉症 42名中にシジュウムスプレーを鼻腔内噴霧 回数: 1日4回 1回1プッシュ、 1週間〜2週間の経過観察 結果: 42例中 著明改善12例を含め31例に改善が認められた 考察:スギ花粉症に対するシジュウムスプレーの効果は有意に臨床像の改善を示した。また鼻汁中の好酸球数の減少を認め、炎症の指標となるECPも同様に減少していた。シジュウムは、スギ花粉症の治療に有効な方法と考える。 ---------------------------------------------------------- ※ECP( Eosinophil Cationic Protein)とは 好酸球塩基性蛋白 とも言いますが、アレルギーの炎症の程度を計る指標の一つで、アレルギー症状が起きると好酸球が集まってきて特殊なタンパク質を出すことから、そのタンパク量を測り、炎症の程度を知ろうとするものです。 |
2003年 11月10日 日経ヘルス ホームページ |
日経ヘルスホームページより引用しました ショウガ、緑茶が、ガンを防ぐ−−米ガン研究学会 ■ショウガと緑茶が、マウスや人に対する実験で、ガン細胞の増殖を抑える効果があることが証明された、と10月末に米アリゾナ州で開かれた米ガン研究学会で報告された。ショウガ(ginger)の研究を行ったのは、ミネソタ大学のジアン・ドン博士ら。マウスに人間の結腸ガンの細胞を植えつけてから、ショウガのエキス「6−ジンジェロ−ル」を与えた。すると、与えなかったマウスには平均13個あった腫瘍が、与えたマウスには4個しかできなかったという。 ●緑茶の研究を行ったのは、アリゾナガンセンターの研究チームで、118人のヘビースモーカーを2つのグループに分けた。一つのグループには、緑茶を毎日少なくとも4杯飲ませ、別のグループには、紅茶をやはり4杯飲ませて、これを4週間続けた。そこで、DNA損傷の頻度を見る「8−OHdG」と呼ばれる化学物質を測定した。すると、緑茶を飲んだグループでは、「8−OHdG」が、飲み始める前よりも、31%減少していたが、紅茶グループでは、変化はなかった。 昔からショウガを料理に使い、緑茶を飲み、味噌や醤油といったニゲロオリゴ糖(うま味物質、これが免疫活性があるんですよ)という天然の発癌抑制物質をたっぷり含んだ食品を食べた我々の先祖がガンが少なかった理由の一つでしょうね 癌はなってからでは遅いのじゃ、已病ではなくて未病を直すことが大事なのじゃよ |
2003年 11月5日 ヤフーニュースジャパン |
掲示板の書き込みさぼってました 久々に有益な記事をヤフーニュースで見つけました、全文引用してます トマトエキスの補助剤、ガン予防効果が低い可能性=調査 [ワシントン 4日 ロイター] 米国立がん研究所の発刊誌によると、ネズミを使った実験で、トマトのエキスを含む補助剤が前立腺ガンの予防に対してもつ効果は、生果の摂取よりも下回る可能性があることが分かった。 調査は、トマトのエキスから前立腺ガンの予防効果を期待する場合には、錠剤よりも、生のトマトやトマトソース、トマトペーストなどを摂取する必要がある、としている。 調査の作成に協力したオハイオ州立大学のスティーブン・クリントン医師は文書で、「我々の調査は、貧困な食生活を単なる錠剤の服用で埋め合わせるのは不可能ということを、強く示唆している。複雑な問題に対して安易な解決法を期待すべきでない。我々は、健全な食品の摂取品目を増やすという選択や、運動、体重のチェックなどに、より明確に焦点を合わせるべき」と述べた。 これまでにも、多くの調査で、トマト製品を摂取している男性の前立腺ガン発症リスクが低いことが分かっており、科学者はトマトの赤色を形成するリコピンに効果があるとみている。しかし、どんな食物にも健康に良い様々な物質が含まれており、それが相乗効果をもたらしている、と反論する専門家もいるという。(ロイター) [11月5日13時10分更新] |
2003年 8月11日 薬事日報 |
糖尿病予備軍が急増 患者と合わせて1620万人に 厚労省が調査結果を公表 日本の糖尿病推定患者数は740万人に上る。6日に厚生労働省が発表した2002年糖尿病実態調査の速報で明らかになった。糖尿病患者は97年の第1回調査より50万人増えたが、それ以上に糖尿病予備軍が急増し、200万人増の880万人になった点が大きな特徴。20歳以上では5人に1人、40歳以上では4.4人に1人が、何らかの形で糖尿病が疑われる計算になる。 この調査は、02年国民栄養調査で糖尿病実態調査質問票に回答した、20歳以上の5792人(男性2369人、女性3423人)を基にしたもの。糖尿病に関する情報・知識、糖尿病管理のための近隣地域の状況認知度、保健事業への関わり、治療・合併症等について質問している。 糖尿病であるか否かは、糖負荷試験による確定診断ができないことから、便宜的に血中ヘモグロビンA1Cの割合で判断、6・1%を超えた場合は「糖尿病が強く疑われる」、6・1%未満で5・6%を超えていれば「糖尿病の可能性を否定できない」と判定した。 現在治療中の人を含む「糖尿病が強く疑われる人」は全体の9.0%(男性12.8%、女性7.1%)、「糖尿病の可能性を否定できない人」は10.6%(10.0%、11.0%)だった。これを02年10月の推計人口で換算すると、糖尿病を強く疑われる人は約740万人(446万人、294万人)、可能性を否定できない人は約880万人(375万人、505万人)で、両方を合わせると1620万人となった。 前回調査と比べ、糖尿病患者は50万人、予備軍は200万人も増加し、男性では患者が増加したが、女性では予備軍が著しく多くなっている。 年齢別では、「糖尿病が強く疑われる人」は男性が60歳以上、女性は60歳代で前回調査より増加していたが、60歳末満では男女ともやや減少傾向がみられた。また、「糖尿病の可能性を否定できない人」は、男性は50歳以上で増加し、50歳末満では減少、女性ははば全年齢で増加傾向にあった。 何らかの形で糖尿病が疑われる人の割合は、20歳代が男性で2.1%、女性で1・2%、30歳代は3.5%、5.3%、40歳代は7.8%、11.9%、50歳代は24.7%、15.3%、60歳代は31.3%、27.5%、70歳以上で47.4%、28.3%である。 糖尿病が強く疑われる人のうち、現在、糖尿病治療を受けているのは、前回調査より5ポイント以上高くなり50.6%と半数を占めた。治療を受けていない人は6ポイント近く減り41.9%となった。治療中断は7.5%だった。 今回の調査で、過去に住民健診、職場健診、人間ドックなどで、糖尿病検査を含む健診を受けたことがあると回答したのは64.1%だったが、糖尿病が強く疑われる人では、健診を受けたことのある人の54.9%が治寮を受けていたが、健診を受けたことがない人は89.4%も治療を受けていなかった。 糖尿病で治療を受けている人で、合併症の状況をみると、神経障害が15.6%、網膜症13.1%、腎症15.2%、足壊症1.6%だった。「ヘモグロビンA1Cが6.1%以上だが治療を受けていない」人の合併症発症率は、神経障害6%、腎症3.1%。 また、大血管障害発症状況も調べられており、強く疑われる人では心臓病が15.8%、脳卒中7.9%、可能性を否定できない人では心臓病10.0%、脳卒中5.3%だった。正常範囲の人は、それぞれ6.1%、3.1%であり、やはり糖尿病が疑われる人は大血管障害の発症率も高いことが明らかになった。 |
2003年 6月27日 薬事日報 |
明日葉に糖尿病の改善成分 タカラバイオが世界で初めて発見 タカラバイオのバイオ研究所は、明日葉の抽出物中に、脂肪細胞への分化を促進する活性物質が豊富に含まれていることを世界で初めて発見した。糖尿病の症状改善に効果が期待できる食品の開発を目的として、マウスの前駆脂肪細胞株3T3−L1が脂肪細胞へと分化する系を用いて、活性物質のスクリーニングを行ったもの。 また、明日葉成分中の新規カルコン2種類が、白内障など糖尿病合併症を防ぐ効果が期待されるアルドース還元酵素阻害活性を持つことも見出し、これらの活性物質群を、効率よく明日葉から抽出する製法も確立した。 日本には、糖尿病と判定される人が約690万人存在し、糖尿病が疑わしい人まで含めると1370万人に達すると推定されているが、今回の発見は、これら糖尿病予備軍の人々が、明日葉を摂取することによって、糖尿病の症状を改善できるだけでなく、合併症も予防できる可能性を示唆している。 なお同研究所は、既に糖尿病性神経障害などの予防・治療に有効と考えられる神経成長因子(NGF)の産生増強物質や、骨粗鬆症の予防と治療に有効と考えられる骨形成蛋白−2(BMP−2)の産生増強物質などが、明日葉に含まれていることを発見している。 |
2002年 11月20日 日本経済新聞 |
免疫強めがん攻撃 大阪府立成人病センター研究所 マウスで効果 大阪府立成人病センター研究所は免疫の働きを強める物質を投与してガン細胞を攻撃する新たな治療法を開発し、マウスを使った実験で効果を確かめた。二種類の免疫細胞をそれぞれ活性化する物質を同時にマウスに与えたところ、八割のマウスで癌が消失した。研究チームは人間でも効果が期待できると見ており、二─三年内に臨床試験を始める考えだ。 研究にあたったのは瀬谷司第六部長を中心とするチーム。免疫細胞の中で重要な働きをしているTリンパ球とナチュラルキラー細胞(NK細胞)に注目し、これらの働きを強化する方法を探った。 この中で、Tリンパ球を作る樹状細胞の働きを高める物質として、BCGに使う弱毒結核菌の殻の部分からペプチドグリカンと呼ぶ糖タンパク質を発見した。ペプチドグリカンは樹状細胞の表面にある受容体にくっつき、Tリンパ球の数を増やす。さらに、藻類の一種であるスピルリナにNK細胞を活性化する働きがあることを突き止めた。 皮膚癌のマウスで実験したところ、奚もしないマウスは癌で死ぬのに対し、ペプチドグリカンとスピルリナの両方を投与したマウスは八割が六週間後に癌が無くなった。片方だけを投与した場合はその中間だった。 Tリンパ球とNK細胞は攻撃相手のガン細胞に得手不得手があるが、瀬谷部長は「両者が双補的に働いて癌を効果的に抑えられたのではないか」と推定している。 免疫の仕組みは哺乳類でほぼ共通しているため、人間でも有効と見ている。 |
1998年 8月6日 読売新聞 |
朝鮮ニンジン がんに有効 主成分「サポニン」−転移を抑制 富山医科薬科大と民間が共同研究 朝鮮ニンジンに多く含まれる薬効成分「サポニン」 が、体内で血中に吸収されると、がんの転移を防ぐ 効能があることが、富山医科薬科大学和漢薬研究所の済木育夫教授(病態生化学)と、民間研究機関「一.都生命科学研究所(東京都府中市)の長谷川秀夫研究員の共同研究でわかった。この成分でがん細胞を死 滅させることも実験で裏付けられ、朝鮮ニンジンの 薬効作用が解明できたとしている。結果は二十九日 から富山市で開かれる和漢薬学会で発表される。 済木教授らによると、がんの転移を防ぐのは、「M1」と呼はれるサポニンの代謝産物。朝鮮ニンジンを 食べると、主要成分のサポニンは、体内で腸内細菌の分泌酵素によって「M1」に変化して吸収される。この「M1」を実験動物に投与したところ、がん細常 体内の別の場所に拡移する数が大幅に減った。また、M1をがん細胞にかけると、がん細胞は増殖せず、「アポトーシス」と呼ばれる自発的な死に追い込まれることも確認された。 主要成分サポニンは、がんや糖尿病、炎症などの治療に効果があるとされていたが、実際に体内でどう作用するのか、これまで不明だった。京都府立医科大の西野輔翼教授(生化学)は「作用のメカニズムまで解析できたのは、製薬化の可能性も考えると注目すべきことだ」と評価している。 ◇ サポニン 有機化合物の一種。朝鮮ニンジンには、大豆や茶の葉に比べて約十五倍の単位グラム当たり1.5%が含まれている。界面活性作用があり細胞内に入り込みやすい。強心、強壮作用などの薬効もある。 |
2002年 8月12日 薬事日報 |
健康食品を科学する−24−ヨモギ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 ヨモギは、もっとも身近に自生する薬草です。小さい花で美しくありませんが、タンポポと同じキク科の植物です。タンポポは乳液を含みますが、ヨモギは精油を含み、春の頃の嫩葉の香りは日本人好みで、もち米と合わせて蒸して搗き、3月3日の桃の節句(ひな祭り)の草餅といわれるヨモギ餅や焼餅、ヨモギ団子などの食材として親しまれています。 多くの植物の中でヨモギだけをなぜ餅に入れたのかは、葉の裏にある真っ白い綿毛に訳があるようです。ヨモギは中国の乾燥地帯が発祥地。乾燥に強いように葉の裏にT字型をした毛がびっしりと生えています。これがサバサバしたうるち米の餅の繋ぎ(つなぎ)として利用したものだと、植物学者の牧野富太郎博士は言っています。面白い見方だと思います。また乾燥した棄を石臼で揉むと、その毛だけが採れて、この毛だけを集めたのが灸の焼灼素材として利用される「もぐさ」です。もぐさの名の由来は、葉を揉んで作ることから揉草から由来したものだとか、燃草の略だといわれます。ヨモギの名も善燃草に由来します。 毛のワックスがローソクの蝋の役目をし、毛の精油が燃える役目をしているので、ゆっくりと燃えるのに好都合のようです。 平地の荒れた地に雑草とまじって自生するのはヨモギArtemisia princepsで、山地に自生するヨモギよりも背が高く、葉も大きい種がオオヨモギA.montanaです。いずれも食用や薬用にされています。属名のアルテミシアはギリシャ神話の女神Artemisが婦人病に賞用したことから、女性の健康の守護神といわれたことにちなんだものだといわれています。ディオスコリデス(ギリシャ本草)」には身体を温め、座浴することによって月経を正常にすると記しています。ヨーロッパでは靴の中に入れると足が疲れないとか、腰に巻いておくと婦人病に効くという話も残っています。 中国ではヨモギを「艾(がい)」と書き、今から1500年前の『名医別録』の中品に初めて収録され、「百病に灸す。煎ずれば下痢や吐血、月経過多を止め、肌肉を生じ、風寒を辟け、人をして子あらしむ」と記されています。 漢方処方としては『金匱要略』の婦人妊娠部門に収載される「ス帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)」に配剤されています。この処方は他に、貧血・冷え症の治療の基本処方といわれる「四物湯(しもつとう:地黄・当帰・川ス・芍薬)」に甘草と阿膠が配剤され、主に婦人の性器の不正出血、月経過多、妊娠中の腹痛、膀胱炎などに用いられ、痔の出血、血尿にも応用されます。 日本では代表的な民間薬として愛用されています。生の葉を揉んで傷口に付けると止血効果があるといわれ、乾燥葉は「温め薬」といわれるごとく、身体が冷えて膀胱炎や、腹痛、下痢をした場合に10gほどを煎じて内服します。 また、入浴剤としても優れており、血行が良くなり、肩こり、腰痛、神経痛などの痛みを和らげ、冷え症にも良く、さらにあせも、かぶれなどの治療効果もあります。 ヨモギの抽出エキスには、高脂血症と肝障害の抑制作用、血液凝固抑制作用、抗アレルギー作用、インターフェロン誘起作用、抗炎症作用、血管内皮細胞増殖抑制作用、鎮痒作用が証明されています。 ヨモギの含有成分としては、モノおよびセスキテルペン、ステロール、フラボノイド、アセチレン類、クロロゲン酸関連化合物などの多数の化合物が明らかになっています。香りのよい精油の主成分は1,8-cineolで、平地のヨモギよりも山に登るほど含有量が多くなり、「伊吹モグサ」はその性質を利用して採集されたものです。モグサの成分については、著者の一人である吉川らはmoxartenone などのセスキテルペンや高度酸化脂肪酸を明らかにし、血管拡張作用のあることを報告しています。 ヨモギには、クロロゲン酸関連化合物のdicaffeoylqinic asidに、脂質過酸化抑制作用、脂肪分解、ヒスタミン遊離抑制作用およびモノアミンオキシダーゼ阻害活性が認められているほか、酸性多糖体 heteroglycanには抗補体活性を持つことが報告されています。このほか、セスキテルペンのyomoginに肥満細胞の脱顆粒とマクロファージからのNO産生抑制活性のあることも明らかになっています。 そのほか、黄色ブドウ球菌、α−溶血性連鎖球菌、肺炎菌、コレラ菌などに対する抗菌作用もあるといわれています。 |
2002年 7月19日 薬事日報 |
