東洋医学では自然の現象を長い間の観察より5つの事象に分類して物事を考えてきました。陰陽五行説といいます。人体(病気)にもその理論を当てはめてたものが次の表であります。しかし、時代によりその理論が細かい点で幾分異なっています。が細かいことは抜きにして全体を観察することが漢方の理論を理解する上では大事です。私は日常この表を元にして治療や養生指導の元としていますし、実際に治療成績が上がることを良く経験します。
五蔵の病気の特徴を例をあげてみましょう
●肝臓に傷害のある型は、顏色が青く、眼光に異様な光があって、目がつり上がっていたり、怒りっぽい性格で、酸っぱいものを好みます。又春になると病気が悪くなったりします。
●心臓に病気の素因があるものは、赤ら顔で、舌がもつれて言葉尻がはっきりせず、性格は陽氣でよく笑い、苦みのあるものを好み、病気は夏に属します。平素陽気で多血質なひとが突然心臓麻痺や脳溢血などの循環器系の疾患を患ってしまうコトがあります。
●脾(胃腸)が弱かったり、傷害がある人は、顏色は黄色を帯びています。日頃より物事を思い過す性格ですが、よく物忘れをします。唇が厚く時々熱っぽく腫れたりします。甘い味が好きで、病気は四季の土用に属し、俗にいう季節の変わり目(季節と季節の変わり目の18日間)に体調を崩しやすいのです。
●肺に故障のある人は、顏色が白く(蒼白で)、常に憂いがちな性質です。ビリ辛い味が好きで、皮膚が弱い。病気は秋に属すので、秋口に呼吸器病が悪化します。
●腎臓に病気があると、顏色は黒く、性格は神経質であったり、臆病であったりします。耳の異常を起こしやすく、塩辛い味(鹹:しょっぱい味)が好きで、冷え性(特に足腰)です。病気は冬に属すので、冬になると膀胱炎を起こしやすかったりします。
| ◆ | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 | 五性を示す |
| 五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 | 臓器の種類 |
| 五腑 | 胆(嚢) | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 | 臓器の種類 |
| 五竅 | 目 | 舌 | 唇(口) | 鼻 | 耳 | 器官の種類 |
| 五主 | 筋(膜) | 血脈 | 肌肉 | 皮毛 | 骨髓 | 五蔵が栄養を補充するもの |
| 五支 | 爪 | 面色 | 唇(乳) | 毛 | 髪 | 五蔵の精気がその色沢に発するところ |
| 五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 | 五蔵の論理的配当 |
| 五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹 | 五蔵の要求する食味 |
| 五悪気 | 風 | 熱 | 湿 | 燥 | 寒 | 五蔵を損傷する天の邪氣 |
| 五志 | 怒 | 笑(喜) | 思 | 悲(慮) | 恐(驚) | 五蔵に発する感情 |
| 五声 | よびさけぶ 呼 |
わらう 言 |
うたう 歌 |
なきさけぶ 哭 |
うなる 呻 |
病人の出す声 |
| 五液 | 涙 | 汗 | 涎 | 涕 | 唾 | 五蔵の主る所 |
| 五変 | にぎる 握 |
うれう 憂 |
しゃっくり 噎 |
せき 咳 |
ふるえ 慄 |
|
| 五神 | 魂 | 神性 | 意智 | 魄 | 精志 | 精神の配属 |
