男性諸子よ、もう心配はいりません
中年以降の元気印
房中秘酒でバッテリーチャージしましょう
頼りすぎは赤信号
古くから洋の東西を問わず、いわゆる「房中秘酒」は数多くあります。より充実した健康な性交渉をと望む人々の願いから生み出されたものでしょう。中国には漢方処方の一種として、房中秘薬、房中秘酒が数多くあります。これらの処方は、中年以上の人々が性交渉の際、より満足できる交渉に入りたいという目的で、長い間の経験から考え出した処方といえましょう。しかし、これらに頼りすぎるのは赤信号です。疲労回復とか食欲増進などに効果のある薬酒や自分の体質に合う薬酒を飲んで、常日ごろの健席を保つことのほうが、まず大切です。自分の健康を考えず、すぐ房中秘酒を手にするのは感心しません。また、お互いに満足感を得ているのに、あえて飲む必要はありません。
ここで紹介する房中秘酒は、『医心方』という書物の第9冊・巻28「房内篇」のうち第26章「用薬石」にあるものです。用薬石というのは、房中術に対して、薬の処方で房中の術を上手に行おうということです。迷信的なところもないではありませんが、すべてを無視することはできません。現代の薬学・漢方医療の上から見ても、それなりの処方も多くあります。
 
人によって違う効果
いずれも千年、二千年と中国で行われた処方ですが、現在その考え方においては、一般漢方処方と変わるものではありません。ただし、実際にその秘酒を飲んでみて、効きめがなかったといわれても困ります。現代には安全性などで通用しない処方もありますし、人によって効き方が全く違うからです。ともかく古書に記載のままをご紹介します。
 
回数を云々いうよりも、充実した1回で愛情を深めましょう
貝原益軒は「養生訓」の中で、千金方を引用し、性交に適した回数を教えています。
  20才の者は4日に1回、
  30才の者は8日に1回、
  40才の者は16日に1回、
  50才の者は20日に1回、
  60才の者は精を閉じて漏らさず、もし体力盛んならば1カ月に1回」

と述べています。
これは最小の限度を示したものです。貝原益軒は房中の過度を慎めと警告したものですから、落胆することはありません。
回数は過度にならないようにして、1回ごとの房事を満足に充実したものにするほうがより健康なことなのです。
それこそ秘酒本来の長寿法、房中法にもつながるものです。
千金方の処方
生薬の肉蓯蓉、鍾乳、蛇床子遠志、続断、薯蕷鹿茸の七味を2gずつ酒で1日2回服用する、という処方が千金方に出ています。
この処方は、「起たない、起つが大きくならない、大きいが長くならない、長くなるも熟しない、熱するが堅くならない、堅くなるも久しく保たない、久しく保つが精液が出ない、出ても薄く冷たい」のを治す処方と説明さています。酒で飲むこの処方は、薬酒にして用いてもよいはずです。次にその変方の処方をご紹介しましょう。
薬酒にするには
肉蓯蓉45g、蛇床子45g、遠志45g、続断45g、山薬45g、鹿茸45gの6種を使い、鍾乳は酒類に溶けないので省きます。以上の生薬にグラニュー糖200g、ホワイトリカー1.8Lを加えて広口びんに密閉して3~6カ月おきます。
次にこれをしぼって別の細口びんに移し保存用とします。しぼりかすは捨てず、グラニュー糖200g、ホワイトリカー1.8Lでもう一度漬け、6カ月以上おいてからしぼって再使用します。
強精薬として1日3回、1回量30㏄を服用します。
 