健康食品を科学する−23−エゾウコギ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授 久保 道徳 京都薬科大学 教授 吉川 雅之 エゾウコギは、学名Acanthopanax senticosus(Acanthとはトゲがあるという意味で、panaxはニンジン属を指しています)といい、世界的にはエレウテロコックスの名で知られています。それは旧学名のEleutherococusの属名に由来しています。 ウコギ科に属する落葉低木で、幹には下向きの鋭いトゲがついています。日本では北海道東部の北見・石狩・網走地区に限り自生しています。 ロシアのアムール川中流や東サハリンにも見られ、中国では鋭いトゲがあることから中薬名を「刺五加」といい、黒竜江省・吉林省の北東部に分布しています。 中国では『神農本草経』の上品に収載され強壮薬とされる「五加皮」がありますが、中国で現在、五加皮と称している生薬は十六種のAcanthapanax属植物を基原とするものが使われており、産地の違いによる地域的な特徴を持っています。「刺五加」はその一種です。どれが古来の正品「五加皮」であるかどうかは不明ですので、基原が明確で薬理効果があると証明された刺五加は、刺五加として使うべきで、五加皮の代用品ではありません。 エレウテロコックスがロシアで研究され、世界的に紹介されるきっかけをつくったことのエピソードがあります。シベリアの東部でこの植物は厳冬期になると葉が落ちて細い枝や幹に鋭いトゲだけが残り、軍隊の行軍の邪魔になるので、根こそぎ刈ってしまったところ、トナカイがバタバタと死んでしまったという事態が起こりました。その理由は、トナカイがエレウテロコックスの根を掘って食べて厳冬期を耐え忍んでいたのです。このことから、その根をトナカイが厳冬期を耐え忍ぶのに大切な耐寒食品ではないかということで、旧ソ連の研究者が人への強壮作用の研究を始めたといわれています。 エレウテロコックスすなわちエゾウコギに抗疲労作用や抗ストレス作用の効果があることが報告されました。特に、宇宙飛行士が宇宙船内で飲んでいたことや、宇宙船がうまくドッキングできた際にエゾウコギ酒で乾杯した話が伝えられました。また、モスクワオリンピックで、旧ソ連選手の活力源になったことや、長野冬季オリンピックで活躍したジャンプ競技やスピードスケートの選手が愛用していたなどの話が大変話題になりました。このような経過から、エゾウコギは体力や意欲の増進を期待した健康食品として用いられるようになったのです。 中医学では根皮を薬用としておりますが、世界的には根全体が使用されています。エゾウコギの成分としては、エレウラロシドEなどのリグナン配糖体、クマリン類、サポニンおよびフェニルプロパノイド配糖体などが知られており、いずれも根部に多く含まれています。薬理活性としては抗疲労作用や免疫増強作用が研究されております。 北海道医療大学薬学部のグループは、マウスにエゾウコギ水抽山物を二十五日間投与して遊泳時間を比較検討したところ、持久力の向上が認められ、リグナン成分の代表であるエレウラロシドEでも同様の結果があったと報告しています。 また、人にエゾウコギ粉末を七日間服用させた二重盲検での検討結果から、有意に運動能力の向上を示す最大酸素摂取量の増加が認められたとも報告しています。一方、旧ソ連で約1万3千人にエゾウコギを冬期に二カ月間服用させたところ、前年に比べて感冒、インフルエンザなどの感染性疾患が四40%減少したと報告されています。 さらに、サポニンやリグナン配糖体には、脳内で産生される免疫機能を向上させ生体防御物質であるbエンドルフィンを増加させる作用もあることが報告されています。 その他、エゾウコギの成分には、ストレス性胃潰瘍発生の予防効果やがん治療の際の副作用を軽減し、がん患者の免疫力を高め、健康状態の改善に有効との報告もあります。このように、エゾウコギは疲れやストレスが溜った時や、仕事や運動でスタミナや集中力を高めたい時、身体が冷えた時に摂取するとよいといわれています。私も服用したことがあり、すぐに身体が温かくなってきたことを体験しています。 薬用にされる人参もウコギ科の植物ですので、しばしばエゾウコギと混同されることがあります。人参は特有のサポニンを含み、それが薬効の担い手となっていますが、エゾウコギはリグナン成分でまったく異なりますので、注意してください。 |
2002年 6月21日 薬事日報 |
健康食品を科学する−22−ウメ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 ウメ(prunus mume)は、中国の長江流域が原産地のバラ科の落葉高木で、中国中部や朝鮮半島などの東アジア地域に限られて分布する核果類です。『魂志倭人伝』にも記載され、日本には弥生時代に水田稲作にともなって渡来したことが梅実の核の発掘で明らかにされています。梅実の採集時期は水田に必要な雨がよく降るので、つゆを梅雨期と書きます。青森県を北限として広く栽培されており、春の到来を知らせる花木として日本人はことのほか梅の花を愛し、梅実を好みます。 梅が渡来した理由は、清楚で芳しい花の香りの観賞ばかりではなく、塩漬けにした「塩梅(あんばい)」を酸味の調味料として用いました。未熟な果実を加工した「烏梅(うばい)」も薬用として利用したようです。 果実用には200品種が栽培され、「豊後梅」は実が丸くて大きく収穫量が多く、梅干のほとんどが本種です。花の観賞用には400種に達するといわれています。 日本の気候は、ウメの実が成熟する頃と紫蘇の葉が成長する頃とが一致しており、梅に紫蘇を使って「梅干」が漬けられます。梅干は食欲の増進や、朝の気付けの役目を果たし、おにぎりやお粥には付き物ですが、お粥の好きな中国人は梅干を食べません。日本に留学した学生がもっとも嫌う漬物です。昔、軍隊の行軍では喉の渇きには梅干を食べるが、ショウガを食べると喉が渇くといわれています。遠足には梅干がよいでしょう。 紫蘇を使わないのを「白梅(しろうめ)」といいます。白梅は青梅を塩漬けにして乾燥したもので、神経性食道痙攣や咽頭炎の治療に内服するほか、外傷の治療やとげ抜きに外用されます。 また、ウメの果実を針で突き、焼酎や三十五度のホワイトリカーに氷砂糖を入れて「梅酒」が作られています。数年経過した熟年ものはたいへん美味しいものです。風味を楽しむだけでなく、食中毒、水あたりなどによる腹痛や下痢の治療に用いられてきました。 青梅の果肉を擦りおろして絞り、煮だした汁を濃縮した「梅肉エキス」は、抗生物質のない時代は伝染病による食中毒の特効薬でした。明治時代に日本の民間療法を伝承した築田多吉の名著『家庭における実際的看護の秘訣』は今日でも「赤本」として親しまれており、この中に梅肉エキスの効用が力説されています。 最近では病原性大腸菌0-157による食中毒の予防に梅肉エキスが利用された記事が載っています。 梅干や梅肉エキスは、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸類が多量に含まれており、これが殺菌、疲労回復、胃保護作用を持つといわれています。 また、梅肉エキスからムメフラールという成分が単離され、血行促進効果があったと報告されています。 「烏梅」は、中国最古の薬物書『神農本草経』の中品に収載されており、未成熟なウメ果実(青梅)を果肉が黒くなるまで弱火で炒り、乾燥したものです。日本の生薬問屋さんで中国産が市販されています。清涼性収斂薬として止瀉、解熱、鎮咳、去痰、寄生虫駆除を目的に用いられます。酸味の強いものが良品です。 漢方では『傷寒論』『金匱要略』に「烏梅丸」が収載され、胃腸炎で下痢が止まらない場合に用いられています。烏梅で大腸がんの転移による疼痛が緩和したとか、梅ジュースで胃潰瘍が治ったとか、「梅干村は医者いらず」ともいわれます。 ウメは、梅干や烏梅に加工される果実ばかりでなく、花蕾(白梅花)は江戸時代に人見必大が著した『本朝食鑑』には「白梅花の煎湯で顔を洗うと肌がつややかになり、しみやにきびを取り去る」と記されています。著者の一人である吉川らは、和歌山県産の南高梅の白梅花抽出エキスに強い活性酸素やDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカルの消去活性やチロシナーゼ阻害作用のあることを見出して、白梅花の伝承薬効である美顔効果を証明しました。さらに、白梅花エキスにはアルドース還元酵素阻害作用や血小板凝集抑制効果が認められ、糖尿病合併症の網膜症などの予防効果が期待されます。その活性成分として、プルノースT、U、Vと命名した新規ポリアシル化ショ糖を単離、構造決定しています。 |
2002年 5月13日 薬事日報 |
健康食品を科学する−21−桑葉 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授久保道徳 京都薬科大学教授吉川雅之 クワはクワ科の落葉高木で、日本原産のヤマグワ(Morus bombycis)、中国、朝鮮半島原産のマグワ(M. alba)など多くの品種があります。葉は蚕の飼料とされ、古くから広く栽培されています。 桑を薬用にした歴史は古く、中国最古の薬物書『神農本草経』には、その根皮を「桑根白皮」と称し、消炎性利尿、解熱、鎮咳、去痰薬として用いられています。葉も薬用に供され、唐代の『新修本草(しんしゅうほんぞう)』に熱があって寒気がする時は、桑葉は発汗作用があり、それを治療すると記しています。 一方、中国では古い時代から、食物によって疾病を救ってきた歴史があり、「食医」と称される医師が、疾病の治療に食事療法の面から参画していました。唐の時代には、食による養生法が確立され、その代表的書物が『食療本草』で、その中に桑葉″が挙げられ、「桑葉を茶に代えて飲めば、渇(かち)を止める」とあります。すなわち、桑葉をお茶のようにして飲めば、糖尿病によいことを示唆しています。その後、宋代の蘇頌は「桑葉」の粉末を薬用に供し、明代の李時珍は『本草綱目』の中で「桑葉は茗(めい=お荼 に代えれば能く消渇(しょうかち)を止める」と自分の体験談を述べています。 わが国においては、鎌倉時代に中国へ留学した栄西禅師が、わが国初の茶書『喫茶養生記』を出版し、桑葉の粉末をお茶にして服用すると、糖尿病など万病に効くことを広めています。『源氏物語』の光源氏のモデルとされ、時の権力者・藤原道長は、栄華の絶頂の頃飲水病″に蝕まれ、しきりに口渇を訴え、水を多飲し、ひどく憔悴し、次第にやせ細り、無気力になったようです。飲水病″とは、まさに糖尿病で、のどの渇きを訴える病といえます。国際糖尿病会議が平成6年に神戸で開催され、その記念に発行された切手のデザインが、なんと藤原道長の太った上半身の肖像画と、インスリンホルモンの菱面体の結晶でした。桑葉″は糖尿病やそれに付随する合併症に茶″として愛飲されてきた機能性食品といえます。 血液中のブドウ糖はブドウ糖を数万個連なったでんぷん質から作られます。でんぷん質は口の咀嚼により唾液中のα−アミラーゼによって加水分解を受けてデキストリンになり、さらに膵液中のアミラーゼにより二糖類のマルトースやスクロースに消化されます。小腸ではα−グルコシダーゼによって二糖類が加水分解を受け、単糖類のブドウ糖になり吸収されます。吸収されたブドウ糖は肝臓に運ばれ、血管を介して全身の細胞に取り込まれエネルギー源となり、一部はグリコーゲンの形で肝臓に貯蔵されます。 二糖類を単糖類に分解するα−グルコシダーゼの酵素活性を阻害すると、グルコースにまで分解されないので、二糖額が腸を素通りすることになり、グルコースが肝臓に運ばれないので、食後の血糖値が上昇しないというメカニズムを利用して、桑の根皮や菓の研究がなされました。その結果、阻害活性が認められ、有効戌分として1-deoxynojirimycin が単離されました。 1-deoxynojirimycin は小腸上皮細胞に存在するα−グルコシダーゼと結合して競合拮抗的に二糖類と酵素の結合を阻害し、その結果、α−グルコシダーゼが二糖類を分解できなくなるといわれています。 このような機序で、食事前に桑葉を服用することにより、食事後の急激な血糖の上昇がコントロールできるのです。また、分解されなかった二糖頬は大腸へ運ばれ、大腸内フローラ(腸内細菌)に資化され、二酸化炭素、有機酸が生成され、その結果、大腸は 刺激を受けて運動が高まり、二次的な効果として便秘の改善、整腸作用も認められています。そのほか、ヒトの成人型糖尿病に類似した自然発症糖尿病ラットに桑棄を飼料として混ぜて48週間投与し、自然発症的に上昇する血糖値が抑制されることも発見されています。 一方、生の桑葉からセルラーゼなどの細胞間物質分解酵素を用いて単細胞化することに成功し、大久保らは単細胞化することにより極めて強力な抗酸化作用が発現することをXYZ微弱発光法によって見出しています。 単細胞化桑葉を自然発症糖尿病マウスに3週間連続経口投与し、桑葉の血糖降下作用が約3倍高まることを見出しました(久保らNatural Medicines,55,181(2001)。さらに、血清GOT、GPT活性の上昇が抑制され、中性脂肪の上昇も抑制されることが明らかになりました。 また、インスリン対抗ホルモンのアドレナリン、ノルアドレナリンによる脂肪細胞からの遊離脂肪酸の遊離(動員)を抑制する作用(インスリン様作用)も確認しています。 |
2002年 4月15日 薬事日報 |
健康食品を科学する−20−ニンニク 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 ニンニク(英名はガーリック)は、ユリ科植物ネギ属の多年生草本で、学名をAllium Salivumといいます。古代から薬用や食用に供されており、原産地は、中央アジアまたは西アジアと考えられています。 学名のsativum(栽培された)にありますように、紀元前3200〜2780年頃のエジプト第一、第二王朝時代から栽培されていたことが記録されています。ピラミッド建設などに従事していた肉休労働者に定期的に支給されていたことや、強壮効果や頭痛、喉の炎症の治療によいことが、パピルス紙(エーベルスパピルス)や壁画に残されています。ツタンカーメン王の墓からもニンニクが完全な形で発見されています。エジプトから古代ギリシャ、ローマを経てヨーロッパに伝来されており、デイオスコリデスが著した薬物書「ギリシャ本草」にも収載されています。ヨーロッパでは香辛料として肉料理には欠かせないものですが、一方、信仰にも似た万能薬的な薬効が伝承されています。 中国へは、紀元前140年頃の漢の武帝の時代に、張騫が西城から持ち帰ったとの説が一般的です。薬効として食欲亢進進、健胃消化、解毒、殺虫効果があると伝承されています。 日本へは「大蒜(タイサン)」の名で奈良時代に中国から渡来したと考えられており、「日本書紀」や「古事記」に記述されております。しかし、日本ではあまり食用とされることはなく、薬用にわずかに用いられるにすぎませんでした。 最近、欧米を中心に、ニンニクの科学的研究が盛んに進められています。ニンニクの発がん抑制効果として、イニシエーション、プロモーションの両段階での効果が認められ、1990年にアメリカ国立がん研究所が実施したデザイナーフーズプログラムでは、がん予防が期待される食物のトップにあげられています。臨床的にも胃がん、食道がん、大腸がんになりにくいといわれています。 抗酸化作用については、主な野菜の中で、最も強い作用があると報告されています。杭歯、杭ウイルス作用としては、コレラ菌をはじめ、チフス菌、赤痢菌などに強い殺菌性があり、インフルエンザウイルスに対しても発育阻止活性があることが知られています。 臨床試験として、血小板凝集能に支障のある60人に投与した結果、明らかな改善効果があったと報告されています。高血圧の患者にニンニク製剤を授与すると最高血圧が12〜30mmHg、最低血圧が7〜20mmHg降下したと報告されています。 このほか、ニンニクが免疫系におけるナチュラル・キラー細胞の働きを高めることや、水虫の治療効果があること及びセレニウム含量が高く、心臓を強くするといわれています。 ところで、ニンニクの学名Alliumは臭うという意味ですが、ニンニクは独特の臭いのあることで知られています。 しかし、自然のままでは全く臭いはありません。ニンニクを刻んだり、砕くと細胞が壊れ無臭のアリイン(allin)と酵素アリナーゼ(allinase)が混ることによって、アリインが分解され、強い刺激臭のあるアリシン(allicin)に変化します。 アリシンは不安定な化合物で、さらに二硫化ジアリル(diallyldisulphide)などのニンニク特有の臭気を有する含硫化合物へと変化します。 なお、アリシンはビタミンB1と結合し、容易に安定な化合物アリチアミン(allithiamine)になります。アリチアミンはビタミンB1分解酵素thiaminaseの作用を受けず、優れた腸管吸収と高い血中沸度を示し、生体内でビタミンB1に戻り作用します。しかし、服用後にニンニク臭が出る欠点がありましたが、この臭いの発生しない活性ビタミンB1が開発されています。 このように、ニンニクは薬効が明確な食品ということができますが、生や加熱したものでも大量に摂取すると、胃粘膜を荒らし、貧血、疲労の助長、アレルギーなどの症状が出ることがありますので、食べ過ぎには注意が必要です。 オイル焼きしたニンニクは香ばしくておいしく、その成分のS-アリルシステインが脳神経細胞を刺激し、がん予防作用もあるといわれています。 ニンニクを食べた後の臭みを感じないようにするには、生のリンゴを食べればよろしいです。最近は、無臭ニンニクが栽培され、また生のニンニクをバジルやローズマリーなどのハープエキスに涌ければ無臭になるといわれています。 |
2002年 4月5日 毎日新聞 |
国内最古の「処方せん」 飛鳥京跡苑池遺溝 膚の医学書、木簡に引用 飛鳥時代(7世紀半ば〜後半)に造られた王宮付属庭園跡、「飛鳥京跡宛池えんち遺構」(奈良県明日香村岡)から、中国・唐の医学全書に記載されていた漢方薬の処方が書かれた木簡が見つかった。 4日発表した県立橿原考古学研究所によると、国内最古の処方せんで、医学史や日中交流史の具体像に迫る貴重な資料という=写真。 01年度調査で、池のたい積土から木簡49点が出土。記された行改組織などから、7世紀後半〜8世紀初頭に近くで書かれ、捨てられたものらしい。 薬は「西州続命湯」。 木簡に乾薑(乾姜)ほしはじかみ(干したシショウガ)、当帰(セリ科の植物)、水など原材料・分量とともに記されている。650年代に完成した、処方も記した中国最古の医学全書「備急千金要方」にある中風(脳出血などによる機能障害)の薬と一致する。 また大宝律令(701年)に規定され、薬効も期待された酒・酢を醸造する役所「造酒司(ぞうしゅし)」と書いた木簡も見つかった。 これまでに「薬師(くすし)」「委佐俾(わさび)」など処方に関係しそうな木簡も別地点で見つかっており、「造酒司」または医療施設の「外薬寮(げやくりょう)」など、宮を支えた組織が藤原宮時代(694〜710年)まで苑池の隣接地にあったと推定されるという。 橿考研共同研究員の和田萃・京都教育大教授(日本古代史)は「遣唐使または亡命してきた百済の学者から取り入れた最新医学が外薬寮につながった。一方で日本古来の薬、ワサビも同時に使った様子が分かる」と話している。【花岡洋二】 |
2002年 3月11日 薬事日報 |