| 五穀 | 麦 | 黍 | 粟(稗) | 稲 | 豆 | 薬用としての穀物 |
| 五畜 | 鶏(犬) | 羊 | 牛 | 馬 | 豚 | 薬用としての家畜 |
| 五菜 | 韮 | 薤 | 葵 | 葱 | まめのは 霍 |
薬用としての野菜 |
| 五果 | 李 | 杏 | 棗 | 桃 | 栗 | 薬用としての果実 |
| 五経陰 | 足厥陰 | 手少陰 | 足太陰 | 手太陰 | 足少陰 | |
| 五経陽 | 足少陽 | 手太陽 | 足陽明 | 手陽明 | 足太陽 | |
| 五能 | 生 | 長 | 化 | 収 | 蔵 | 五行の各機能 |
| 五季 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 | 季節の自然配当 |
| 五方 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 | 成長の過程 |
| 五香 | あぶらくさい 操(月偏) |
こげくさい 焦 |
かんばしい 香 |
なまぐさい 腥 |
くされくさい 腐 |
香気の分類、病人の体臭 |
| 五労 | 久行 | 久視 | 久座 | 久臥 | 久立 | 五蔵を損なう動き |
「肝」のはたらき・・・「木」
木の行に属するものは、木などの植物が地(陰)から出て天(陽)に向って伸びていき枝葉を広げるという様な性質を持つ、物事を伸びやかにさせるのが「木」の気です
方角は東、季節は春、一日のうちでは朝という様に物事の始まり、そして動的な方向に進んでいく様を表します。
・肝は「将軍の官」
(外敵−病邪−を防ぐ一切の思慮・計謀を司る)
・肝は疎泄を主る
(新陳代謝を行う)
・肝は血を蔵す
(血を貯蔵して体の血量を調整して、全身に栄養を供給する)
・肝は筋を主る
(筋の緊張と筋の運動を維持する)
・肝は目に開竅し(目眩や目病)、その華は爪にある(爪の病変)
(肝は血を受けてよく視るといい、かすみ目、めまい、眼の乾燥、夜盲症などは肝の異常と関わりがある)
(また肝以外では特に心、腎と深い関係がある)
(肝の血が不足すると、爪が柔らかく厚みが薄くなり、色が淡白となってツヤが無くなる)
・精神活動を安定させる
(官は思惟の中心で、思考思索をめぐらす。肝気が弱くなると思惟活動が鈍り、ぼんやりし、無気力になる)
肝臓と腎臓は片方だけが悪くなることは少なく、病気が永引けば肝の影響が腎に及んで両方共に弱り(相生関係といいます)、また肝の働きが弱まりはやがて脾の働きにも影響して弱まってきます(相剋関係)
肝気の異常
・肝臓は精神作用の内の「魂」を主宰すると定められています。「魂」という字は気魂・精魂という語に示されるように努力、鋭敏、果断、周到、整頓など心的作用のうちの積極的な良い方面を代表するものです。物事をはじめたら徹底的にやらねば気が済まない、すべてを几帳面に整頓する性格である等がこれに当たります。そこで肝臓機能が異常に亢進していると、これらの特性を極端に発揮する肝症病みになります。反対に肝気が衰えている人はこの方面の精神能力が欠如しているのです。
・「百病は気より生ず」と言うように体内の故障を真っ先に反映するものは気分です。肝臓病者の精神について著しい者は「怒」および感情の興奮です。当然睡眠と深く関わってきます。
・「人が寝る時は血は肝に藏まる」のですが、肝実質の傷害で納まるべき血が妨げられることになると不眠が生じてきます。これは言葉を換えると「肝が昴ぶる」という状態です。
煩驚、易驚、恐怖、驚恐、驚狂、易怒、多怒、粗暴、怒悲、
焦燥、いらいら、不眠、気欝、ノイローゼ、血の道、