玉房秘訣の処方
男性の性器が起たなかったり、起っても強くならないときによい処方です。
肉蓯蓉0.6g、五味子0.6g、蛇床子1.2g、兔絲子1.2g、枳実1.2g、以上を粉末として1日量1.8gを3回に分けて酒服します。四川省の大守、呂敬大が70才を過ぎてからも子供を生ませていたのは、この強精薬のおかげだったという処方です。
薬酒にするには
肉蓯蓉25g、五味子25g、蛇麻子45g、菟糸子45g、枳実45g、グラニュー糖200g、ホワイトリカー1.8L。以上を広口びんに密閉して3~6カ月おき、しぼって別のぴんに移します。しぼりかすは同量のグラニュー糖とホワイトリカーを加え、6カ月以上おき、しぼって、こんどはしぼりかすは捨てます。
強精薬として、1日30㏄、1日3回に分けて飲みます。
洞玄子の処方「禿鶏散酒禿鶏散酒2
この方面に関心を寄せる人々が注目するのが、次の禿鶏散酒です。
肉蓯蓉五味子菟糸子遠志各1g、蛇床子1.3g、計5.3gを粉末とし、これを1日分にし、酒で空腹時に3回に分けて内服します。
洞玄子の中に、「男の人の疲労がひどく、インポテンツで起たず、事をなす能力がないのを治す。70才になる老人はこの薬を飲んで、男の子3人をもうけた。だが、いつまでも長く飲んではいけない。必要のとき、ときに応じて飲むのがよいが、連用は避けること。薬が強すぎて相手の女のほうが降参してしまうからだ。降参した女のほうが、『こんな薬を飲むから、私のほうが参ってしまったのだ』と庭に薬を捨てた。ところがこれを雄鶏が食べると、すぐさま雌鶏の背に上って連日おりないで雌鶏のトサカをついばみ、ついにトサカが禿げてしまつた。それで禿鶏散と名づけた」と書かれています。
薬酒にするには
先に述べた1日分量5.3gの20日分106gをホワイトリカー1.8Lに浸し、さらに蜂蜜100gを加えて密閉し、冷暗所に3~6カ月おきます。これをガーゼやふきんで漉してから用いますが、寝る前に1回量約30㏄が適量です。飲みすぎないように注意しましょう。
葛氏方の処方
肉蓯蓉蛇床子遠志・続断・菟糸子各1.3gを砕き、粉末として1回量2g、1日3回、酒服します。
これも勃起力を回復させる方法です。また平常はあたりまえの強さをみずから認めているのに、いざという時にさっぱり勃起しないという場合は、蛇床子・菟糸子各1.3gをとり、粉末にして1回量とし、酒で1日3回服用するともあります。
薬酒にするには
肉蓉・蛇床子・遠志・続断・菟糸子各1.3gをこまかく砕き、これにグラニュー糖100g、ホワイトリカー720mlを加えて密閉します。
3~6カ月後にしぼり、別のびんに移します。
しぼりかすはグラニュー糖、ホワイトリカーを加えて再利用してもけっこうです。
1回量20㏄、1日3回服用します。
 
范汪方の処方「開心薯蕷腎気丸」
范汪方に、次の処方があります。
肉蓯蓉1.3g、山茱萸1.3g、地黄2g、遠志2g、蛇床子1.5g、五味子2g、防風2g、茯苓2g、牛膝2g、菟糸子2g、杜仲2g、薯蕷2gの以上22.1gを1日量として、蜂蜜で丸薬として服用。
これは、男性の心身が疲労し、全身の働きが低下し、体が冷え、寝ると胃腸がいつも膨満して食欲がなく、春夏には手足がほてり、秋冬には両脚が冷え、物忘れがひどく、性欲のない症状を治すのに役立ちます。
この薬を飲むこと5日にして、玉茎は盛んに熱し、10夜にして体がなめらかに、15夜にして顔色がよくつややかで手足は熱く、20夜にして男の物は盛んになり、25夜で体内の血管は充実し、30夜で熱気が全身に行き渡り、顔色は花のようになり、気分はほがらかに、記憶力はよくなり、性器もはつらつとしてくるとあります。
薬酒にするには10日分量として22.1gをはかり、1.8Lのホワイトリカーに漬け、蜂蜜150gを加えて3~6カ月ほど密閉して冷暗所におき、ふきんでこして用います。
1日30㏄を寝る前に飲みます。
范汪方の処方「肉蓯蓉丸」
范汪方にあるもう一つの処方です。
この薬は精力が出て気力を増し、健康になるとあります。勃起力が思わしくない、腰が弱い感じでしぼんでしまうというような症状に対してです。
肉蓯蓉・菟糸子・五味子・遠志・続断・杜仲・蛇床子各1.2g。以上の7品を搗き、粉末としてから蜂蜜でねり、アオギリの種子大の丸薬として5丸を飲む。この服用を30日ほど続けると自覚症状があらわれ、50日目ぐらいから勃起するようになると言います。「よわい80の老人も、これを服用し続けると、30才代の気力を取り戻してくる。独身の男性は服用してはいけない」とあります。
薬酒にするには
肉蓯蓉菟糸子蛇床子五味子遠志・続断・杜仲各12gを砕き、グラニュー糖100g、ホワイトリカー720mlで漬け込み、3~6カ月後にしぼり、別のびんに移します。しぼりかすはグラニュー糖、ホワイトリカーを同量使って再利用することができます。
強精薬として1回量20㏄、1日3回に服用します。
 