健康食品を科学する−19−ニンジン 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 ニンジンというと、八百屋の店先にある馬の大好物のニンジンと日本薬局方に収載されている薬用のニンジンとがあります。 野菜のニンジンはセリ科の Daucus Carota var. sativa という学名をもっており、アフガニスタンのヒマラヤ・ヒンズークシ山麓の原産だろうといわれています。十二世紀にアラビア人によってスペインに伝えられましたが、当時は紫色であったようです。赤いニンジンはオランダで発達し、17世紀にアメリカに渡来しています。中国へは13世紀に雲南へ伝えられ、日本へは中国から「網羅葡(こらふく:西の胡の国からきたダイコンという意味)」という名称で、17世紀に伝来したことが『多識篇』に記録が残っています。 一般に流通したのは19世紀の終わりで、欧米から今の品種が導入されてからです。その味が日本人の好みに合わなかったようで、多量に流通させるために、薬用の人参(御種人参)の名に似せてニンジンという名称を使い市販したのが、野菜と薬用人参の混乱を招くことになったのです。野菜ニンジンが商標違反をしたのです。 野菜ニンジンは、赤い色素のβカロチン(休内に入るとビタミンAに変化)やビタミンB、C、Eを多量に含み栄養満点の根菜類です。肌や目を美しくし、視力減退や目の乾く人にはよいようです。また、むかしから多くの国では子供の下痢によいとされています。 反面、ニンジンにはビタミンCの分解酵素であるアスコルビナーゼを含んでいるため、ニンジンの紅葉おろしと大根おろしと一緒にすると大根のビタミンCが分解を受けるので、一緒にしない方がよいといわれています。 薬用にされるニンジンは、野菜のニンジンとまったく違うウコギ科植物のオタネニンジン(Panax ginseng)の根を乾燥して調製加工したものです。 人参は、中国の吉林省などの東北地区から朝鮮半島で栽培され、栽培には土作りに2年を要し、播種後6年間も生育を待ちます。四年次には根が急に太りますので、この年に収穫することもあります。しかし、品質のよいのは6年根です。 掘り取ったニンジンは、真っ白で、太い胴体を持ち、側根はあたかも人の腕や足の姿をしており、そのことから人の姿に似ている参(直根状の根)なので、人参といわれるようになったのです。掘り取ってから直ぐに外皮を削り取り、乾燥したものを「白参」といい、日本薬局方の「ニンジン」に相当します。3、4年根の外皮を剥がずに乾燥したものを「生干人参」とも呼ばれています。また、掘り取ったものを数時間水蒸気で蒸して、ゆっくりと乾燥させたものを「コウジン(紅参)」と称し、字のごとく表面や中身は赤褐色を呈し、日本薬局方の「コウジン」として収載されています。 中国伝統医学(中医学)や漢方医学で用いる生薬の原典ともいえる後漢の頃の最古の薬物書といわれる『神農本草経』の上薬に人参が収載され、不老延年の薬、神仙薬として用いられたことがうかがえます。 補精、強壮が主な作用ですが、鎮静、健胃作用もあり、特に胃腸の衰弱による新陳代謝機能の低下した諸疾患に有効とされています。薬理学的実験からも胃の血流を正常化して、胃の消化・殺菌・修復の三大機能をコントロールすることが証明されています。また最近、ピロリ菌感染による胃潰瘍にも有効であるといわれて、その方面の利用が高まっています。6年を経過したニンジンを初冬の頃に根を掘り取った生ニンジンは、薬膳料理に用いられます。 有名なものに「参鶏湯(サムゲタン)」という韓国・薬膳料理があります。ニワトリの内臓を取り除き、そこに生の薬用ニンジンを1本分入れ、大棗(ナツメの果実)五個、枸杞子(クコの果実)20g、生のショウガのスライス5枚、ニンニク少々を人れ半日ほどかけて煮込みます。とっても美味しいスープができます。これを一家で食しますと、寒い冬にはカゼを引かずに過ごせるといわれています。肌が美しくなり、若返り、病後の回復も早くなり、元気になるといわれています。 生の薬用ニンジンを手に入れるには、長野県に行かなければなりません。望月町や丸子町の役場やJAに問い合わせてください。手に入れば、家庭の冷蔵庫の冷凍室に保存しておけば何時でも利用できます。韓国では、年中野菜市場で売っており、いろいろな料理に使われています。生の薬用ニンジンが手に入らなければ、生薬の紅参を20g使えばよろしいです。 また、「人参酒」を作るには、白参より紅参がよろしいです。紅参の丸切りの切片や細切したものを30g、35度のホワイトリカー900` に人れ、1カ月間漬けてください。漬けて2、3日で紅参の色は溶け、白い人参になります。それでもよいのですが、味つけに桂皮5g、枸杞子20g、大棗5個を入れるとまろやかになり、効果がより高まります。毎夕食後、盃1、2杯飲まれると疲労回復になります。強壮の目的で飲まれるのでしたら、さらに鹿茸の切片を5枚入れるとよろしいです。 |
2002年 2月4日 薬事日報 |
健康食品を科学する−18その1−バナバ葉 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 今回は、最近注目されつつある二種のダイエット素材について紹介します。 「バナバ茶」は、 フィリピン、マレーおよびインドシナ半島などの熱帯アジア地域に広く分布するミソハギ科植物の常緑樹の葉です。日本名はオオバナサルスベリ、学名をLagerstroemia spesiosaといいます。フィリピンのタガログ語でバナバ(Banaba)と呼ばれます。日本でよく見られるサルスベリと同じ属の植物ですが、成木の樹高は20mにも達し、赤紫やピンクの大きな花が房になって咲きます。フィリピンやタイなどで、陰樹(日よけの木)として道路沿いや公園などで植栽されています。葉は肉厚で長さ20〜30pにもなります。 フィリピンの伝承薬物として、その葉や果実を糖尿病の治療薬にしています。バナバ葉の抗糖尿病効果については、1940年にバナバ葉の煎出液が正常なウサギの血糖値を下げたとの報告があり、最近、二重盲検による軽症糖尿病に対する血糖値降下作用が検討され、バナバ葉エキスに有意な血糖値低下作用があることが報告されています。 また、熱水抽出バナバエキスに自然発症糖尿病モデルのKK−Ayマウスでの空腹時血糖低下および糖負荷試験における血糖値上昇抑制作用などが報告され、これらの作用はバナバ葉のポリフェノール成分と考えられています。また含有成分のコロリック酸というトリテルペンが、体細胞にブドウ糖が取り込まれるのを調整するインスリン様の作用があることが報告されています。 一方、エールリッヒ腹水がん細胞を用いたグルコース輸送能試験におてもバナバ葉に増強活性が認められ、コロリック酸が活性本体の一つであると報告されています。しかし、その収量から考えて、ほかにも有効成分があると予想され、さらに詳細な検討が進められている途中です。 バナバ茶が痩身に使われているのは、フィリピンやインドネシア、タイ、インドで古くから痩身に使われているからです。利尿作用や便秘改善作用により二次的に有効なのかもしれません。今後の研究課題だと思います。 |
2002年 2月4日 薬事日報 |
健康食品を科学する−18その2−ガルシニア果皮 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 「ガルシニア」は、 南アジアに生育するオトギリソウ科の植物でGarcinia cambogiaの果皮です。Garciniaは果物の王様といわれるほど美味しいマンゴスチンがその仲間で、cambogia名はカンボジアに由来します。果実は生を食用にされ、乾燥品は柑橘類のような酸味があり、インドではカレーのスパイスとしても用いられています。 「Medicinal Plants of India」という薬用植物書には、果皮の煎じ液がリウマチや腸の病気の治療に用いられ、樹脂が下剤になると記載されています。 この植物の果皮には糖から脂質の合成を抑制する作用が知られ、それは多量に含まれる(1)−ヒドロキシクエン酸(HCA)のATPクエン酸リアーゼ抑制効果によることが明らかにされています。マウスを用いた実験では、体重増加が有意に抑制され(体重抑制率7.2%)、臓器重量では牌臓、腎臓、肝臓の重量にも抑制傾向が見られ、腸間膜脂肪増加を有意に抑制したと報告されています。 しかしヒトでの臨床データでは、これまでのところガルシニア抽出物やHCAのいずれにも肥満や糖尿病に対して明確な改善効果がないと報告されています。それはHCAが理論通りに体内でクエン酸に作用しているかどうかという点と、HCAがブドウ糖を脂肪に変えないで、肝臓のグリコーゲンタンクに貯蔵するという機序で、肥満体の人を激痩せにはしないが過食しても肥満を防止するという点にあるからです。 |
2002年 1月15日 |
健康食品を科学する−17− 杜仲茶 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 「トチュウ」は、 世界で唯一科一属一種の単独種で、学名をEucommia ulmoides といいます。 雌雄異種の落葉性の喬木で、成木の樹岳は20mにも達します。中国中央部が原産で、貴州、四川、雲南、陜西、河南、湖北、湖南省の標高600〜2500mの山地に自生し、最近は広く栽培されています。その樹皮を乾燥したものは、古くから「杜仲」といいます。むかし、杜仲という人がこれを服用して得度したということに因んで命名したといわれています。中国最古の薬物書の『神農本草経』の上品に「腰痛や背筋痛(老化による筋筋膜痛)の鎮痛、強壮、強精、精神力の強化作用があり、老虚による残尿感や陰部の痒みの改善などに用い、長期に服用すると老化防止になる」と記されています。 杜仲の最大の特徴は、樹皮を横に少し割って引っ張ると絹糸のような銀色の細い糸を多数引き、これがグッタペルカという主成分です。宋代の蘇頌は、「春に出る若芽を食すると、膝関節痛、冷えによる消化不良、腸や肛門の下血によい」といっています。しかし、成長した葉部については薬用とされた古い記録はありませんが、中国少数民族がお粥、炒め物、煮物、および炒って茶として用いることが伝承されています。一九七八年、貴州省薬品検験所と貴州省中医研究所により、樹皮の杜仲と同じように血圧降下作用のあることが証明され、それ以降、「トチュウ葉」が薬草茶として愛用されるようになりました。乙な味のするお茶で、葉が大きくて肉厚で、樹皮と同じように糸をより多く引くような新鮮葉の乾燥物の方が味深いです。 最近、日本においても詳細な機能解明研究の結果、「トチュウ茶」として市民権を得ています。 トチュウ葉に着目して、富山医科薬科大学の難波教授らのグループでも研究が進められました。ラットなどを用いて一過性の降圧作用、尿中電解質の排泄向上と利尿、滋養強壮、抗酸化および肝機能の亢進作用などが明らかにされました。次に、熊本大学薬学部の野原教授らと日立造船の研究グループと九州大学健康科学センターのグループは、トチュウ葉部の含有成分としてゲニポシド酸などのイリドイド類、フェノール性化合物、フラボノイド類およびトリテルペン類を明らかにするとともに、高血圧の改善とがん予防効果のあることを報告しています。 すなわち、自然発症高血圧ラットを用いてトチュウ葉エキスの血圧上昇抑制作用を確認するとともに、主要活性成分はゲニポシド酸であることを推定しています。降圧臨床評価においては、103人の健常者を対象に二重盲検対照試験を行い、トチュウ葉エキス飲用群に平均血圧の有意な低下作用があることを明らかにしています。 このほか、トチュウ葉エキスにはラットの高コレステロール血症の改善や脂肪肝の軽減作用が報告されており、人へのトチュウ葉配糖体投与によって、総コレステロールが低下することも明らかにされています。さらに、トチュウ棄エキスの飲用によって加熱蛋白食品の摂取や喫煙による発がん性が抑制され、がん予防果が臨床的にも判明しています。また、トチュウ葉の水溶性画分には、抗がん剤のマイトマイシンCによる染色体異常の抑制作用が認められ、ゲニポシド酸などのイリドイド配糖体やフェノール性化合物に抑制活性のあることが明らかになっています。 トチュウ葉を食品として用いるために次のような安全性評価が行われました。細菌を用いる復帰突然変異試験(エームステスト)およびラット骨髄細胞の小核試験の結果から、変異原性は陰惟と判定されました。ラットでの急性毒性試験では、10g/kgの単同種口投与で一過性の軟便が認められる程度であり、LD50値は雌雄ラットとも10g/kg以上と考えられています。慢性毒性試験では1カ月および6カ月の〇・六g/kgの連続投与によって、一過性の流涎や軟便のほかには悪い影響のないことが明らかになっています。人による第T相試験では健常な成人男性12人にトチュウ菓配糖体を6gおよび12g含んだ飲料を10日間飲用させた臨床薬理学的評価の結果、有害作用のないことが確認されました。 このように、トチュウ葉は、その有効性が科学的に支持されるとともに、安全性の高い素材であることから、最近、「血圧が高めの方に適した食品」として、特定保健用食品の認可を受けています。 |
2001年 12月10日 |
健康食品を科学する−16− サラシア 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 「サラシア」はデチンムル科植物のSalacia reticulata(サラシア レティキュラータ)やSalacia oblonga(サラシア オブロンガ)などのサラキア属植物の根皮で日本での呼び名です。サラシア属植物は熱帯地域に約120種が知られております。S.reticulataやS.oblongaはいずれも比較的大きなつる性の多年生木本で、S.reticulataのことをインド南部やスリランカのタミル語はKoranti(コランチ)、スリランカのシンハラ語ではKotala himbutu(コタラ ヒンブツ)、サンスクリット語ではEkanayakan(エカナヤカン)、またSoblongaをタミル語ではPonkoranti(ポンコランチ)と呼ばれています。 最近、日本ではサラシア以外にこのような現地名が健康食品の名称として使われ、雑誌でも紹介されています。S.reticulataの伝承薬効としては、『Medicinal Plantsusedin Ceyron』などの書物に、その根皮がリウマチ、淋病および皮膚病や糖尿病の初期の治療に有効であると記載されています。S.oblongaは『Indian Materia Medica』によるとS.reticulata同様に用いるとあります。スリランカではS.reticulataの太い根や幹をくり抜いてコップを作り、食事の際にこれに水や酒を入れて飲むと糖尿病の予防になると伝えられており、コロンボ市内の薬局で売られております。一般には、細断した根や茎を荼剤としても飲まれています。 このように、S.reticulataの抽出エキスは血糖値上昇抑制作用のあることが報告されています。スリランカのコロンボ大学のグループは1984年に「Journal of Ethnopharmacology」という英国の学術雑誌にスリランカ産 S.reticulata 根皮の水抽出エキスにブドウ糖の経口負荷ラットでの血糖降下作用のあることや、富山医科薬科大学のグルーブは1990年に「Phytotherapy Research」という学術雑誌にスリランカ産S.reticulataの根皮エキスをstreptozotocin誘発の糖尿病ラット(膵臟ランゲルハンス島のβ細胞に障害を与え、インスリンの分泌を抑制した高血糖ラット)に投与して血糖値低下作用があると報告されています。また、同グループらにより肌S.reticulataから多くの珍しい構造をしたトリテルペン類が単離され構造が報告されていますがが、血糖値上昇を抑制する成分については言及していません。 筆者の吉川氏らは、スリランカ産のS.reticulataについて、根や茎の水可溶部エキスにショ糖経口負荷ラットにおける血糖上昇に対する顕著な抑制作用のあることを見出し、そのメカニズムはαグルコシダーゼ阻害作用に起因していることが判明しました。すなわち、でんぷん類の食品や砂糖類は唾液中のアミラーゼによって胃の中で消化を受け、十二指腸を通過すると、膵液のアミラーゼによってより消化を受けブドウ糖2分子のマルートスになり、さらに小腸ではシュクラーゼとマルターゼによって1分子のブドウ糖に完全に消化され、小腸の上皮細胞から吸収され、内脈を通り、肝臓に運ばれ、エネルギーとして使われます。この過程でサラシアはシュクラーゼとマルターゼに対するαグルコシターゼ阻害作用をもち、そのため1分子のブドウ糖まで消化されずに、2分子のままで小腸を通過するので、血糖値が上昇しないのです。そのサラシア有効成分をラットを用いて研究した結果、salacinol(サラシノール)とkotalanol(コタラノール)でした。Salacinolやkotalanolは、チオ糖スルホニウム分子内硫酸塩構造をもつ新規化合物で、最近、合成研究が盛んに検討されています。昨年になってカナダの研究者などによりsalacinolの全合成に成功され、近畿大学薬学部の村岡修教授らはその誘導体を合成しています。 Salacinolとkotalanolは、現在市販されているαグルコシダーゼ阻害抗糖尿病薬のacarboseと比べてinvitrではシュクラーゼやマルターゼに対して、同程度の活性が認められ、イソマルターゼに対してはacarboseよりも強いことが判明し、invitroでの作用はacarboseよりも強く強く、新しいαグルコシダーゼ阻害抗糖尿病薬としての応用が期待されています。 Salacinol類の活性発現の必須構造を明らかにするため、分解生成物や合成誘導体について阻害活性を比較検討したところ、このスルホニウム分子内硫酸鉛部分が活性に必須な構造であることが判明しました。サラシアにはsalacinol以外に最も含量の多いmangiferinなどのポリフェノール成分にも弱いながらαグルコシダーゼ阻害作用が認められ、これらのポリフェノール成分には抗酸化作用や肝保護作用、胃保護作用および抗肥満作用などの作用のあることも判明しました。 S.reticulataのほか、S.oblongaやS.chinensis(S.prinoides)の根や幹にもsalacinolやkatalanolが含まれています。S.reticulata水抽出エキスについては、急性毒性、亜急性毒性、変異原作、抗原性、光毒性などが検討され、安全性が明らかにされております。また、臨床試験では健常人の血糖の改善作用が得られたと報告されています。 |
2001年 11月29日 毎日新聞 |