感情不安定、神経過敏、譫語、狂躁、癇症、顏色蒼白
筋緊張の亢進
・「肝は筋を主る」とは肝が肉体的に関係するところを意味します。筋とは主に筋肉のことです。
その主な病変は攣急という筋の硬直や痙攣性諸疾患は肝臓の病気とされます。
肩こり、腹直筋の緊張、筋の痙攣(こむら返り)、諸々の痙攣症状(胃痙攣、痙攣性の咳)など
解毒機能の低下
腺病質、炎症、化膿傾向、皮膚病、顔色浅黒い、皮膚暗褐色
| 肝によい食べ物へ |
「心」のはたらき・・・「火」
火の行に属するものは、火が燃え盛る様に動的なエネルギーの解放された拡がりきった性質があります。木は順調に上へ伸びるだけではなく停滞したり、枯れてしまう事もありますが、火は上へ向かって燃え盛るのみです。木の性質によって伸びていき、行き着いた先に火の性質があるわけです。
方角では南、季節では夏、一日のうちでは昼という様に天(陽)の気つまり太陽の作用が最大な時です。五行の内では最も気が強いものです。
・心は「君主の官」
(神に通じる最高の指導者とされ、聡明さ、英知はここから発現する)
・心は神を主る、神は神を蔵す
(精神の中枢で、すべての生命活動は神により統率されている)
(意識水準を保つ、覚醒・睡眠のリズムを調整する)
・心は血脈を主る
(血を循環させ脈の働きを司る)
・心は舌に開竅し、その華は面にあり、汗を主る
(心に病変が有れば舌色は紅くまたは淡白になり、もつれて言語不能に陥る、心気の不足は味覚の異常となる)
(舌は心の他に、脾胃との関係も深い)
(心と血脈の働きが衰弱すると血脈の流れが悪くなり、顏色が蒼白となり光沢が無くなる、心気が不足すると薄黒いor青紫になる)
心の気の異常
心悸、動悸、結滞、息切れ、呼吸困難、
循環器能障害(心臓ポンプの働きの低下による)
手足冷え、四肢厥逆、血圧の低下、意識混濁、胸内苦悶感、心不全
心の熱症状
心に熱がこもると─→心煩、心中煩躁、心中懊濃、胸部熱感
| 心によい食べ物 |
「脾」のはたらき・・・「土」
土の行に属するものは、土の中にものを埋めた時に、それが種であった場合は芽が出たり、動物の死骸であれば腐食するという様な変化をさせる性質があります。
方角では中央、季節では土用と言う様に、土は全ての中間点であったり、物事を変化させたりします。五行では木と金、火と水の性質が相反しますが、どちらにも属さないのてが土です。季節の土用というのは暦上のすべての季節、立春、立夏、立秋、立冬の前18日間をいいます。つまり各季節のラスト18日間は土用がくるので夏だけではなく年に4回もあるわけです。そして、いきなり冬から春になるのではなく、この土用の18日間で次の季節へと変わるわけです。
・脾は「倉廩の官」 ・脾は運化を主る
(倉は穀物を蓄えるものが倉で、米の倉が廩。倉廩とは飮食物の倉庫を意味する。
胃は水穀−飲食物−を受納し脾は精微を運化しこれにより人体に必要な各種の栄養分を供給する
飲食物を運化し精微物質−精という栄養物質−を抽出して全身に運搬すると、同時に体内の津液をも運搬する)
(食物を消化吸収し水穀の気を生成する)
脾の機能が衰えると食物の精気が全身にゆき渡らず腹部膨満、腹鳴、下痢、消化不良、食欲不振などが起こる。
血色不良、津液が停滞し、浮腫が生り、下痢や小便不利などが起こる
・脾は統血する
(血流を滑らかにし血管からの漏出を防ぐ)
脾の弱りは慢性の血便、慢性の月経過多、子宮出血などが起こる
・脾は肌肉・四肢を主る
(筋肉の形成と維持にあずかる)
飲食物を全身に輸送し、この精気により肌肉は生成される
脾の異常は全身に精気が回らず─→肌肉の栄養が欠乏し全身が痩せ、四肢に力がなくなる