世界の房中秘酒
アフリカの”ヨヒンベ”と”ホミカ”
アフリカ南部に産するアカネ科の常緑高木で15m以上にも伸びる植物の幹の皮をヨヒンベと呼び、原産地の住民は古くからこれを催淫薬として用いてきました。アルカロイドのヨヒンビンを主成分としていて、皮膚、粘膜、生殖器官を拡張する作用、脊髄椎部を刺激し、催淫作用を起こす働きがあるとされています。
アルカロイドのヨヒンビンは、塩酸ヨヒンビンとしての製品が作られ、これを原料として硝酸ストリキニーネを加えた製品があります。
硝酸ストリキニーネは機能不全の性器とか、消化器をとり巻く神経を、一時的ではありますが、刺激して興奮させる作用があるのです。
このストリキニーネはフジウツギ科の常緑樹ホミカの種子に含まれています。このホミカは、熱帯地方、特に東南アジアからオーストラリア北部に分布します。薬とするには硝酸塩として用いますが、たいへん毒蛙が強いので、ヨヒンビンに配合するのにもごく微量にしか使用できません。
地中海地方のマンドラゴラ(マンドレーク)
地中海地方原産のナス科の多年草です。ナス科特有のアルカロイドであるヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどを含む有毒植物
根はゴボウに似ていますが、二つとか三つとかに分かれているものが特に珍重されています。東洋の人参(朝鮮人参)も根がいくつにも分かれているほど貴重品とされ、薬効も確かといわれているのです。人参の名は根が人の形をしていることからついたものですが、東洋から遠く離れた地中海地方でも人の形をした根が貴重品とされたというのは、おもしろい共通点ではありませんか。
しかしマンドラゴラのほうは毒成分が強いので、直接これを飲むのではなく、この根を寝室につるしておきます。根から発散する何物かが催淫作用を起こし、房事がスムーズに進行するという、半ば暗示療法の一つなのです。
 
中国産の冬虫夏草
キノコの一種、フユムシナククサタケが昆虫や幼虫に寄生して生じたもので、これを一般に、冬虫夏草と呼びます。日本でもカメムシ類、ミンミンゼミの蛹サナギなどに寄生したものを見かけることができます。しかし生薬として市場に出ているのは、中国産で、コウモリガに寄生したものです。チベット山中でしか取れないので高価です。
中国では料理にも用いられていますが、薬用としては強壮・強精薬で、酒といっしよに服用したり、焼酎に漬け、薬酒として用いられたりします。広島で開催されたアジア大会で平成3年頃行われた世界陸上で、中国陸上の馬軍団の圧倒的な強さの秘訣が冬虫夏草だったことが記憶に残っています。
 
ネパール・チベット・雲南の麝香
ネパール、チベット、雲南などに棲息するシカ科の動物ジャコウジカの雄のジャコウ腺分泌物を乾燥したものです。現在ジャコウジカはワシントン条約の絶滅危惧の動物に指定されているので和漢薬製剤のみ販売されていて、麝香の流通はありません。販売は違法行為で逮捕されます。さて麝香は、少し紫褐色を帯びた粉末状のもので、やや湿った油性ですが指先でもんでもくっつきません。特有の香りが麝香の大きな特徴です。なめてしばらくすると、苦みが出てきます。興奮薬として有名ですが、強心、鎮痙の作用もあります。気つけ薬、六神丸、奇応丸、救命丸などにも配合され、ドリンク剤にも利用されていました。芳香の本態は環状ケトン体のムスコンですが、興奮性成分はまだ解明されていません。ただ性交渉直前に服用すると、一時的にせよ、それなりの反応はあらわれるといいます。
 
仏教伝来とともに伝わった牛黄
牛黄とは牛の胆嚢中に病的に生じた結石です。日本の牛にはこれがあらわれず、オーストラリア、北米、ヨーロッパ、南米、インドの牛からとれます。小指~親指の先ほどの大きさで、球形か鈍四角形をしており、赤黄色でわずかに苦く、しばらくすると少し甘みを感じます。胆汁酸やコレステリン、ビリルビンなどの成分があります。強心、解毒、解熱、鎮痙薬として用いられ、性交渉直前に飲めば、それなりの反応があるともいいます。BSE問題のため、当店では開業以来、豪州産牛黄のみ採用しています。
牛黄は近年価格が高騰していて事実上、継続的な治療に向かなくなりました。
牛黄製剤も多くの製剤の価格が二倍ほどになりました。 
参考文献
健康酒・健康茶・ドリンクスカラー百科