アトピー性皮膚炎や花粉症「南米の生薬成分で症状改善」 熱帯植物「シジュウム」(シジュウムの木、高さは人の背丈ほど)の抽出物 「脱ステロイド剤」めざし研究−−東邦大大橋病院や日大薬学部 ブラジルなど南米の熱帯地方に生えるシジュウム(フトモモ科)という植物の抽出物が、アトピー性皮膚炎や花粉症に効果のあることが分かってきた。厚生労働省の予算で基礎研究も行われ、科学的な根拠も明らかになってきた。ステロイド外用剤の減量や離脱にも役立ちそうだ。【小島正美】 東邦大学大橋柄院(東京都目黒区)では5年前から、アトピー性皮膚炎に悩む患者にシジュウムの抽出エキスを混ぜたクリームやシジュウム茶を服用してもらっている。これまでに100人を超える人が試した。患者を診てきた同病院第二小児科学教室の鈴木五男助教授は「かゆみが軽くなったり、炎症が改善されたり、6割近くで有効だった。私自鼻、花粉症に悩んできたが、花粉症の時期が来る前にシジュウム茶を飲むと症状が軽くなることも分かった」と話す。 シジュウムは殺菌作用が強く、ブラジルなどでは昔から口内炎などの民間薬として使われていた。民間人から聞いて、この植物の基礎的な研究を最初に行ったのは日本大学薬学部の北中進教授だ。これまでにラットの実験で皮膚にある肥満細胞から、かゆみの原因物質となるヒスタミンが出てくるのを抑えることが分かった。アロエにもヒスタミンの抑制作用があるが、シジュウムはその100倍も高いという。 このほか、アレルギーの原因となる抗原に抗体が結合して炎症を引き起こす抗原抗体反応を抑えたり、免疫細胞の働きをバランスよく保つ(Th1細胞の活発化とTh2細胞の抑制)ことなどが判明した。3年前から厚労省の予算で研究し、報告書も出してきた北中さんは「医薬品のような効力はないが、バランスよく効くところが生薬のよいところ」と話す。 アトピー性皮膚炎によいといわれる民間薬は多くあるが、シジュウムのように基礎的な研究が進んだ例は珍しい。鈴木さんは「シジュウムだけで治る例は一部だ。ステロイド外用剤は長期使用すると副作用が出やすい。ステロイドで症状が収まったあとに塗ったりすれば、ステロイドの減量や離脱に役立つ」と補助療法として期待できる点を強調する。 こうした研究を知った医師や薬剤師などで組織した「日本自然療法学会」(大槻彰会長・約1300人)は2年前から、シジュウムのクリーム、茶、入浴剤の販売を始めた。製品は同学会員のいる薬局で販売している。 |
2001年 11月7日 薬事日報 |
健康食品を科学する−15− ノコギリヤシ 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 ノコギリヤシは北米原産の樹高2〜6mの小型のヤシの一種で、葉がノコギリのようにギザギザしているので、この名がついています。英名ではSawPalmettoといわれます。その学名としてSerenoarepensが用いられ、SabalserrulataやSarenoaserrulataとsynonymです。 本種は、サウスカロライナからフロリダ州およびカリフォルニア州南部の沿岸の砂丘に自生しており、夏に芳香性のクリーム色の花が咲き、初冬にオリーブ型の深い紫色の果実がつきます。成熟した果実はバニラのような香りがあり、味は石験のようです。 アメリカ先住民はこの果実を男性の強壮剤として珍重し、強力な利尿作用があり、膀胱や尿道疾患の治療薬としていました。19世紀頃から一般にも広がり、20世紀初頭には泌尿器障害の治療や女性の乳房増大に有効なハーブとして人気を得ています。 1950年代には、ノコギリヤシの果実が米国で「USNationalFormulary」に治療薬として収載され、男性の強壮、利尿、鎮静を目的に服用されました。60年代になって含有成分や薬理作用の研究が進み、その果実の油性成分が前立腺肥大症による排尿障害に有効なことが証明されました。 前立腺肥大症は、加齢とともに前立腺が肥大し、尿道を圧迫して頻尿、残尿、尿量の減少などの排床障害を起こす疾患で、元気のある人には発症しないのですが、元気がなくなる五十歳代から発症し始め、60歳代の男性の60%、70歳代では90%に尿道周囲腺(内腺)の肥大が見られるようになるといわれています。 ノコギリヤシの前立腺肥大に対する効果は、「植物性のカテーテル」とも評されるほど有効であるといわれています。今日では、ドイツ、イタリア、フランス、ノルウェー、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国で医薬品として販売され、前立腺肥大に使われるハーブの中で最も繁用されています。 アメリカのハーブ市場では、99年度において第8位の売り上げを示しています。日本でも、300〜400万人もいるといわれる前立腺肥大症の排尿トラブルの改善食品として支持されています。ノコギリヤシの果実には、caproicacidやarachidicacidなどの飽和脂肪酸やlinoleicacidなどの不蝕和脂肪酸からなる遊離脂肪酸が大量に含まれています。そのほか、b-sitosterolなどのステロール類やその配糖体、ステロールの脂肪酸エステル類およぴiso-quercitrinなどのフラボノイドの存在が知られています。流通する商品は、脂肪酸含量が85〜95%と規定されています。 前立腺肥大の原因としては、一説によると男性ホルモンと女性ホルモンのアンバランスが原因で、男性のホルモンのテストステロンからジヒドロテストステロンに変化し、それの増加が関係しているといわれています。ノコギリヤシの果実には抗男性ホルモン作用があり、その作用機序はテストステロンを活性型のジヒドローテストステロンに変換する5α-reductase活性を特異的に阻害していることに大きく依存しているようです。 遊離脂肪酸や脂肪酸エステル、ステロールなどの脂溶性成分が豊富に含まれ、これらの油脂成分が5α-reductaseを阻害することによってジヒドロテストステロンの生成を抑制するといわれています。 また、ノコギリヤシ抽出物が人の前立腺細胞においてアンドロゲンレセプターに関与することが示されており、ジヒドロテストステロンのレセプターへの結合阻害も予想されています。さらに、ノコギリヤシ果実抽出物には、アラキドン酸からの炎症基因物質の生成酵素の阻害作用があり、抗炎症作用も期待されています。このような効果で前立腺肥大の予防と改善に働くと考えられています。 臨床的には、110人の前立腺肥大症患者に1日320mgのノコギリヤシ抽出物を4週間投与した結果、排尿の時の痛みの減少、夜間の排尿回数、勝胱の残尿量の減少などが見られ、特に尿流速の増加が顕著で、15〜30カ月の継続投与でよりよい改良効果が得られたと報告されています。 305人を対象とした90日間の投与で、88%の患者が尿流速の増加、前立腺サイズの縮小効果が得られたと報告されています。そのほかに多くの臨床報告があり、ノコギリヤシ果実抽出物の有効性が臨床試験データからも支持されています。 副作用としては、過剰に摂取すると希に胃の不調や頭痛が出ると報告されています。また、果実を大量に食べると下痢を起こすこともあるといわれています。重篤な副作用はないように思われますが、適用に際しては薬剤師の指導が必要と思われます。 |
2001年 10月24日 薬事日報 |
健康食品を科学する−14− セントジョーンズワート 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 健康食品を科学する 天然素材の基源や伝承簗効を解説 セントジョンズワート(St.John's Wort)は、オトギリソウ科植物のセイヨウオトギリソウ(学名Hypericum perforatum)のことで、日本に自生するオトギリソウと同属でこれによく似たレモンの香りのする黄色い花をつけます。その開花期の地上部が西洋ハーブとして利用されています。 主にヨーロッパから中央アジアにかけて分布しており、草丈30・60cmの直立性の多年草で、茎には二本の縦の隆起線が本植物の特徴です。市販されているものには贋偽品が多いので、この点を鑑別点にしてください。 葉には多数の大きな分泌のうが斑点状に存在し、ここに油滴が入っており、つぶすと赤い汁が出ます。ヨーロッパではこの赤い汁が血のように思えることから「神の血」といわれ神聖な植物とされました。ヒペリシン(0.1〜0.3%含有)という物質が赤色の蛍光を発します。 セントジョンズワートという名前は、洗礼者ヨハネにちなんだもので、6月26日のSt.John's Dayの前夜にこの植物の花輪をキリストの像に飾り、魔除けとしてこの植物を燃やすという習慣に由来します。古くから心の閣を照らし、霊を追い出す「Sunshine Herb」と呼ばれており、不眠症やうつ症、ヒステリーなどの治療に用いられていました。ローマ時代の薬物書である「ディオスコリデスの薬物誌(ギリシャ本草ともいわれる)」には、「ASKURON」という薬物名で、坐骨神経痛の痛み止めに蜂蜜とともに内服し、火傷の治療に外用されたことが記載されています。イギリスの最初の薬局方にも収載され、現在フランスやドイツの薬局方にも収載されています。 近年になって、セントジョンズワートの抗うつ作用が注目を浴び、ヨーロッパや米国で天然抗うつ薬として広く利用されるようになっています。また、赤色の浸出油が外傷、挫傷、筋肉痛、およぴ火傷の治療に外用されています。その他、胆汁分泌作用があるので肝臓病によいとか、抗ウイルス作用があるので口唇ヘルペスや帯状疱疹にも応用されています。 1999年度の米国でのハーブ売り上げランキングでは、エキナセア、イチョウ葉についで第3位になっています。 セントジョンズワートの成分については、これまでに詳細に研究されており、ヒペリシン(hypericin)などのキノン類やアメントフラボン(amentoflavone)などのフラボノイド類が多数見出されているほか、ヒベルフォリン(hyperforin)などのフロログルシン誘導体やタンニン、アミノ酸類が報告されています。 セントジョンズワートは、軽度から中程度の抑うつ気分、いらいら不眠、睡眠過剰、疲労感、絶望感といったうつ症状を改善することが臨床試験で報告されています。 1996年に報告された二重青検での臨床試験結果からは、セントジョンズワートには既存の抗うつ薬と同等以上の効果があり、しかも副作用も少ないと報告されています。新薬とはちがい、即効性がなく効果がみられるまで数週間はかかります。1日2〜4gを健康茶として服用するとよいでしょう。 うつ病とは、なんともいえない憂鬱で不快な気分になり、気分が落ち込み、自分でどうしようもなくなり、好きだったことに共味を示さなくなり、喜びを感じられなくなり、新聞も読みたくないというような日常生活のことへも関心や自信がなくなり、寝つきが悪く、床に入っても1、2時間入眠できない、食欲がない、思考力が低下する、性欲がなくなるといった病的な症状がみられる病気をいいます。うつ病は単に心の病ではなく、脳の機能低下症であるといわれています。それには神経伝達物質であるセロトニンの分泌の減少が関与しているといわれいています。 セントジョンズワートの抗うつ作用のメカニズムとして、「SSRI(セレクティブ・セロトニン・リアップティク・インヒビター=選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」と同様の作用があるといわれています。放出されたセロトニンを再び取り込まれるのを阻害することによりセロトニンの濃度を上げるという機序です。活性成分は、フロログルシン誘導体のヒベルフォリンであるという報告があります。セントジョンズワートは天然のSSRIといわれていますが、うつ病治療で新薬のSSRIと併用すると、セロトニンの作用が増強されて、副作用が現れやすくなるので注意が必要です。 セントジョンズワートの大量服用によって日光を浴びると湿疹やかゆみが生じる光過敏症を起こすと報告されていましたが、通常の量ではこのような副作用の可能性は低いといわれていました。 最近、セントジョンズワートの摂取により薬物代謝酵素であるチトクロームP450、特にサブタイプであるCYP3A4およびCYP1A2が誘導されて、抗HIV薬のインジナビル、メシル酸サキナビルなど、強心薬のジゴキシン、ジギトキシンなど、免疫抑制剤のシクロスポリン、タクロリムスなど、気管支拡張薬のテオフィリン、アミノフィリンなど、血液凝固防止剤のワルファリンなど、経口避妊薬のエチニルエストラジオールなど、抗てんかん薬のフェニトイン、カルバマゼピンなど、抗不整脈薬のジソビラミド、リドカインなどの血中濃度を著しく低下させることが明らかとなっています。この酵素誘導化物質はヒペルフォリンであると報告されていますので、これらの医薬品の服用の際には、セントジョンズワートを摂来しないように、厚生労働省から注意されています。十分気をつけてください。 |
2001年 9月10日 薬事日報 |
健康食品を科学する−13− マリアアザミ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 マリアアザミは、南ヨーロッパ、北アフリカ、アジアにかけて広く分布するキク科オオアザミ属植物のSilybum marinumの種子を起源とする西洋ハーブです。マリアアザミの別名に、オオアザミ、オオヒレアザミ、ミルクシスル(milk thigtle)、レディーシスル、ホーリーシスルなどがあります。草丈が1〜2mの1年または2年生の草本で、光沢のある大きな共には特徴的な白い舞点と鋭いトゲがあります。マリアアザミやミルクシスルなどの一般名は、葉にある乳白色の脈状斑点に由来しており、これは聖母マリアの母乳が葉の上にこぽれたとか、生母マリアに奉げるミルクを運んでいた娘にマリアアザミのトゲが刺さり、その痛みにミルクを葉にこぽして斑点になったという伝鋭があります。ヨーロッパにおいて、古くから葉や新芽を食用とし、栽培されていたこともあります。その種子は最も歴史のある西洋ハーブとして、2千年以上も前から肝臓、胆嚢、脾臟、消化管などの病気の治療や母乳不足に用いられていました。今日では、マリアアザミの種子の抽出物は、肝機能改善薬としてドイツで医薬品として認可されています。マリアアザミの主要成分として、silybin、silychrystin およぴsilydianin などのフラボノリグナン類が知られており、これらの3種の成分を含有する抽出分画を「シリマリン(silymarin)と呼ぱれています。シリマリンの肝保護作用については、次のようなin vivoおよぴin vitroの実験がが報告されています。 @杭酸化作用:活性酸素などのフリーラジカルはさまぎまな肝臓病の一因といわれており、シリマリンに抗酸化作用があり、生体内の主要な活性酸素除去物資であるグルタチオンを増加させる作用もあることが報告されています。 Aマウスを用いた四塩化炭素肝障害モデルでGPTの上昇を抑制する肝保護作用が報告されています。 B再生肝細胞作用:ラットの摘出肝細胞の再生効果が認められています。その作用はたんばく質合成にかかわるRNAポリメラーゼTと、リボソームRNAの合成を活性化することによることが報告されています。 C解毒作用:ヨーロッパでは、毒キノコのタマゴテングダケ(別名デスキャップマッシュルーム)による食中毒が知られています。このキノコを一本食べるだけで激しいコレラ様症状が現れます。毒成分である環状ベプチドが急激な肝臟障害を超こし、30%が死に至るといわれています。シリマリンはキノコの毒成分が肝細胞の細胞膜上の受容体と結合するのを抑制して肝細胞を保護する作用を持っています。さらに、毒が入り込んだ肝細胞を正常な状態に回復させる機能も持つといわれています。ドイツでは、毒キノコによる食中毒の緊急治療にシリマリンの静脈注射剤が用いられています。 Dラットでシリマリンの短期(1日量1g/s、15日間)およぴ長期(1日量100mg/s、15〜22週間)の経口投与で副作用が認められず、静脈内投与でのLD50値もマウス(1010mg/s)、ラット(873mg/s)、ウサギ(300mg/s)で明らかにされています。さらに、妊娠中の母体と胎児への影響もないことがラットとウサギで調べられています。 シリマリンの臨床治験としては、 @アルコール性肝臟障害患者200人に対して、シリマリンを1日量420mg4週間投与による二重盲検試験で明らかに肝臟機能の改善効果を示した。 A慢性肝炎患者36人に対して、シリマリンを6カ月投与による二重盲検試験で明らかに肝臟機能の改善効果を示した。 Bさまぎまな原因による肝硬変患者170人を対象に、4年間にわたるシリマリン投与による二重盲検試験で、症状悪化を遅らせる効果が認められ、延命率も高く、アルコールが原因による患者ではより顕著であった。 C肝硬変、脂肪肝、その他を含む慢性肝臟病患者277人を対象に、シリマリン投与は効果的に肝繊維化を抑制し、投与4週間後には肝繊維化の指標である血清プロコラーゲンVベプチドレベルの明らかな低下が認められた。 D向精神薬の長期投与による肝臟障害患者60人に対して、シリマリンを1日量800mg、90日間投与した場合、有効性が示唆された。 E麻酔による肝臟障害に対して、手術の前後でのシリマリン投与で抑制された。 Fトルエンやキシレンによる肝臟障害患者にシリマリンを30日間経口投与して改善効果が認められた。 このようにシリマリンは、健康食品の植物抽出物製剤にもかかわらず、肝障害に対する薬理実験、安全性、臨床治験に至るまで新薬に近い研究試験が実施されたのはさすがドイツです。 肝臟病に有効な医薬品が少ないだけにシリマリンは、肝臟が弱っている人、特にアルコールの飲み過ぎで肝臟が気になる人には有用な健康食品であるといえます。 |
2001年 8月30日 毎日新聞 |
やっぱりリンゴは万能薬 農業技術研発表 毎日1個半で中性脂肪減少 リンゴを毎日1個半〜2個程度食べると血液中の中性脂肪が平均21%減少するという、人を対象にした試験結果を農業技術研究機構果樹研究所(茨城県つくば市)が29日発表した。甘い果物には果糖などの糖分が含まれ、「果物と摂取すると中性脂肪が増える」と敬遠する向きも少なくないが、今回のデータはこの常識を覆す成果。同研究所は「毎日のリンゴ摂取は高脂血症などの生活習慣病を予防し、健康の維持増進に有効」と話している。 試験では30歳から57歳までの男女14人に3週間、毎日1個半から2個のリンゴを通常の食事に加えて食べてもらった。3週間後に中性脂肪値は14人のうち12人が低下し、平均で21%下がった。 もともと中性脂肪値が高い人ほど減少幅が大きく、同研究所は「リンゴには中性脂肪を正常化する作用が備わっているのでは」と指摘する。また、試験参加者の血液中のビタミンC量もリンゴを毎日食べる前に比べて平均34%増えた。腸内でビフィズス菌などの善玉菌が増え、便通が良くなるなどの効果もみられた。機能性成分の分析を進めるという。 |