・脾は口に開竅する
(脾の異常があると、口唇は青白くなり、ツヤを失う)
脾の気の異常
噫気、噎、ガス腹、腹虚満、腸蠕動亢進、乾嘔
脾の水の異常
よだれ、薄い唾液、胃内停水、呑酸、軟便、下痢、水様便、泄利下重
脾の気と水の異常
嘔吐、腹鳴
消化機能低下
食欲不振、胃腸虚弱、消化不良、食後倦怠感、胸焼け、胃のもたれ、心下痞、
食滞、悪心、便秘、下痢
| 脾によい食べ物へ |
「肺」のはたらき・・・「金」
木・火の様に枝葉を広げて高揚していく一方ですと動的なエネルギーが膨大しすぎてしまいます。それを防ぐため刃物で植物の枝葉を切り落とすような作用が必要となります。金の行に属するものは、物事を小さくする、縮める、下げるという性質を持ちます。
上(陽)に向いていたものを下(陰)に向ける。つまり陽極まれば陰となるという自然の法則により、下げる・弱めるのが金の気です。
方角は西、季節は秋、一日のうちでは夕方という様に、金は終わりとか、静的な方向に行く様を表します。
晩秋と言う言葉は金のイメージとして解りやすいと思います。
・肺は「相傅の官」
(君主である「心」を補佐する宰相の役を果たし、体の血液の循環を調整し、
気血を調整して、五蔵をよく強調させる)
(血液の異常では肺に対する治療も大事なことがある)
・肺は気を主る
(呼吸により宗気−天空の気−を吸入し、天の気を生成して全身に運ぶ)
(この天の気の一部は飮食の精気と合して
真気−元気ともいう−となり、生命の維持作用となる
・肺は宣発・粛降を主り、水道を痛調する
(水穀の気の一部から血と水を生成する)
・肺は皮毛を主り、鼻に開竅する
(皮膚の機能を制御し、その防衛力を保持する)
肺で吸入された天の気−陽気−は、全身にめぐらされ、全身を包むように分布し、保護する
この陽気は喜温や体温の変化に従い調節作用を行う。
たとえば、寒いときは縮んで膚(皮膚)を緻密にさせ、発汗を止めるし、暑いときは、伸びて肌を弛緩させ、発汗させる。このバランスが乱れると肌は外邪にもろくなり、いつも風邪ばかり引くとなるのである。
肺気の異常
咳、咳逆上気、胸満、胸中痞、喘、喘鳴、息切れ、喘咳
肺の水の異常
咳嗽、薄い喀痰、水涕、胸中満悶、胸水、胸痛
「腎」のはたらき・・・「水」
水は、自然な状態では外力が加わらなければ静かで動かなかったり、動いたとしても下へ向かうだけです。冷たく水面も平坦です。水の行に属するものは、金の性質によって縮んでいき、縮みきって動きの無くなった処に水の性質があります。つまり静的で動物が冬眠をするように小さくじっとしているのが水の気です。
方角では北、季節では冬、一日のうちでは夜という様に五行の内では最も陰の気が強いものです
・腎は「作強の官」
人体の生命活動を維持する基本的な栄養物質−すなわち「精」−を貯蔵し、五藏六府に供給し、健全な働きを維持している。全身に精力を賦与し粘り強さや根気を生み出している。
・腎は精を蔵す生殖用の精も貯蔵する。これは、先天的(親から受け継いだ)な腎気が、後天的な(生後に食物などから取入れた)五蔵の精気と結合して出来たもの。その生成、貯蔵、輸送はすべて腎が管理している。・腎は成長・発育・生殖能を司る
腎に病変が起こると、遺精、早漏、精液不足、性欲減退などが生じる。子供の腎気は親からの先天的な精気を受け継いだもので、発育成長を促す基礎となる。
乳幼児(胎児も含め)では発育に影響し、思春期では精の成熟に影響し、
壮年期は精機能に影響し、老齢期は老化に影響する
女子では7年ごとに、男子は8年ごとに腎気の年齢的消長があるとされる
先天性の発育不良、早老化現象、不妊、精子不育、遺精、陽痿
・腎は「命門の火」の管理者
腎は左右に二個有りその働きは異なっている。右腎を命門という。
命門は元気の根本で、親から受け継いだ先天の気(腎気)を貯蔵する。
命門の火は五藏六府、発育成長、生殖のエネルギーとなる大本である
・腎は水液を主る
腎は水を蔵して、全身の水分代謝を管理し、命門の火はこの働きを助けて全身に津液を分布させたり、排泄させたりする。
尿量減少、小便不利、浮腫、夜間頻尿、多尿
・腎は骨を主り、髄を生じ、脳に通じる
腎は骨と髄の成長発育と関係している(腎は精を蔵し、精は髓を生じ、髓が骨を養っている)
骨の一種である歯・歯髄・歯齦(歯肉も)・牙の形成と維持に関与する
脳は髓の海といい、腎は脳(髓)と深く関係し、は思考力、判断力、集中力を保持する
腎気不足は─骨髓─→腰が重怠い、骨が痛む、四肢に力がなくなる
─脳髄─→思考力の鈍り、健忘、眩量、耳鳴り、視力低下
・腎は上は耳に開竅し、下は二陰に開竅し、その華は髪にある
腎気は耳に通じ、腎和すればよく五音を聞くという
腎の異常は耳鳴り、耳聾を生じる
二陰とは前陰=生殖器、後陰=肛門のことで、生殖と二便の排泄に関わる
腎の異常は腎水と命門の火が不足して、便秘や尿量の減少が生じてくると浮腫や
、逆に水様性の下痢・尿失禁・早漏・遺精などがおこる
腎が健やかだと神は黒々と太く艶があるが、弱まると白髪や脱毛が生じてくる
・腎は納気を主る
(呼吸能を維持する)
呼吸は横隔膜の上下によるが肺は横隔膜を上に引き上げ肺から息を出すが、腎は横隔膜を引き下げて肺(天の気)に空気を取り入れる
呼吸過多、吸気が困難(肺では吐気が困難)、呼吸が浅い、息切れ等
腎の気の異常
臍下不仁、下肢倦怠、脚痿弱、下肢脱力
腎の水の異常
下腹部浮腫、下半身浮腫、下腿浮腫、下腹部肥満、下半身の冷え、
腰脚冷重・冷痛、足冷え
泌尿器機能低下
多尿、頻尿、小便清利、遺尿、乏尿、小便難
生殖器機能低下
精力減退、失精、夢精、遺精、陰痿、月経不順
〈〈〈西と東の腎の病気の考え方〉〉〉
◆西洋医学でいう腎臓病は、急性慢性の腎炎、腎不全、腎孟炎などで、主な症状として、蛋白尿や血尿、尿量の増加あるいは減少、浮腫、血圧上昇、腎機能の低下による血中老廃物増加、貧血などが起こり、症状の悪化と共に進行します。西洋医学では一般に「食塩の摂取を減らし」「ストレスや過労を避け、特に風邪を引かないように」「刺激物を避け」「肉食を少なくする」といったような指導をしています。
◆漢方(東洋医学)では「腎は先天の本」というように多くの機能を司っており、腎が弱まると様々な症状が出てきますし、また腎は身体のエネルギーを蓄える働きがあると考えます。よって西洋医学的な病状のほかに例を挙げると、インポテンツ、糖尿病、痛風、冷え性、腰痛、神経痛、リウマチ 脱毛、白髪、婦人病、難聴、耳鳴り、足腰の弱り、夜間頻尿、夜尿症、視力低下など更に老化現象にも腎の衰えと考える点も西洋医学と大きく異なっています。漢方では腎臓の病気に対しての食養生も単なる食塩制限だけでなく、広く腎を補益してその機能を助け高めるような食物を積極的に摂取することを勧めています。
腎炎や慢性腎不全のような現代医学で難病といわれる腎臓疾患に村して、漢方の全身的な考えや食養生は良い結果を及ぼす事が少なくありません。
| 腎によい食べ物へ |
・漢方では体の中には気(エネルギー、元気の元)と血(体液のうちで赤い色のあるもの、血液など)、と水(体液のうち色のないものや精微物質、精液など)があります