2001年 8月8日 薬事日報 |
健康食品を科学する−12− エキナセア 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 エキナセアは、北米原産のキク科多年生植物 Echinacea angustifolia E.pallida および E. purpurea などを基原とする西洋ハーブでピンク色の美しい花が咲きます。最近、日本においても健康食品素材として繁用されています。 Echinacea という属名は、ギリシャ語で「ウニ」または「ハリネズミ」を意味する echinos に由来し、花の中央のトゲ状の花冠部にちなんで名づけられています。北米の先住民インディアンが最も重要な薬として伝えてきたもので、主として根部が薬用とされるほか、柔らかい新鮮全草の搾汁液やペースト状の形でも用いられています。インディアンは、各種の外傷、やけど、リンパ腺のはれ(おたふくかぜ)および虫さされの治療に外用するほか、頭痛、咳、悪寒といったかぜの諸症状や、胃けいれん、はしか、および淋病の治療に内服していました。また、ガラガラヘビにかまれた時の治療をはじめ、いろいろな毒に対する解毒薬としても利用しており、さらに歯痛や首の痛みに根を噛んで治療していたと伝えられており、万能薬的な用途があるといわれています。 十九世紀後半にネプラスカ州パウニー市に住んでいたドイツ系米国人H.C.F Meyer がエキナセアの有用性に着目して、エキナセアを使った独自の製剤「Meyer の血液清浄剤」を考案し、リウマチ、神経痛、頭痛、丹毒、消化不良、腫瘍、外傷、めまい、腺病をはじめ、ガラガラヘビなどの解毒に有効と宣伝してきました。これが契機となってエキナセアが次第に米国全土に伝わり、その薬効が注目されるようになりました。二十世紀になって、欧州においてもエキナセアの有用性が認められるようになり、第二次世界大戦後にドイツを中心に薬理学的研究が進められました。その結果、免疫系を亢進して、身体の防御機能が低下した時にかかりやすいかぜをはじめとしてHIVやエイズなどの感染症にも研究が進んでいます。皮膚炎の治療や予防に有効であり、また傷の回復力を高める治療効果のあることも明らかにされました。今日ではドイツで医薬品として「かぜ症候群の緩和、予防」を目的に使用されています。また、抗アレルギー作用があるともいわれ、欧州で最も人気のあるハーブの一つとなっています。また、米国のハーブ市場で売り上げ第一位(一九九九年度)になるなど「かぜ予防や免疫力向上に有効なハーブ」として高い知名度を確立しています。 Echinacea 属の植物で薬用とされる前記の三種以外に、ドイツではE. purpurea の花期の地上部と E. pallida の根が薬用とされています。一方、英国では E. angustifolia の根がハーブ薬局方の筆頭に収載されています。 エキナセアの含有成分については、これまでに詳細な研究が行われており、多糖類、カフェ酸誘導体、フラボノイド、ポリアセチレン、アルキルアミド類、モノおよぴセスキテルペンからなる精油成分のほか、ベタインやピロリジン型アルカロイドなど多数の化合物が明らかになっています。多糖類として、E. purpurea からフコガラクトシルグルカンと酸性アラビノガラクタンが分離され、これらの多糖類にマクロファージや好中球などの免疫担当細胞の食作用を冗進し、マクロファージからの免疫応答物質であるインターロイキン-1の産生を高めると報告されています。また、これらの多糖類にはリステリア菌やカンジダ菌による全身性感染症を防止する効果や、インフルエンザ、ヘルペス等への抗ウイルス作用もあると報告されています。そのほか、アルキルアミド類に抗炎痺作用、カフェ酸配糖体にUV照射によるコラーゲンの酸化障害抑制作用が報告されています。 エキナセア単独の製剤による臨床試験として、二四六人のかぜ患者を対象とした二重盲検試験においてかぜ治療における効果と安全性が確認されています。しかし、過剰摂取すると短期の発熱、吐き気、下痢を起こすこともあるといわれています。キク科植物によりアレルギーを起こす人や、妊婦は避けるべきとの意見もあります。エキナセアは、日本では健康食品として用いられていますが、欧州では医薬品とされているので、使用に際しては薬剤師など専門家に相談する必要があると思われます。 |
2001年 7月12日 薬事日報 |
健康食品を科学する−11− 緑茶 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部教授久保道徳 京都薬科大学教授吉川雅之 チャは、ツバキ科植物の常緑樹で、中国の雲南省からビルマの北部およびインドのアッサム地方にわたる山岳地域が原産地とされる。 チャには、樹高3m程度になる灌木で耐寒性の強い中国種(Camellia sinensis L. var. sinensis)と、喬木で葉が大きく高木性のアッサム種(C. sinensis L. var. assamica)と呼ばれる二種の変種が知られている。中国種は中国中南部や日本の暖地に生育し、アッサム種は北インド、ミャンマー、ラオス、ベトナム、中国西南部、台湾などの熱帯、または亜熱帯地域に分布している。また、インドシナ半島には両種の交雑種が認められる。飲用される茶類には加工調整法の遠いによって不発酵茶(緑茶など)、半発酵茶(烏龍茶など)および発酵茶(紅茶など)に大別される。緑茶は一般には中国種から製造されており、アッサム種から調整された緑茶は渋味が非常に強い。 喫茶の習慣は、三世紀半ば中国において始まったとされ、当初は薬用が中心であったと考えられている。その効用として、「頭痛と目を清める、煩渇を除く、痰を化す、食を消す、利尿する、解毒する」と伝承されている。日本では、鎌倉時代に栄西禅師が宋から種を持ち帰り、栽培化を進めるとともに、茶の効用を説いた「喫茶養生記」を著すなどして喫茶の普及に貢献したと伝えられている。当時は貴族や僧侶などの上流階級に飲用されていたが、室町時代以降になって次第に広がり、製茶の加工法も種々工夫された。江戸時代には蒸し煎茶が現れ、幕末には玉露茶が作られるなどして一般庶民へ定着していった。 チャ葉の主要成分としては、中枢興奮作用を示すアルカロイドのカフェインと茶の甘い旨味成分で、鎮静作用を有するアミノ酸のテアニンおよびポリフェノールの一種であるカテキンが知られており、また、微量のサポニンの存在も明らかになっている。緑茶のカテキン類の薬効として、抗がん作用、抗酸化作用、血糖値降下作用、抗菌および抗齲蝕作用などが報告されている。 この中で、抗がん作用については、茶の生産地である静岡県(中川根町)での胃がんの発生率が少ないという免疫学的調査結果から注目されるようになった。抗発がんプロモーション試験(in vitro)では、緑茶エキスやカテキン類に抗発がんプロモーション作用が見出され、特に緑茶カテキンの(-)-epigallo-catechin gallate(EGCG)に強い活性が認められている。ラットでの皮膚二段階発がん抑制試験では、EGCGに発がん抑制作用が明らかになっている。このほか、カテキン類が肺がん細胞PC-9に対して濃度依存的に増埴抑制することや、腹水肝がん細胞AHlO9Aでの増殖抑制や浸潤抑制作相のあることが報告されている。最近、埼工県立がんセンターの調査から、喫茶量(飲用量)の多い場合(1日に10杯以上)に発がん年齢の遅延傾向があることが明らかにされている。 カテキン類の抗酸化作用としては、不飽和脂肪酸の酸化抑制をはじめ、ラジカル消去作用および肝臓中のミクロソームやミトコンドリアの脂質の酸化を抑制したと報告されている。また、ラットに長期(12〜18ヶ月)カテキンを投与した場合、血中の過酸化脂質やコレステロールの上昇抑制効果が認められている。カテキン類には、デンプンやショ糖投与ラットでの血糖値上昇の抑制作用のあることや、黄色ブドウ球菌などの食中毒菌に対しての抗箘作用をはじめ、虫歯菌や成人性歯周病菌の増殖抑制作用、糞便臭軽減作用および整賜作用などが報告されている。このように、カテキンはチャ薬の主薬効成分の一つと考えられる。 しかし、チャ葉の伝承薬効には、カテキンのみでは説明困難なものも多くある。また、カチキン類の多様な生物活性の多くに、カテキン間での相乗効果が報告されており、混合物の良さが認められている。チャ葉のサポニンにもラットでのカラゲニン誘発足浮腫に対する抗炎症作用、ヒアルロニダーゼ阻害作用、皮膚病原性真菌に対する抗菌作用および高血圧自然発症ラットにおける血圧降下作用などが明らかとなっている。このほか、チャ葉には、ビタミンA、CおよびEが豊富に含まれるなどカテキン以外の成分も薬効発現に重要な役割を担っていると考えられる。 「喫茶養生記」には「そもそも茶というのは、末世における養生の仙薬であり、人の寿命を延ばす妙術である・・・・」と記されている。チャ葉からカテキンなど一部の成分を収り出してカプセルや錠剤で服用することも良いが、喫茶して身も心もリフレッシュする方が体に良いように思われる。 |
2001年 6月11日 薬事日報 |
健康食品を科学する−10その1− 霊芝 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 健康食品素材として利用されるキノコ類は、霊芝に代表されるサルノコシカケ科やキコブタケ科の菌類とシイタケなどの食用キノコに大別されます。霊芝をはじめ、猪苓、茯苓、雷丸、梅寄生、桑黄(メシマコブ)などのサルノコシカケ科やキコブタケ科の菌類は、明確な薬効が伝承されており漢方医学や中国伝統医学において配剤される生薬として付置づけられます。 霊芝は、サルノコシカケ科のマンネンタケ(Ganoderma lucidum)またはその近縁種の糸実体で、中国最古の薬物書『神農本草経』(上薬)に、紫芝のほかに五行説に甚づく、赤、黒、青、白、黄色の名がついた芝が記載されています。胞子が飛散して、雑木の根に寄生し、半年でキノコの傘が大きくなり、黄色の縁取りが消失する頃に枯死し、生育環境により傘の色が変化するといわれている。マンネンタケは一種だとは思われていましたが、自生品の糸実体を培養すると、採集他の違いで、互いに糸実体が融合せず、対峙線ができるので、多くの品種があるものと思われます。そのことは薬理作用にも差がみられ、血圧降下作用のあるマンネンタケ、血圧を上昇させるもの、高脂血症改善作用のあるもの、抗アレルギー作用のあるもの、あるいは何の薬理活性もみられないものがあり、一品種で万能の薬効をもつものはないと思われます。それは傘の色や形状では識別できず、薬理効果の確かめられたものを培養して、一定の品質を得る以外にありません。それが『神農本草経』に六種の霊芝の存在を示したものと思われます。傘の表面には苦いトリテルペン類のガノデリック酸などを含み、それは抗アレルギー作用成分の一つです。その他、多糖類に血圧降下作用、抗腫瘍および血糖降下作用が報告されています。用法としては、粉末をそのまま服用する場合や、酒に浸して薬用酒として用いるなど主として単味で利用されています。『神農本草経』の上薬に分類されることから、多量の摂取や長期連用においても副作用の心配が少なく、生活習慣病の予防に有効で多彩な伝承薬効を有し、エキスレベルでの科学的裏づけもあることから健康食品素材として優れたものと思われます。 一方、食用キノコ類は、伝統医学において方剤に配剤されることはなく、さしたる薬効も伝承されていません。 1960年代になってサルノコシカケ科などの薬用菌類や食用キノコについてSarcoma 180固型がん細胞を用いた制がん作用が検討された結果、シイタケやマツタケ、ナメコ、エノキタケなどの食用キノコにも80%を超える顕著な腫瘍阻止率が認められました。しかし、これらの結果は経口投与ではありませんでした。 さらに詳細な検討の結果、サルノコシカケ科のカワラタケからPSK(クレスチン)、キシメジ科のシイタケからレンチナンと称する多糖体〔(?-(1・3)-D-グルカン類〕が分離され、杭がん剤として認可されました。ただし、その後の臨床データから、これらの多糖類には単独使用の効果はなく、他の抗がん剤との併用時における免疫増強活性と考えられています。 |
2001年 6月11日 薬事日報 |
健康食品を科学する−10その2− アガリクス 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 食用キノコ類は、伝統医学において方剤に配剤されることはなく、さしたる薬効も伝承されていません。 1960年代になってサルノコシカケ科などの薬用菌類や食用キノコについてSarcoma 180固型がん細胞を用いた制がん作用が検討された結果、シイタケやマツタケ、ナメコ、エノキタケなどの食用キノコにも80%を超える顕著な腫瘍阻止率が認められました。しかし、これらの結果は経口投与ではありませんでした。 さらに詳細な検討の結果、サルノコシカケ科のカワラタケからPSK(クレスチン)、キシメジ科のシイタケからレンチナンと称する多糖体〔(?-(1・3)-D-グルカン類〕が分離され、杭がん剤として認可されました。ただし、その後の臨床データから、これらの多糖類には単独使用の効果はなく、他の抗がん剤との併用時における免疫増強活性と考えられています。 アガリクスは、ハラタケ科ヒメマツタケ(Agaricus blazei)に属する担子菌の子実体の商品名で、欧米で食用とされるマッシュルーム(シャンピニオン)の近縁のキノコです。ヒメマツタケは歯ごたえはいいですが美味とはいえず、腐敗も早いことから食用キノコとしては劣ります。最近、「レーガン元大統領が治療に使った」とか「がんの特効薬」というイメージが宣伝されています。その杭がん作用および含有成分については、ヒメマツタケから抗変異原性を有するリノール酸、殺箘作用を有する(13ZE−LOH)、およびSarcoma 180移植マウスに対する抗腫瘍作用を有する成分として ergosterol が単離されました。さらにergosterol は茯苓にも含まれる成分としても有名で、腫瘍誘導血管新生に対する抑制作用、C57BL/6マウスを用いた新血管新生誘導 Matrigel に対する抑制作用を示しました。しかし、これらの成分は水には溶けません。水溶性分画からは各種がん細胞移植マウスに対する抗腫瘍作相を有する多糖類?−1'6−glucan や、?−1'2−マンナン主鎖にジグルコシド側鎖をもつグルコマンナンや、?−1'4−glucan と?−1'、6−glucan の複合体、さらにタンパク質と多糖類の複合体が単離されています。タンパク質と多糖類の複合体であるFV−2−bは、Meth A移植マウスに対してその細胞増殖を抑制し、同様にタンパク賃と多糖類の複合体であるATOMは各種のがん移植マウスに対して活性を示し、その抗腫瘍作用発現はマクロファージの活性化と補体C3の変性化によるものと考えられています。 以上のことから、アガリクスは抗がん作用のイメージが先行した健康食品ともいえ、今後の詳細な臨床治験成績が待たれます。 |
2001年 5月7日 薬事日報 |
健康食品を科学する−9− アロエ 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部教授久保道徳 京都薬科大学教授吉川雅之 アロエはアフリカ原産のユリ科植物で、常緑多肉質の葉をもつ多年性草本です。最近は、ユリ科からアロエ科アロエ属に分類されています。アロエ属植物はサハラ砂漠以南の岩の多い草地に自生し約350種が知られており、園芸品種を含めると500種以上の品種があるといわれています。 アロエはアラビア語の「苦み」を意味する Alloch に由来し、有史以前から世界最古の下剤といわれ、食品および香粧品としても広く利用されてきました。ブッシュマンも古くから傷の手当てに用いていた壁画が残っています。古代エジプトの医学を知る上で重要な資料である『医学パピルス』には、マダガスカル島のアロエが苦味健胃薬として用いられていたことが記載されています。 古代ギリシャ時代にアリストテレスは、アレキサンダー大王に、瀉下作用の強いアロエが生育する東アフリカのスコートラ島を占領するように勧めたといわれ、クレオパトラが美容のために用いたというようなエピソードも残っています。 紀元1世紀半ば、ローマ帝国時代にディオスコリデスによりて著された『De Materia Medica 』の第三巻にトゲのある植物としてアロエが収載され、収斂、催眠、緩下剤として内服し、外傷、眼病、痔疾、あざに外用しています。同書は、ギリシャ語で書かれているので『ギリシャ本草」ともいわれ、1500年以上にわたり、欧州の薬物学のバイブルとなった有名な書で、最近、和訳去れて出版されています。 中国へは、唐代にアロエ塊が渡来し、「芦薈(ロカイ)」と称され、陳藏器の『本草拾遺』に収載され、便秘、子供のひきつけの治療や苦味健胃薬として用いられ、新鮮葉をやけどや打撲傷およびおできの治療に外用すると記されています。 日本では、鎌倉時代の梶原性全の『万安方』に初めて芦薈の名が見られますが、突際に用いられたのは江戸時代の初期で、貝原益軒の『大和本草』に極めて苦いことが記されています。明治時代には盛んに用いられたようで、『初版・日本薬局方』に「芦薈」の名で収載され、今年の第14改正日本薬局方には、南アフリカ連邦の Cape 州で生産されたケープアロエ(Aloe ferox, A. africana, A. spicata を基源とする)の液汁の乾燥品が収載され、医薬品として取り扱われています。長さ50pほどで肉厚の葉を採集して、葉を重ねて置くと葉緑のとげがお互いの葉を傷つけ合い、傷口から出てくる液汁を直火で濃縮乾燥したもので、抽出したエキスではありません。 欧米では、アラビア半島原産のアロエ・ベラ(A. vera)の方が有名で、各国の薬局方にはアロエ・ベラが収載されています。古くからアラビア商人によってインド、中国、アメリカ大陸にもたらされています。局外品なので、最近は日本でも健康食品や化粧品原料として輸入されています。わが国でも静岡県、三重県などで製剤原料として栽培されています。茎がなく、葉に白色や淡黄色の斑入りのある品種がそれです。 家庭で栽培されているアロエは、茎のあるキダチアロエ(A. arborescens)です。 同品は、鎌倉室町時代にポルトガル人の宣教師が持ち込み、キリスト教の布教とともに全国に普及、栽培化されたと考えられます。他のアロエに比べて寒さに強く、冬にオレンジ色の美しい花を咲かせ、日本の気候風土に適応した品種です。アロエの苦味は、葉の表面の部分で、中身の透明なゼリー状の部分は苦味がありません。最近、アロエ・ベラの仲間に表皮も苦味のないものがあります。この苦味成分が瀉下効果をもっていますので、健胃、強肝、美容などの目的で用いる場合は、苦い部分を取り除いて食べられたらよろしいでしょう。 アロエの顕著な瀉下作用の成分は、アンスロン配糖体で、ほかにaloenenAなどのクロモン配糖体および遊離アントラキノン類が知られています。主成分のアンスロン配糖体barbaloin が、腸内細菌によって生成する aloe-emidinanthrone が瀉下活性本体です。よって、瀉下効果の発現には数時間がかかります。また、糖タンパク質alocinAには幽門結紮ラットでの水浸ストレス胃潰瘍を10mg/sで66.4%も抑制します。このほかに、外用した場合、熱傷、凍傷、創傷、湿疹、皮膚炎、皮膚感染症に対して良好な治療効果を示したことや放射線熱傷にも有効と報告されています。 アロエは妊婦に内服させてはいけないとされています。このほか胃腸虚弱の子供および出血した場合や腎臓病のときも使用は控えるべきとされています。また、新鮮葉の基部からとれる黄色の苦い液体部分は肌によくないといわれていますので注意する必要があります。 |