・正常時には、これらが過不足なく、(気が中心となって)身体を巡っています。ところが病的な状態になると様々な症状を表します。・気・血・水の理論では、病的な症状は気血水の内のどれが不良を起こしているのかで変わってきます
・臨床上では単独で変調を来していることはまれで、お互いが複雑に絡み合っているのが普通です
・おなじ頭痛という症状でも、気の変調によるもの(例:のぼせて頭痛がする)や血の変調によるもの(例:首から上の血行不良で頭痛がするもの)、水の変調によるもの(例:体内にだぶついた水分が上半身に集まって頭痛を起こす)などがあります。ほかにも色々な原因がありますがここでは割愛します。漢方治療では根本の原因をただす治療を行いますので、若干の時間はかかりますが、鎮痛剤を長く飲み続ける上に量が増えてくるといった様なことはなくなってきます。
漢方の気とは体を動かすエネルギーのようなものです
このエネルギーは生まれながらにして親から受け継いだ「先天の気」と生まれた後に飲食物から得られる「後天の気」とに分けられます
気は正常なときには身体を巡っているのですが、何かしらの原因によって動きが悪くなったり(気欝)、動きすぎたり(気逆)、不足(気虚)したりします。
1.気虚
気力が沸かない、何となくだるい、元気が出ない、根気が無くなった、動作が物憂い、食欲が落ちた、手足がだるい、良く風邪を引く、内蔵が下がっている、便が柔らかい、下痢しやすいなどは「気虚」という気が少なくなっている状態です。このようなときには朝鮮人参や黄耆という気を増やす生薬をよく使います。黄耆と人参の配合された処方は参耆剤(じんぎざい)といって気虚の治療の基本形です。
気分が重く憂鬱、頭が重い、喉がつまった感じがある、季肋部(肋骨の下の方)が使えた感じがする、腹が張る、朝起きにくい、ガスが良く出る、などは気の巡りが悪くなった状態で、ひどくなるとノイローゼになったり、不眠症になったり、ヒステリーになったりすることもあります。そのほかに張ったような痛みが生じます。この状態が進行すれば、胃腸の機能が低下して血液が不足(血虚)したり、ストレスなどにより血行不良(於血)を生じます。このようなときには厚朴、紫蘇葉、枳実、香附子などを生薬として使います。また、気欝の時には肝の気の巡りも悪くなっていることも多いので肝にたまった血の流れを改善することも考える必要が出てきます。
3.気逆
気の動きは上に上がったままで下がらなくなった状態です。お腹のあたりから何かが頭の方に突き上がってきてにっちもさっちもいかなくなった状態です。呼吸がしにくくなったり、激しい頭痛や心動悸や臍周りの動悸がしたり、のぼせて顏が真っ赤になったりもします。上の方に気が上ってしまったために足が冷えたり、精神的に不安感が強くなりすぐ物事に驚いたりもします。激しい腹痛発作におそわれる方もいます。このような状態を気が逆上した「気逆」といいます。このようなときは上りつめた気を引きさげる桂枝を中心に甘草をよくつかいます。桂枝と甘草の組み合わせはとても効果があります。
古人は体液のうちで赤いものを「血」と呼んでいたようです。現代医学では、赤血球や血小板などが血に相当するのではないでしょうか。
血の異常は血の少なくなった状態と血の流れが悪くなった状態があります。飲食物やストレスなどによって血液の流れが悪くなった状態をH血と呼びます。
於血があることで様々な疾患が引き起こされてきます。典型的なものに高血圧、脳血管障害などです。この於血を去る薬は駆於血剤と呼ばれます。
1.血虚