2001年 4月11日 薬事日報 |
見直される「プラセンタ療法」 |
2001年 4月2日 薬事日報 |
健康食品を科学する−8− イチョウ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部教授 久保道徳 京都薬科大学教授 吉川雅之 イチョウは、およそ1億5千万年前から地球上に存在しており、「生きた化石」と呼ばれる植物です。何千年も生き長らえる生命力の強い植物で、原爆で被災した広島で最初に芽吹いたのがイチョウであったといわれています。 裸子植物イチョウ科の1属1種の珍しい単独種(学名Ginkgo biloba L. bilobaとは葉が二烈という意味)で、中国の原産です。 葉が鴨の足に似ていることから、中国では「鴨脚」といい、宋代にその発音が「ヤーチャオ」といわれ、それを日本人は「イチョウ」と聞こえたという説や、貝原益軒が葉が一枚だから「一葉(イチョウ)」といったという説もありますし日本伝来は、中国から渡来した僧が杖に持ってきたものを挿し木したのがはじまりだといわれています。 雌雄異株で、神社によく見られるまっすぐに伸びたのが雄株で、街路樹に見られる枝ぶりが横に出ているのが雌株です。災害に遭っても枯死せず、防火林になることからよく植えられます。雌花の花粉は空中を長距離飛び、雌しべの小穴に吸い込まれ、子房が成熟し、ここで花粉が精子となり、受精が成立します。 こうして誕生したのが銀杏です。秋には雌株に果実のように見える多肉質の種皮に包まれた種子がたくさんつきます。独特の異臭を放つ外種皮には接触性皮膚炎を起こすアルキルフェノール構造のギンコール酸が多量に含まれています。外種痩を除いた白くて硬い内種皮がギンナン(銀杏)で、三稜が雌株で、三稜の銀杏が雄株ではないかといわれています。 食用にするのは胚乳の部分です。中国では薬膳の原典である『飲膳正要(1330年)』に、銀杏は炒って食べても、煮て食べてもよいとあります。「白果」とも称され、生命力の強い銀杏を強壮薬として、肺結核や老人性の鎮咳や、小児の夜尿症、酒毒、淋病の治療にも良いと伝承されています。 多食すると嘔吐、発熱、呼吸困難などの中毒症状が出ます。中毒には、甘草を多量服用するとよいといわれています。 ところが、イチョウの葉部を薬用にした歴史は中国や日本では見当たりません。1960年代からドイツやフランスなどで日本産イチョウ菓を用いて研究が進められ、脳循環や痴呆に有効であると証明され医薬品として登場したのは最近のことです。欧米では天然医薬品の中でトップとなり、日本へも西洋ハーブとして逆輸入され、健康食品として直接または複合した形で広く利用されるようになりました。 イチョウ集の主要含有成分はフラボノイド類と高度に酸化された特異な骨格のジテルペンであるギンコライド類が知られています。ドイツの公定委員会(コミッションE)では植物由来の医薬品の規格を淀めており、イチョウ葉柚拙物ではフラボノール配糖体やジテルペン含量を明記し、有毒なギンコール酸の含まれていないものを用いるように規定しています。 イチョウ葉抽出物には次の薬理作用が報告され、臨床応用されています。 まず、血栓の形成、アレルギー、炎症、気管支収縮、脳循環系の機能障害を誘導する情報伝達物質の血小板活性化因子(PAF)を特異的に抑制する作用があり、それにはギンコライドBをはじめジテルペン類に強い活性が認められています。次に活性酸素の産生抑制作用や抗酸化作用が知られ、酸化ストレスによる血小板凝集の特翼的阻害作用、ラットでの虚血再灌流後に増加する脳組織内の過酸化脂質の増加抑制作用が証明されています。 さらに、ウサギ大動脈内皮からのプロスタサイクリンと内皮細胞由来弛緩因子の遊離の刺激による血流増加や、虚血動物におけるグルコースの消費を増加させ、脳代謝を改善する作用、老化ラットの海馬のムスカリンレセプターを増加させることも報告され、神経伝達物質に対する効果が認められています。 これらの薬理効果から、イチョウ葉抽出物の臨床効果として、頭痛、耳鳴り、めまいなどの脳神経障害、脳外傷の後退症の改善、脳血管型とアルツハイマー製の痴呆症における注意力と記憶力低下の改善、不安や精神不安定などのうつ症状の改善や抗ストレス作用、LDLの酸化を抑制して動脈硬化の予防、末梢循環障害による間欠性跛行、循環器からくる感覚疾患障害(特に眼科および耳鼻咽喉科の疾患)などの症状に対する医薬品として使われています。副作用としては、経口投与で稀に軽度の胃腸不快、頭痛およびアレルギー性皮膚反応があることが報告されています。 しかし、日本ではイチョウ葉の機能が十分に理解されておらず、医薬品として用いられておりません。健康食品的に扱われているので、簡単な内容表示はあっても、薬効表示や使用説明が明記されていません。過去にイチョウ葉は、食料にされたことも薬用とした経緯もないが、最近の研究によって有効であると証明され、欧米で医薬品的な天然薬物として取り扱っているので、わが国でも使用には薬剤師の指導が必要と思われます。 |
2001年 3月7日 薬事日報 |
健康食品を科学する−7− ウコン 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 ウコンは、漢薬名の「鬱金」の読みに由来した植物・生薬名で、Curcuma longa(またはC. domestic)の学名を持ち、最近は「秋ウコン」ともいっています。秋に白色の清楚なショウガ科特有の美しい花を咲かせます。ウコンの肥大した塊根を鬱金、最近の中国では「郁金」と書いてあり、イギリスでは「ターメリック(turmeric)」と称しています。ラテン語のterra merita(大地の恵み)が転化した語とされており、その他の欧米ではラテン語の「クルクマ」を使っています。この名前は、クロッカス、すなわちサフランを表すサンスクリット語のクンクマから発しているといわれています。サフランは西洋から東洋へ、ターメリックは東洋から西洋にもたらされ、13世紀にマルコポーロも「匂いも色もサフランと同じだ」といった話は有名です。 ウコンは、東南アジアの熱帯地方が原産で、インドを中心に用いられ、カレーの黄色香辛料や薬用として使った長い歴史をもっています。インド語では「ハルティヒ」といわれ、アーユルヴエーダ医学では、黄疸の特効薬とされ、消化不良を改善し、駆風効果を持ち、咳を鎮め、口中の粘った不快感を取り、美声になるといわれています。また、多くの儀式に用いられ、ヒンドウーの結婚式では花嫁がウコンをすり潰して体中に塗るという風習があります。 中国では、仏教用語で「訶黎陀(かりだ)」といわれたそうです。鬱金(うこん)の「鬱」は、中国辺境民族の鬱人が持っていた物産から由来するという説や、「行気解鬱のくすり(鎮静作用)」として用いられることから、鬱(うつ)に由来するという説があります。 鬱金は染料としての歴史も古く、漢の元帝時代にすでに「鬱金は、黄に染める」とあります。タイのお坊さんは、ウコンで染めた黄色の外衣を纏っています。漢代の元帝時代に「鬱金は、黄に染める」とあることから、黄色の染料として用いられたことは明確です。日本でも、江戸時代にはウコン染めが流行し、下着や反物の上巻き、美術品の包みに用いており、さらに、たくあん、京都の湯葉の黄色染めにも使われています。色彩が美しいことと抗菌作用が強いことを利用したのでしょう。 中国で鬱金や姜黄が、薬用にされたのは、唐代の本草書『新修本草』(659年)が最初で、心腹の血積、心痛を治し、気を下し、悪血を破り、新しい血を補い、おでき、金瘡などに用いるとその薬効を挙げています。日本では、沖縄や鹿児島南部の温暖な地方で栽培され、古くから薬用として、沖縄ではウコンは「ウッチン」「ウキン」と呼ばれ、昔はアメーバ赤痢、結核、喘息、子宮出血などの薬草として用いていたようですが、最近、肝臓障害に良いといわれてから急に有名になりました。 ウコンは、胆汁分泌促進作用、肝細胞保護作用、解毒作用の促進作用、杭酸化作用、脂肪の代謝促進作用によるコレステロール低下作用、胆石の排石作用などの実験的な裏づけの研究が行われています。その作用の本体は、黄色色素のクルクミンなどのジアリルヘプタノイドと、ビサボラン型セスキテルペンやモノテルペンなどの精油成分です。 ウコンは、中身が橙黄色の秋ウコンが本命です。春に桃赤色の花の咲く春ウコン(C. aromatica)は、沖縄でも栽培されていますが、クルクミン含有量は秋ウコンに比べて少なく、薄い黄色です。しかし、精油が多く、セスキテルペンのクルクメンが65%も占めており、香りが強いので良品摂いされ、値段も五倍です。肝障害の予防には両方を混ぜてのまれるのがよいでしょう。沖縄では「ヤマウキン」「ウムザヌウキン」と呼ばれ、ウッチ ンと区別しています。 ウコンの地下部はショウガのような太い根茎があり、中国ではこれを生薬「姜黄」と呼び、根茎から出ている根の先端部が紡錘状に肥大している塊根を生薬にしたものを「郁金」と称しています。ところが日本では、春ウコンCurucuma aromaticaの根茎を中国産の鬱金といい、秋ウコンCurucuma longaの椴茎を姜黄といい、混乱しています。 ウコンを煎じてのむ場合は1日6〜12g、粉末は3〜5gが適当です。 |
2001年 2月7日 薬事日報 |
健康食品を科学する−6− ゴマ 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 ゴマは、古くから油をとるために栽培された植物で、メソポタミアや古代エジプトの遺跡からその種子が発見されています。 ゴマ属には10種があり、すへて原産地はアフリカであるといわれています。かなり多くの品種が、インド、スンダ諸島、西インドからも出ています。 紀元前1555年頃に著されたとされている古代エジプト医学書「エーベルス・パピルス」にも収載されており、薬用や食用とされるほか、ゴマ油が顔料として用いられたと伝えられています。 有名な「千一夜物語」に「開けゴマ」の呪文があるように、6世妃頃の中近東では身近な植物であったようです。 また、マルコ・ポーロの著した「東方見聞録」のなかには、ペルシャ人がオリーブ油ではなくゴマ油を使っていたと記していることから、ゴマ油は当時、ヨーロッパでは珍しいものであったように思われます。 アメリカヘは、17〜18世紀にアフリカの黒人奴隷によってもたらされたようです。張騫が大宛南(胡の国)から茎が八稜の油麻を持ち帰ったのが最初だといわれています。日本へは朝鮮半島から仏教伝来とともに持ち込まれ、当初はもっぱら灯油として使用されていました。 ゴマが食用とされるようになったのは、平安時代に仁明天巾「の命で、稗、黍、麦、大豆などが普及したときと期を同じくしています。薬用にしたゴマ油は生の黒ゴマを搾ったものが用いられ、まったく香りがありませんが、食用や燈油には炒ったゴマが使われ、特有の味と香気をもたらすために、炒りゴマにする方が製造元で秘伝とされています。ゴマたんばくは、京料埋や精進料理などにはなくてはならないものです。ゴマには、黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマ、油ゴマなど多数の栽培品種が知られており、中岡、インド、メキシコ、アメリカ、グアテマラなどでも生産されています。 2000年前に著された古代中国の薬物書『神農本草経』の上品(不老延命を目的とする薬)に胡麻が収載され、「巨勝」の別名が紹介されています。「五臓を補い、気力を益す、筋肉を長てる、脳髄を填す」とされています。滋養強壮、粘滑、解毒薬として虚弱体質の改善や病後の回復、便秘の治療などに用いられています。また、火傷、歯痛、瘡癰などの治療改善に外用されます。ゴマ油は、軟膏基剤として古くから用いられ、華岡青洲の処方した火傷の特効薬「紫雲膏」などにも配剤されています。 ゴマの葉は胡麻葉と称され、ゴマ種子と同様に滋養強壮効果が伝承されるほか、長く服用すると目や耳が鋭敏になるといわれています。 インドやスリランカなどの伝承医学であるアーユルヴエーダにおいても、歯を丈人にし、口内炎や鼻炎の治療および顔の老化を防ぐ効果があり、ゴマ油でのうがいや鼻への滴下がすすめられており、中国の薬効と共通するところが多くあります。また、老化防止のマッサージにもゴマ油はなくてはならないものです。 ゴマ種子には、脂肪油(ゴマ油)が45〜50%程度含有されており、リノール酸やリノレン酸が主構成脂肪酸です。また、セサミンやセサミノール、セサモリンなどのリグナン類が1%程度含有されています。これらのリグナン類が加熱処理によってセサモールやサミンが生成することも明らかになっています。リグナン類やその分解物には、強い抗酸化作用があります。 主成分のセサミンについて詳細な研究が行われています。ラット肝ミクロソーム系での抗酸化作用や血漿、肝臓脂質の過酸化脂質の低下作用などの生体内での抗酸化作用が知られ、小腸からのコレステロールの吸収抑制と肝臓でのコレステロール生合成阻害による血清コレステロール降下作用、アルコールの過剰摂取に起因した肝障害の抑制作用、飲酒時の副交感神経の活動低下抑制作用(アルデヒド脱水酵素U欠損型の健常男性)、抗高血圧作用、乳がんに対する予防効果(ラット)および生体内のα−トコフェロール濃度増強効果などが報告されています。セサミンに関しては、急性毒性試験や変異原性試験も調べられた結果、安全性にも何ら問題もなかったとのことです。長い経験を背景として、ゴマやその主成分のセサミンは、健康食品素材として比較的十分な研究が行われたものの一つといえます。 |
2000年 1月10日 薬事日報 |
健康食品を料学する−5− シソ 2000/3/20記事も参照して下さい 天然素材の基源や伝承薬効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 シソは、ヒマラヤから中国にかけての地域が原産地とされています。中国では、魏晋時代(220〜420年)以来の名医の治療歴を集録した『名医別録』の菜部・中品に、「蘇」の名で収載され「下気を主り、寒中を除く」と薬効を述べたのが最初です。その著者・陶弘景は「葉裏が紫色で香気が強く、紫色がなく、香わないものはよくない」といい、その後、「紫蘇」といわれるようになりました。 その独特の芳香は日本人好みで」梅干や漬物の色付けや香り付けをはじめ、料理の薬味として刺身のつまなどに利用されています。 シソの品種には、チリメンジソ、カタメンジソ、アオジソ、チリメンアオジソなどが知られております。野菜として年間約二万トンが愛知県を中心に生産されております。食用とされる葉には、カロチン、ビタミン類およびカルシウムやカリウムなどのミネラルが豊富であり、栄養価の高い野菜として評価されています。また、シソの種子油にはα−リノレン酸が主成分として含有されています。 α−リノレン酸とリノール酸(紅花油、大豆油など)は体内で作られず食物からの摂取が必要な脂肪酸です。 α−リノレン酸はシソ種子油や魚油などのほかには限定された食品に微量含まれているにすぎません。最近の研究では、α−リノレン酸とリノール酸の摂取バランスが崩れるとアレルギーや動脈硬化、血栓性疾患、脳出血が起こりやすくなると報告されています。このような背景から、シソ油やシソ菓エキスなどが健康食品素材として利用されるようになっています。 中国・元の時代の宮中において食効・養生・医療の面から健康増進と不老長寿を達成することを目的にした食療法の専門家「飲膳太医」を置いていました。それを務めていた忽思慧が記した薬膳書『飲膳正要(1330年)』に気管支喘息の予防薬食の一つとして「紫蘇煎(紫蘇葉、乾木瓜、白沙糖)」が収載されています。また、『金匱要略』には、蟹(カニ)の中毒に紫新の煮汁を飲むとよいとあり、紫蘇に抗アレルギー作用があるようです。 シソ葉の特有の芳香成分は、精油成分のモノテルペン類のペリルアルデヒドで、この成分が多いものほど良品であるとされています。紫色の成分はアントシアン配糖体のシソニンで、その他フラボンおよびその配糖体などが含まれています。 一方、第十三改正日本薬局方には、「ソヨウ(蘇葉)」が収載され、古来「下気」とあるように、精神安定に用いる「半夏厚朴湯」や腹満をとる「九味檳榔湯」に配合されています。また鎮咳去痰薬やかぜ薬の漢方である「香蘇散」「参蘇飲」「神秘湯」などの処方に配剤されます。薬理作用としては、シソ煎剤に大腸菌、赤痢菌、ブドウ球菌への抗菌作用や緩和な解熱作用、中枢抑制作用、胃粘膜損傷の保護作用、水製エキスに抗TおよびW型アレルギー、およびマクロファージの貪食能の充進といった作用が報告されています。主精油成分のペリルアルデ七ドには、抗アレルギー、小腸内輪送亢進作用、抗白癬菌作用などが報告されています。これらの薬理実験データは、シソの伝承薬効を支持するとともに、薬用食物としての有用性を示すものです。 また、「名医別録」などの本草書には「葉の両面が紫色を呈し芳香を有するシソまたは葉面にしわがある花紫蘇や回回蘇といわれるチリメンジソが上品で薬用に供され、実の裏面のみが紫色のカタメジソは次品、両面とも紫色を里さないで芳香のないアオジソやチリメンアオジソは「野蘇」と称し薬用にならない」と詳述しています。 薬用としない類似植物にエゴマやレモンエゴマがあり、その成分にペリラケトンなどのフラン化合物が知られています。ペリラケトンは気管支に好ましくない作用があると報告されており、シソは遺伝的に六種のケモタイプに分類され、その中にペリラケトンを主成分として含むものもあり、ガスクロマトグラフィーなどでペリラケトンを含まないシソであることを確認する必要があります。 |
2000年 12月13日 読売新聞 (朝刊) |
C型肝炎最新治療 漢方併用で副作用抑制 INFと麻黄湯の併用が効果的かつ副作用低減 「この程度の副作用で薬は本当に効いているんですか」 インターフェロン(IFX)投与初日の夜、富山市の猪又五郎さん(69)は担当医に尋ねた。副作用らしい症状といえば、経い悪寒が1時間程度続いただけ。副作用への不安法取り越し苦労だった。 INFは、ほぽ例外なく投与の初期に、流感のよあな発熱、猛烈な倦怠感などに襲われる。中には脱毛、胃腸不調、鬱など重い症状を訴える人もおり、恐怖心から治療に踏み出せない患者もいる。 IFNがC型肝炎唯一の根治療法ではあるものの、副作用のため投与できなかったり、「途中で中止せざるを得なくなったケースも多い。 猪又さんは難治性(1b型)でウイルス量も1mlあたりり400万匹以上と非常に多いC型肝炎患者だが、IFN治療に踏み出せないでいた。そんな猪又さんが、IFNを決意したのは昨年10月。漢方を併用することで副作用を抑え、高い効果をあげている。富山医薬大和漢診療部との出合いがきっかけだった。 担当医の貝沼茂三郎さんは「漢方との併用で、激しい副作用は99%回避できる」と自信を見せる。 lFNの静脈注射(点滴)のころ合いを見ながら漢方薬の麻黄湯を投与する。今まで30人以上投与したが、手足が少し冷えて、微熱が出る程度。鬱病など深刻な副作用は1人もいない。 猪又さんも、投与2日目からは、ほとんど副作用はなく、無事投与終了。ウイルスは体内に残っにものの現在、肝機能は正常化している。 「恐れていた副作用はほとんどなかったし、がんの危険が減った今は晴れ晴れとした気持ちです」と満足げに笑う。漢方薬の小柴胡湯は、INFと併用することで間質性肺炎を引き起こすこともあり、併用が禁止されているが、麻黄湯は心配がなさそうだ。 副作用の回避だけではない。今まで、同診療部が手がけた治療では、1人をのぞいてすペての患者のウイルス量が検出値以下にまで激減。同時にINFが効きにくいウイルス型(1b型)の難治性で、「高ウイルス量」の患者22人を含め、全員の肝機能が正常化。1mlあたり850万匹という大量ウイルスを持つ患者が検出値以下に減った例もある。 漢方との相乗効果で、INFがより強い抗ウイルス力を得ている可能性まである。「証明はまだだが、麻竜湯はインフルエンザウイルスに対抗するという報告があるので、C型肝炎ウイルスヘの対抗力があるのかもしれない」と海沼さんは、今後の治療成績に大きな期待を抱いている。 一方、猪又さんは先月、副作用の違いを見る臨床研究へ協力するため、漢方併用なしで1回限りのIFN投与を受けた。その結果、猛烈な倦怠感、腰痛、吐き気、消化不良が翌日まで続いた。「漢方薬がなかったら、とても続けられませんよ」と回想する。 |
2000年 12月11日 薬事日報 |
健康食品を科学する−4− ショウガ 天然素材の基源や伝承簗効を解説 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 ショウガは、インドなど熱帯アジア地域の原産とされ、日本へは三世紀以前に渡来したといわれています。平安時代初期に著わされた「和名抄」に「久礼乃波士加味(クレノハジカミ)」という名で収載され、その頃には栽培されていたようです。多肉質の根茎都に特有の辛味と香りのあることから、世界の料理に香辛料として広く用いられ、日本では年間10万トンも消費されています。最近は、ショウガ抽出物やショウガ末が健胃、ダイエット、手足の冷えや関節痛、のどの炎症改善に健康食品素材として応用されています。 中国の漢方医学、インドのアーユル・ヴェーダ医学、インドネシアのジャムウ医学などでは、頻繁に用いられています。医療用漢方製剤(143処方)においては、約半数の処方に配剤されています。 ショウガを料理に用いると風味が変わり、美味しくなり、魚などの毒を解すといわれているように、漢方でも甘草と同じように和剤として用いられています。また疾病に罹患すると、患部の治療に血流が亢進されますが、胃がそのために犠牲になり食欲が落ちます。それをショウガによって胃の血流を増進させ、胃が正常に動くようにして食欲を増し、栄養の吸収をよくしようとしてショウガを多く使われたのだとも考えられます。 中国最古の本草書「神農本草経』中品に「乾姜」が収載され、「胸満・咳逆上気を治し、中を温め、血を止め、汗を出し、風湿痺を逐う、腸ヘ、下利を治し、生のもの(生姜)はもっと良し。久しく服すれば臭気を去り、神明に通じる」と記されています。 日本薬局方「ショウキョウ」に当たる乾燥根茎を”乾生姜”と呼び、腰痛、胃痛、消化管内の食物や水分の停滞などの治療に用いるなど、ショウガの新鮮根茎(生姜)と薬効を区別しています。またショウガを蒸して乾燥した「カンキョウ(乾姜)」は、「傷寒論」以後の漢方である後世方では温補剤として用いています。 ショウガ根茎の圧縮汁や各種抽出エキスについて、鎮嘔、鎮痛、鎮痙、血小板凝集抑制、高コレステロール血症の低下作用などが知られています。 ショウガ新鮮根茎や乾燥品の含有成分として、モノテルペンやセスキテルペンなどからなる精油とジンゲロールやショガオールと総称する辛味成分などが知られています。著者の吉川らも新しい辛味成分として6−ジンゲスルホン酸やジンジャーリピド類を明らかにするとともに、ショーガオールがジンゲロールよりも強い辛味を有するなど辛味と横造について報告しています。これらの含有成分の薬理活性は、主辛味成分である6−ジンゲロールと6−ショーガオールに、血管の拡張や増強作用、鎮静作用、小腸内輸送促進作用、抗セロトニン作用などが報告されています。一般的に6−ショーガオールの方が活性が強く、特に6−ショーガオールの鎖痛作用は顕著であり、経口投与でアミノピリンとほぽ同等で、静脈内投与でははるかに強い十数倍の効力を示すと報告されています。最近、ジンゲロール(ショーガロール)が炎症や痛みを誘発するプロスタグランジンなどを抑制し、軟骨を破壊する酵素の生成を抑制する効果があると発表され、オリンピック金メダリストのカール・ルイスは酷使による関節の痛みを、ショウガエキスの内服で克服という記事が載ったことがあります。また、モルモットを用いた実験ではリン酸ジヒドロコデインに優る鎖咳作用を示すことが明らかにされています。 吉川らは6−ショーガオールなどの辛味成分にT型アレルギーモデルであるラット受身皮膚アナフィラキシー(PCA)反応の抑制作用、ヒスタミン遊離抑制作用および強心作用(モルモット摘出左心房における陽性変力作用)のあることを見出し、辛味成分や精油のセスキテルペン成分に塩酸とエタノールによる胃粘膜損傷の抑制作用(胃保護作用)のあることを明らかにしています。さらに、辛味成分やセスキテルペン類の高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーを用いた定量分析法を開発応用して、産地や品種および乾燥過程における成分変動を明らかにしています。 |
2000年 11月6日 薬事日報 |
健康食品を科学する−3− 大豆 天然素材の基源や伝承薬効を解説、−3− 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 大豆の世界年間生産高は1億5千万t(1999年度、米国農務省の統計)に及んでいます。ダイズは、ノマメ(ツルマメ)を原型として発達したと考えられるアジア原産の植物で、日本への伝播は弥生時代と推定され、古くから加工食品や副食物として日本人の常食品で「畑の肉」と称されるほど重要なタンパク源となっています。最近、日本のみならず欧米においても大豆の優れた栄養機能が再認識されるとともに、大豆成分の科学的研究の進展に伴い、健康食品素材としても注目されるようになりました。 今日、健康食品として利用されている大豆成分としては、大豆サボニン、大豆イソフラボン、大豆レシチン、大豆タンパク貿(大豆グロプリン、大豆ペプチドなどを含む)、大豆食物繊維(大豆オリゴ糖を含む)、大豆抽出ミネラルなど多数の素材が知られています。また、黒大豆をはじめ、酢大豆、発酵大豆、豆乳、大豆胚芽なども健康食品とされています。エダマメは未成熟ダイズ種子で、ビール豆ともいわれ、お酒のつまみに愛用されています。 このように、いろいろな食品の形で大量消費される身近な穀物である大豆は、かつては生襲に位置づけられており、中国の本草書には種々の薬効や主治が記載されています。例えば、約四〇〇年前の明時代に李時珍によって著された「本草綱目」では、大豆の薬効として「久しく服すれば顔色を好くし、髪の白きを黒く変じ、老衰せず」とか、「血を活し、諸毒を解す」などと記されています。また、発牙大豆の「もやし」を乾燥させた大豆黄巻は中国最古の事物書である「神農本草経」に収載され、解熱、利水、鎮痛、滋養強壮薬として水腫、便秘、リウマチ、小便不利、膝痛の治療に用いられていたようです。大豆を発酵させた納豆の乾燥品である豆縺i香縺jは消炎性健胃、消化薬として、「梔子e湯(しししとう:山梔子と香縺F消化不良で胸苦しい場合の漢方)」の主薬になっています。大豆は健康または活力源とされ、日常使う言葉の中にも大豆を意味する「まめ」という言葉があり、身体の健全、達者、息災を意味し、「まめで暮らす」「まめな人」などがあります。これらの事柄は、大豆が単に栄養源としてだけでなく、保健薬として健康維持にも寄与していることを示しています。 大豆の機能性成分に最初に着目した研究は、著者らのグループ(大阪大学、近畿大学、愛媛大学、静岡薬科大学)によるサボニンに関するものです。日本産をはじめ米国や中国産大豆からソヤサボニンI〜IV、A1、A2:アセチルソヤサボニンA1〜A6といった多数のサボニンを単離し、それらの化学構造を明らかにしました。次いで、これらのサボニンには脂質の酸化抑制作用があり、また、アドリアマイシン誘発糖尿病マウス心臓中の過酸化脂質上昇に対する抑制作用が認められました。 高脂肪食ラットの血清脂肪類の上昇を抑制しました。また、臨床的研究として高脂血症、高血圧症、動脈硬化症の血清脂質改善のあることが明らかにされました。ゴールドチオグルコース誘発の肥満マウスでの抗肥満作用のあることも判明しました。 大豆のイソフラボン成分については、主イソフラボン配糖体ダイジインおよぴゲニスチンのほかに、アセチル化されたものやアグリコンなどの微量イソフラボンの存在が知られていました。大豆イソフラボンには、乳腺発がん物質(PhIP)誘発乳がんの抑制効果やヒト前立腺がん由来細胞株に対する増殖抑制作用が報告されています。また、イソフラボン類の女性ホルモン様作用は古くから知られており、ダイジインやダニスチンに卵巣摘出ラットにおける有意な子宮重量の減少抑制効果や骨密度や強度の低下を抑制することが明らかにされています。さらに、ダイジインには腹部脂肪の重量を有意に低下させるといった報告もみられます。 このほか、大豆タンパク質はアミノ酸のバランスが優れており、牛乳タンパク質などにアレルギーを持つ乳児に対する育児乳として以前から利用されてきました。大豆タンパク質は、動物タンパク質と比べて血祭コレステロールが低くなることが実厳的に証明されており、また熱産生を促して脂質代謝に良い影響を与えて抗肥満効果があると報告されています。大豆レシチンにも脂質代謝異常の改音による抗脂肪肝作用、動脈硬化に起因する高血圧、脳出血等の抑制作用など、さまぎまな生理作用が報告されています。 薬用に黒豆が使われた経緯が多くありますが、筆者らは日本産の黒大豆と黄色の大豆のサボニンおよぴイソフラボン含量を比較したところ差異は認められませんでした。 また、レシチンなどの脂質についても各種クロマトグラフィーの比較からは顕著な違いを見出せませんでした。黒大豆が薬用とされる理由は、単に色素の存在の有無にあるとは考えにくく、今後の研究の進展を待つところです。 |
2000年 10月12日 薬事日報 |
健康食品を科学する−2− 田七人参 天然素材の基源や伝承薬効を解説、−2− 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 薬用にされる人参は、ウコギ科植物のオタネニンジン(Panax ginseng)の根を乾燥して調製されたもので、白参とか生干人参などとも呼ばれ、蒸したものを紅参といい、日本薬局方に収載されています。 人参は、中国では古林省などの東北地区から朝鮮半島で栽培されるものです。田七人参(三七人参)は、逆に中国の南部の雲南省に自生したものを、広西省や四川省でも栽培される極めてオタネニンジンに似た植物のウコギ科植物のサンシチニンジン(Panax notoginseng)の根から調製されたものです。 中国では”北の人参、南の田七”と呼ばれており、田七人参は中国南部やベトナム、タイなどの東南アジアでは、人参以上に珍重されています。 田七人参は中国でも比較的新しい生薬で、明の時代(1578年)に李時珍が著した本草書「本草綱目」に『この薬はは近頃世に現れてきたもので、戦場での金瘡(刀等の切り傷や外傷のこと)の要薬として用い卓効があるといっている』と記されています。 田七人参は、お金に替えがたいほどよく効くことから「金不換」ともいわれ、漆のように傷口をふさぐ効果のあったことから「山漆」という別名をもっています。植物名のサンシチも山漆(中国発音:サンチー)に由来しているといわれています。 田七人参が有名になったのは、ベトナム戦争で、北ベトナムの軍兵士が戦傷の治療に田七人参を主剤(80%)とするる「雲南白薬」を用いたのが戦勝につながったという記事が世界に紹介されてからです。 その後、中国では田七人参を主剤(85%)とする「片仔廣(へんしこう)」という中薬製剤が慢性肝炎に有効であることが紹介され、中国を訪問した日本人は高価な本品をこぞって買い求め、税関で持ち込み制限を受けたという経緯があるほどブームを巻き起こしました。 また、出七人参は薬膳料理にも用いられており、これらのことが背景となって健康食品として日本に導入されたと思われます。 田七人参の科学的研究は主要成分であるサボニンに、人参と共通するginsenoside Rb1やRg1などが高含量であることや、特徴的な成分として、notoginsenoside A〜Nなどが明らかにされています。筆者の吉川らは、マウスでの自己免疫疾患の抗炎症作用や肝保護作用のあることを明らかにしています。人参と共通する脂溶性成分のpanaxytriolなどのアセチレン化合物には、発がんプロモーター抑制作用や、がん細胞増殖抑制活性が知られており、がん予防作用やがん治療作用の可能性が示唆されています。また、広島大学医学部総合薬学科のグループが多糖体sanchinan Aを分離して、マクロファージなどの網内系の貧食増強作朋のあることを報告しています。 止血成分としては、静岡薬大の研究グループがアミノ酸dencichin(N-oxalo-L-α,β-diamino−propionic acid)を同定しています。さらに、筆者の久保らは、血管内凝固症候群(DIC)に対する抑制作用のあることを明らかにし、昭和大学医学部のグループは、高脂血症ラットでの脂質代謝改善作用のあることを報告しています。 中医学では、人参が「補気薬」であるのに対して、田七人参は「活血薬」に分類されています。中国の研究者は、薬理学的に冠状動脈の拡張作用、冠血流量増加作用、抗不整脈作用、心筋の酸素消費量の減少作用、血圧降下作用、抗炎掟作用、鎮痛作用、CCl4(四塩化炭素)肝障害抑制作用などの多様な作用を証明しています。 さらに、田七人参の臨床応用研究も盛んに試みられ、産後の異常過多出血や、吐血、鼻出血など各種の出血の治療、および冠状動脈疾患や、狭心症の治療効果が報告されています。 田七人参には、乾燥根である生田七(生三七)のほかに、熟田七と呼ばれる加工処理したものがあります。熟田七は表面が黒褐色で、中身は灰白色で極めて堅くなっており、虫害などを防ぐための処理と考えられ、薬効的には同じものといわれています。 なお、田七人参は、以前は超高級生薬でしたが、中国で生産過剰になり、紅参程度の価格になっています。品質的には、親指大の大きなものがよく効き、小指大の小さいものは薬効が低いので注意して下さい。 |
2000年 9月4日 薬事日報 |