文字通り血が少なくなった状態です。血が少ないことで、全身に栄養を送ることが出来なくなってきます。血の中には水分もあるので身体が乾燥気味になったりもします。血が少ないことは気も少なくなっているので、前述した気虚の症状も伴います。貧血状態ですから、身体の血液循環も良くなく冷え性になったり、顏色不良、痩せ、脾に血が巡らずに働きが弱くなり出血しやすくなる(脾は統血を司ると言います)等が症状としてわかりやすいでしょう。当然の事ながら治療には増血作用のある生薬の当帰、川弓、地黄、芍藥、阿膠などを使います。
2.於血(血於とも言う)・・・・於は「やまいだれに於」と書きます
新選漢和辞典(小学館)には「於」は血の循環が悪くなって起こる病気とあります。この於という字に更に血が付いているのですから血の流れが悪いことは一目で想像できますね。
現代人はストレスが多くなっているために気の巡りが悪く、その結果として血の巡りも悪くなっています。さらに食生活の悪さからますます於血の状態が悪くなります。血の流れが悪いことで免疫力も低下します。更に女性では子宮という臓器を持っているために男性に比べて血に関する色々な病状を起こしやすいのです。生理に伴う症状や閉経前後に起こる更年期症状等が良い例ですね。
また全身で見ますと高血圧に伴う様々な症状、血栓が出来たり、痔が出来たり、便秘したり、腹痛が起こったり、狭心症等になったりとても命に直結するような病状が多いですね。漢方ではこのような血の流れが悪くなったときにでも血の流れを改善する薬がありますし、最近の研究では駆淤血剤(淤血を改善させる薬)を服用することで、血球が酸化されずに柔らかさを保てるために、細くなった血管を詰まらせることなくするりと流れることが分かってきました。
於血によって引き起こされる症状は目の周りの色素沈着(くまどり)、顔面の色素沈着、皮膚のかさつき、歯茎が暗赤色、舌が暗赤紫色になったりクロっぽい斑点が出来る、舌の裏の静脈が太くクロっぽい、皮膚に蜘蛛の巣のような血管が浮いて見える、内出血しやすい、手のひらが赤い、臍の周りに圧痛がある、便秘、イボ痔などです。このような状態があれは手遅れにならないように早めに治療しましょう。於血を改善する薬は駆於血剤といい、牡丹皮、桃仁、当帰や芍藥(血虚でも使う)等があります。これらでも駄目なときには滅多に使いませんが動物の生薬を使うこともあります。
於血を引き起こす原因
- 運動不足
- ストレス
- 心身の疲労
- 長期間の病気
- 食事の不摂生(肉食の多食、加工食品の多食など)
- 生活環境の変化(過度の冷房や暖房)
- 虚弱体質
於血とかかわりの深い病気
- 神経痛、リウマチ、関節炎、筋肉痛
- 冷え症、肩こり
- 皮膚癌揮症、アトビー性皮膚炎、乾性湿疹、慢性じんましん
- 外傷性癖血性序痛(ねんざ、打撲)
- 疲労
- 血管神経性頭痛、脳外傷後遺症の頭痛、半身不随後遺症
- 動脈炎、静脈炎、血栓性血管灸
- 動脈硬化症、高脂血症、高血圧症
- 月経困難症、生理痛、不妊症
- 慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胆嚢炎、胆石症
- 腫瘍、できもの、前立腺肥大、慢性前立腺炎
- 慢性腎灸、ネフローゼ、水腫
- 性機能障害、不妊など
- 肝炎、肝硬変、気滞血Hによる胸脇疼痛
- 健忘、不眠、イライラなどの精神の異常
養生法
- 養生の主な手段は運動で、体の抵抗力を高めます。治療の必要な疾病は正確に治療しながら、日常的に適切な運動を行い、ストレスがたまらないように心がけ、さらにバランスの取れた食事をし、生活環境(特に冷暖房)に注意すれば、於血症を予防することができます。
- 運動