健康食品を科学する−1− ギムネマ 天然素材の基源や伝承薬効を解説−1− 近畿大学薬学部 教授 久保道徳 京都薬科大学 教授 吉川雅之 「ギムネマ」はガガイモ料植物 Gymnema sylvester の葉から調整されています。この植物はインド南部、スリランカ、熱帯アフリカなどの地域に分布するつる性の木本で、1996年度版の「Indian Medical」には収斂、健胃、強壮及び清涼作用があると記載され、インドやスリランカなどの伝統医学であるアーユル・ヴェーダでは健胃や利尿作用のあることが伝承されています。この植物の葉を噛むと、しばらく砂糖の甘味が感じられなくなるので、砂糖を壊すことを意味する「gur-mar」という名前がつけられ、この事実から民間的に糖尿病の治療にも用いられるようになったといわれています。また、根は蛇に咬まれた時の治療や催吐剤、去疾剤として用いられ、根皮は目の治療に良いと伝承されています。 本植物の葉が糖尿病の改善に有効とインドの研究者らによって報告され、薬の抽出エキスがインスリン分泌を促進するといった報告もあります。鳥取大学医学部のグループではgymnemic acid(ギムネマ酸)と呼ばれるサポニン分画にラット小腸を用い、腸管環流試験、腸管膜輸送電位試験を行った結果、ギムネマ酸が小腸におけるブドウ糖の吸収を抑制することを発表しました。また、イヌを用いてギムネマ酸の血糖値及び血清インスリン値への影響を検討した結果、ギムネマ酸(25mg/kg体重)で有意な血糖低下効果が得られています。さらにヒトヘの糖負荷試験の結果、ギムネマ酸(50mg)または Gymnema sylvester 水抽出物(2g)では、インスリン値は投与後30分間で52%抑制されたと報告されています。 すなわち、ギムネマは腸管でのブドウ糖吸収抑制効果をもたらすことによって血糖値の上昇を抑えるという作用が主作用であると報告されました。これらの知見をもとに、本植物の葉やその抽出エキスを「ギムネマ」と称して糖尿病予防やダイエット効果を期待した健康食品に応用されるようになったのです。 「ギムネマ」の化学的研究は、甘味抑制成分の解明から始められ、横浜国大のグループおよび徳島文理大や金沢大の薬学部のグループによって、多数の gymnemic acid 類やgymnenasaponin 類が報告され、これらが甘味を抑制することを明らかにしました。筆者の吉川らも gymnemoside a〜f と命名した6種のサポニンを単離し、それらの化学構造を明らかにしました。そして gymnemic acid U.V.W. などが小腸切片でのグルコース取り込み実験で、糖吸収抑制活性を示すことが判明しました。よって、成人型(U型)糖尿病の人が血糖をコントロールしたい場合、食べ過ぎでダイエットしたい人は、「ギムネマ」を食事直前に飲み、食事はゆっくりと摂るようにすれば効果的です。エネルギー源であるブドウ糖の吸収が少なくなります。 筆者の吉川らは、高速液体クロマトグラフィを用いて各種「ギムネマ」市場品について配糖体成分の比較分析を行ったところ、配糖体成分の組成や含量に大きな差異のあることが判明しました。また、血糖値上昇抑制活性に関しても顕著な活性の差異があることを見出しました。「ギムネマ」には野生の Gymnema sylvester の葉が用いられており、また、インドだけでも6種の Gymnema 属植物の存存が知られています。天然物なので採集地や時期等による成分変動や近縁種の混入等も考えられ、食品といえども厳密な品質管理が望まれるところです。 |
2000年 8月12日 毎日新聞 (朝刊) |
桑の葉が糖尿病に効果 桑の葉といえば、−カイコのえさ−だが、人間の糖尿病の予防にも効果があることが、最近の研究で分かってきた。腸内で糖分の吸収を抑えるという。この桑の威力に着目し、栗の葉のお茶や桑の葉の入ったパンなどを作って売る町おこし運動が登場。医療機関でも糖尿病予防に用いるところが出てきた。 「糖分の吸収抑える」血糖値の改善確認 桑の根、葉は昔から利尿、咳止めなどの漢方薬として用いられ、養蚕地帯では桑の葉を煎じて飲む習慣があったというが、詳しい薬理効果が分かってきたのは最近のことだ。 ◆ラットで実験◆ 神奈川県衛生研究所・食品薬品部長の佐藤修二さんや専門研究員の宮原智江子さんは、遺伝的に糖尿病が発症するラットを使って桑の効果を調べた。えさに桑の紛未を加えないラットは予想通り、空腹時の血糖値が1dl当たり400mgになるなど糖尿病にかかった。これに対し、えさにそれぞれ2.5%と5%の桑の葉の粉末を混ぜた2グループの血糖値はあまり上がらず、同200mgぐらいを保った。また、桑の葉を食べないラットは、血糖値を下げるインスリンの分泌が悪かったのに対し、桑の薬を食べたラットではインスリンの分泌が良かった。 さらに、桑の葉エキスを与えたラットは、過剰な砂糖を与えたにもかかわらず、肝臓への中性脂肪の蓄積が抑えられ、脂肪肝を予防する効果が見られた。砂糖やでんぷんは腸内で、α(アルファ)−グルコシダーゼという酵素によって単糖類に分解され吸収される。桑の葉に含まれる成分(1−デオキシノジリマイシン)は、この酵素の働きを邪魔して、糖の吸収を抑えるといわれている。 ◆各種ハーブと比較 国内の糖尿病患者は現在約700万人。病状が進んで失明する人が年間約3000人もいる。玉川大学農学部講師の八並一寿さんは、糖尿病を減らすために「桑の葉をもっと活用すべきだ」と力説する。 八並さんが、桑の葉茶とほかの各種ハーブとで、糖の吸収抑制につながる「酵素(α−グルコシダーゼ)の阻害活性」を比べたところ、桑の葉茶が際立って高かった。α−グルコシダーゼの働きを邪魔する市販薬も売られているが、桑の葉茶にも同様の効果があるわけだ。八並さんは「糖尿病の人でも、食事前や食事中に桑の葉茶を飲めば、糖分の吸収を抑えることができる」と話す。 いちいち桑の葉茶をせんじて飲まなくてもよいように、八並さんは桑の葉のエキスとプロポリス(蜂の巣から抽出した健康金品)を混ぜた「クワポリス」を開発。これを東京都渋谷区の渋谷三丁目クリニック(豊嶋秤院長)で糖尿病の患者十数人に飲んでもらっているが、2カ月間続けて飲んだ68歳の女性のケースでは、空腹持の血糖値が400から150〜160に下がるなど著しい効果が見られたという。 ”桑茶”やパンで町おこし ◆うどん、ビールにも こうした”実験”を踏まえ、桑の生産者が比較的残っている神奈川県相模原市では今年5月、14農家や企業家が参加して「さがみ桑茶連絡協議会」(事務局は相模原産業振興財団=電話042-768-2660)を結成。桑の葉だけのお茶を「さがみの桑茶」(値段は180g袋で2000円など)の名で売り出した。桑の葉の粉末を含めたカプセルも販売している。 また相模原市内では、桑茶以外にも、桑の葉の粉末を混ぜたパンやうどん、桑の葉抽出エキスを加えたビールが試作されている。いわば「桑による町おこし運動」で、他県の桑の産地にも波及しそうだ。 |
2000年 7月30日 毎日新聞 (朝刊) |
「しわ」の原因物質突き止めた! ウコンが抑制 シミやシワなど皮膚の老化に大きな影響を及ぽすといわれる紫外線。化粧品メーカーの資生堂(本社・東京都中央区)は、紫外線によって活性化し、肌にしわを作る庶因となる物質が存在することを解明し、さらに、この物質の働きをショウガ科の植物「ウコン」が抑えることを突き止めた。この成果を9月の日本生薬学会で発表する。 紫外線が表皮の下にある「真皮」という組織に影響を及ぼし、コラーゲンなど皮膚の弾力を保つ線維を壊すことはこれまでに分かっていたが、その原因は未解明だった。同社では、紫外線をコラーゲンに直接当てても分解が起こらないことなどから、他の原因に着目し、間接的に分解を促す物質として「ゼラチナーゼ」という酵素を突き止めた。 ゼラチナーゼは、表皮の最も近い真皮に近い「基底層」=図参照=で作られるとみられ、45歳以上の女性60人の顏の角質を調へたところ、9割以上からゼラチナーゼが確認された。一方、はとんど紫外線にさらされることのない腹部や上腕の内剛からはほとんど検出されなかったという。 紫外線による皮膚の老化に詳しい東北大学医学部の田上八郎教授(皮膚科学)は「これまで紫外線が直接、真皮の細胞に影響を及ぼしていると考えられていたが、表皮という皮膚の非常に浅い部分で酵素が分泌され、真皮も影響を受けるというメカニズムが解明された画期的な研究成果だ」と話している。 同社は「ゼラチナーゼの働きを抑えてシワを予防する」として、ウコンからの抽出液を配合した基礎化粧品を9月から発売する予定。 |
2000年 3月23日 毎日新聞 (朝刊) |
花粉症に「赤シソパワー」 エキス飲むと症状軽く企業が実験「お墨付き」 シソに食まれる成分は花粉症を軽減する効果が期待され、民間療法などに取り入れられているが、科学的な裏付けは乏しかった。31日から東京都内で開かれる日本農芸化学会で報告される。 対象となったのは花粉症によるくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状に悩む延べ六十一人の男女。赤シソの葉から抽出したエキスを錠剤にし、一九九八年と九九年の春の花粉症シーズンの三カ月間、毎日0.6gを飲んでもらった。 くしゃみ、鼻をかむ回数、鼻づまりの程度などを点数にして評価した結果、六割の人が例年に比べて症状が改善したという。 また、全員に対し健康診断と血液検査をした。シソの効果があった人となかった人で、花粉症の発症につながるスギやヒノキに対するIgE抗体の血中濃度に差はなかった。 研究グループは、シソに含まれるロスマリン酸などの物質が、アレルギーによる炎症自体を抑えている可能性が高いとみている。 |
1999年 10月24日 日本東洋医学会、関西支部例会の講演 |
釣藤鈎主体の自家方による降圧作用 阪神漢方研究所附属クリニック 隠岐 充啓 〔緒首〕釣藤鈎が単独でも降圧作用を有することはよく知られているが、これに数種の生薬を加えた自家方を本態性高血圧の患者50名に他の処方と併用して6ケ月間投与してみたところ、一定の効果が得られたので報告する。 方法。当院に来院した患者のうち二次性高血圧の者を除いた、いわゆる本態性高血と診断される50名(一定期間のうち50名に達するまで全員)に、次のような釣藤鈎を主体とした。ふり出しで用いる自家方を投与した。本治法として他の処方を煎じ又はエキスで投与し、この自家方は煎じの場合は後下とし、エキス剤の場合はお茶として服用させた。自家方、釣藤鈎10g、菊花2g、天麻1g、薄荷1g 血圧は投与前3ケ月後、8ケ月後に2〜3回の来院時安静血圧を測定して平均をした。 結果、中断した者は50名中3名で、6ケ月間継続して服用できた47名につき、降圧効果は全平均で収縮期血圧21mmHg、拡張期血圧11mmHgであった。 (1)著効16名(32%) 西洋医学による降圧 薬を中止できたもの、又は収縮期血圧 30mmHg以上、もしくは拡張期血圧16mmHg 以上安定して降下したもの。 (2)有効27名(54%) 収縮期血圧10mmHg 以上、もしくは拡張期血圧5mmHg以上安定 して降下したもの。 (3)無効4名(8%) 有意な効果のみられないもの。もしくは安定した効果がみられないもの。 (4)悪化なし。 (5)中断3名(8%) 考察、漢方による高血圧の治療効果は単なる血圧数値の降下にとどまらず、頭痛や肩こりといった髄伴症状の改善も大いに期待できる。ここでは血圧にのみ調査項目をしばり、漢方本来の証の決定による処方は本治法のみに行い、本自家方を本態性高血圧の患者に無差別に投与するという臨床的実験を行った。 釣藤鈎単独では現代中南はじめ一定の降圧作用の報告があるが、さらに菊花、天麻で効力を高め、薄荷で味付けすることにより、お茶がわりとして常服できるように工夫した。悪化例がなかったことからも、本方は一般漢方処方に併用する形で、証や陰陽にあまりこだわらず安心して使用できる点で有用であると考える。 尚、本臨床実験の結果については、本治法による漢方処方の効果が含まれている。効果の分離は今後の課題である。 |
1999年 10月2日 毎日新聞 (朝刊) |
C型慢性肝炎治療に”福音 漢方薬の小柴胡湯、十全大補湯など 多剤併用療法が効果的” 肝がんになる可能性が高いと性肝炎治療に、漢方薬の小柴胡湯、十全大補湯などを用いた多剤併用療法が効果的であることが、神奈川県立がんセンターの多羅尾和郎・内科第2科部長らの調査で分かった。「この療法が普及すれば、肝がんの発生を半減させることもできるのでは」と同部長は話している。調査結果はこのほど開かれた日本和漢薬学会で発表された。 国内では年間約3万人が肝がんで亡くなっているが、その大多数がC型肝硬変やC型慢性肝炎によるものとみられている。またC型慢性肝疾患からの肝がんの発生率は年率1.0〜1.5%、C型肝硬変からは年率6.0〜7.0%とされている。 同センターでは10年前から肝細胞の炎症状態を示す指標であるGTP値に注目、C型肝硬変症について観察を続けた。その結果、GPT値80単位を境に、大きく病態が変わることか分かった。例えばGPT80単位未満の35例のうち、、発がんしたのは7例で、平均観察8年からすると、年率2.5%の発生率だった。80以上が続いている人の場合は28例中23例が発がん、年発生率は11%にものぼった。こうしたことから、肝細胞の持続炎症壊死が発がんを促進していることが分かった。 そこで肝細胞の炎症を抑えれば、発がんを抑えられるのではと考えた。抗炎症療法として導入したのは、以前から肝臓の炎症を抑える薬剤として単独で使われてきた強力ネオミノファーゲンC、ウルソデスオキシーコル酸、小柴胡湯、十全大補湯である。 薬は1種だけでは効き目がなくても、2種、3種と同時に使うと効き目がよくなることがある。また一人一人感受性が逢うので、それぞれの患者に合うように4種の薬を2種、または3種組み合わせて患者に投与した。その結果、C型肝硬変の66例について5年以上の観察で肝発がんは12例、年発生率は3.4%で、全国平均のほぼ半分まで低下させることに成功した。 その際にC型肝硬変症の人に対し、十全大補湯を他剤に加えて投与したところ10例のうち5例がGPT値を年平均80単位未満まで下げることができた。またC型慢性肝炎に対しては3例に投与し、うち1例が80単位未満まで下がった。 こうしたことから、同センターでは、漢方薬を用いた多剤併用療法はC型肝硬変や慢性肝炎の患者に大きな効果があり、さらに症例は少ないが、十全大補湯は単独または他剤と併用してC型肝硬変などの患者のGPT値を下げるのに有効であることが分かったとしている。 多羅尾部長は、C型肝炎ウイルスの治療によく使われているインターフェロンについてウイルス塁が多いと効きにくいし、気管支喘息などのアレルギー疾患の人、重い糖尿病患者、65歳以上の高齢の人には使えないとし、「適応患者に使われてもウイルスが消えたり、正常化するのは約45%で、残り55%の人は他の療法を使うしかない」と話す。そして「この多剤併用療法が広く普及すれば、1年間で肝がんで亡くなる人の半数にあたる1万5000人の命が助かるのではないか。慢性肝炎・肝硬変患者らには大きな福音になると思う」と話している。 |
1999年 8月30日 毎日新聞 (朝刊) |
帯状疱疹後神経痛に漢方「補中益気湯」が効果 副作用少なく早く効く 帯状疱疹のあとに、首、胸、腰などに慢性的な痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」に、漢方薬の補中益気湯が効くことが、大阪鉄道病院(大阪市阿倍野区天王寺町)皮膚科部長の谷口彰治さんの臨床テストで確かめられた。この神経痛で悩む多数の患者に補中益気湯を用いたテストは初めてといい、日本東洋医学会総会(東京)でも発表した。 臨床テストは、消炎鎮痛剤などを使用する従来の治療法を3カ月間行っても効果のない33〜96歳の患者72人(うち男性41人)を対象に行った。72人のうち64人に、1日当たり7.5gの補中益気湯を12週間、服用してもらった。そして、従来の消炎鎖痛剤、ビタミン剤などの使用をそのまま継続し、補中益気湯を与えない8人と比較した。 その結果、従来の治療法だけのグループでは痛みがほとんど消えなかったのに対し、補中益気湯を服用した群では、数字で表す痛みのスコアが56人(約90%)で3分の1以下に低下した。その半分の人は、4週間以内で効果が現れ始めたという。副作用として、2人が胃の不快感を訴えたが、一過性だった。 補中益気湯は、人参、甘草など10種類の植物を混ぜた生薬で、一般的には、元気がなく、胃腸の働きが衰えている人に用いる。最近では、免疫力の向上や血流の改善にも効果のあることが分かってきている。 谷口さんは「帯状疱疹後神経痛の治療では、非ステロイド系の消炎鎮痛剤が一般的に処方されているが、効果はほとんどないのが実情だ。弱い電流を流してステロイドや麻酔薬を患部に浸透させる方法やレーザーで局所の血流改善を行う方法などもあるが、特殊な設備が必要で、どこでも実施できるわけではない。漢方薬なら、副作用がなく、特殊な設備も不要だ」と話し、同神経痛の基本的な治療として、補中益気湯を試してみる価値があるのでは、と提案している。 |
1999年 4月11日 薬事日報 |
軟骨破壊の阻止が最大の治療 大阪で関節症シンポ開催「膝関節痛と付き合う」 米アリゾナ大医学部教授セオドサキス氏が講演 読売新聞社主催、ロート製薬協賛の関節症シンポジウム 「膝関節痛と付き合う−変形性関節症の治し方と生活上の注意点」 が、先頃、大阪商工会議所で開催された。会場は関節痛で悩む一般市民などで超満員となり、事前の応募で抽選漏れとなった人まで来場するほど高い関心が寄せられていた。 当日は、米国アリゾナ大学医学部教授ジェーソン・セオドサキス氏が「変形性関節症の最新治療」をテーマに基調講演を行った。 セオドサキス氏はその中で、米国は成人の半数以上がオーバーウェイトであること、スポーツでけがをする人も増えていることなどを紹介し、軟骨組織の破壊は放射線で発見できないことを指摘。股関節・腰部の関節症の増加を明らかにし、神経の露出により疼痛が引き起こされ、それが継続すれば関節症を疑うべきであることを説明した。 また、治療に関して「非ステロイド系抗炎症剤が開発されたが、まだ副作用の問題も残っているし、薬剤による治療は、必ずしも疾患そのものを治療しているわけではない、症状を抑えているだけである」と力説した。関節は次々に新しくなっており、人工関節は15年くらいしか持たず、磨耗片の問題もあること、修復・再生のメカニズムがないことを指摘し、人間の関節にはそれがあることを強調した。 そして、「痛みを止めるのではなく、軟骨の破壊を止めることが最大の治療である」と述べ、九つのステップで構成する新しいスタンダードを示すとともに、原因を少なくすること、栄養補助剤を持取することなどを提唱した。特に、自転車をこぐとか、動き回ることで軟骨細胞を刺激することや、磁気の利用などを紹介したが、関節炎の増悪要因として食事を挙げた。 その上で、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントなど栄養補助剤については、医学的証拠が次々と示され、非ステロイド系抗炎症剤と同程度の効果があり、しかも副作用が少ないということで「革新的な治療」として欧米で評価されていることも紹介した。 また基調講演に続いて、セオドサキス氏の著書を翻訳した米国スクリプス研究所主任研究員の橋本三四郎氏と、日本医科大学講師・中村洋氏による「変形性関節症の原因と最新の研究」についての特別トーク、中村洋氏や関西医科大学講師・戸田整形外科クリニック戸田佳孝、プロボウラーの中山律子、リハビリテーション病院加賀温泉病院理学療法科課長・後藤仲介の各氏にょる「膝関節痛と付き合う」と題するパネルディスカッションが行われた。 |