血行を促進するためには、体全体の筋肉を使用して、血流を改善します。散歩・健康体操・ストレッチ運動
寝たきりの人に、軽いマッサージをしてあげることだけでも、かなり効果があります。特に、リハビリの必要のある方は、機能回復運動と同時に血行
促進効果のある、ツボや経路を刺激します。いろいろとツボはありますが、押さえて気持ちの良い所をマッサージするだけでも効果はあります。- 食事については野菜の食べ方と於血の食べ方を参照
科学技術庁研究班による於血の診断基準 項目 男 女 項目 男 女 眼輪部の色素沈着 10 10 臍傍圧痛抵抗 左 5 5 顔面の色素沈着 2 2 臍傍圧痛抵抗 右 10 10 皮膚の甲錯 2 5 臍傍圧痛抵抗 正中 5 5 口唇の暗赤化 2 2 回盲部圧痛・抵抗 5 2 歯肉の暗赤化 10 5 S状部圧痛・抵抗 5 5 舌の暗赤紫化 10 10 季肋部圧痛・抵抗 5 5 細絡 5 5 皮下溢血 2 10 痔疾患 10 5 手掌紅斑 2 5 月経障害 10 判定基準 20点以下・・非於血病態 21点以上・・於血病態 40点以上・・重傷の於血病態
最後に残ったのは水ですが、中医学では津液といいます。文字通り身体の水分のことです。病態としては足りないか余ったかですが、足りない場合よりも余った場合の方が複雑な病体を示します。また、水分は冷えると固まって氷になりますが、濃縮されて濃くなった状態を漢方では痰、飲、痰飲等と呼びます。また更に濃縮された状態になるとコレステロールが身体にたまったり、石のようになって、胆石などの結石になります。このような状態を湿熱と呼んで、漢方ではとても治療に時間のかかる病状です。湿熱については別に項目をもうけて述べるとして、ここでは、単に水分が貯まった状態について述べます。
1.水滞
マスコミで水を1日2L飲んだ方がよいといってるのを効いて、実行している方がよくこられますが、大抵の方は体調を乱しているようです。体がだるいとか、膝が痛い、腰が痛い、頭痛がする、食欲がない、身体が冷える、便が柔らかい、腹が張ってガスが欲出る、めまいがする、などです。体調が悪いなら止めればよいのですが有名な先生がいったからと実行しているわけです。乾燥気味の気候ならば皮膚呼吸から余った水分は発散できますが、日本は多湿のために皮膚からは十分に発散できないのです。おまけに体の中にはどんどん水分をため込むことは腎を弱らせる結果となります。また、神経痛などは濕痺という湿気の病体ですから、痛みがますますひどくなります。また、脾は腸に相当しますが、元来水分を嫌う臓器ですから脾も弱まるために下痢し易くなり、栄養の消化吸収がうまくいかずにだるくなります。夏場に水をがぶ飲みして秋口から夏ばての症状がひどくなるのと同じ様な理屈ですね。しかも、冷たい水を飲みますから身体も冷えてきます。このようなときに私は、水を飲む代わりに熱いほうじ茶を飲むよう指導していますがが、たいていの人はそれだけで胃腸が相当改善します。
さて、漢方治療には水をさばく生薬の茯苓と白朮、蒼朮、猪苓、沢瀉、防已、麻黄、等を使います。漢方の良いところは新薬と違って、余分な水分だけを去り生体に必要な水分はちゃんと残して置いてくれる点にあります。新薬の強力な利尿剤は水分が少ない状態でも尿を出してしまい脱水状態や電解質異常になったりする点が漢方とは全く異なりますね。
また、余った水分がどこに貯まっているかで病状も異なってきます。手足に貯まるといわゆる浮腫としてあらわれ、関節に貯まると神経痛や関節炎、胸部や心下部に貯まると喘息や心臓病、胃腸に貯まると慢性の下痢や胃腸炎などになります。くれぐれもご注意あれ!!