123.大黄牡丹皮湯


〔出典〕

【金匱要略】《瘡癰腸癰浸淫病第十八》
・腸癰者.少腹腫痞.按之即痛.如淋.小便自調.時時発熱.自汗出.復悪寒.其脉遲緊者.
 膿未成.可下之.当有血.脉洪數者.膿已成.不可下也.大黄牡丹湯主之.

〔構成〕

〇大黄四両.牡丹一両.桃仁五十枚.瓜子半升.芒消三合.
〇右五味.以水六升.煮取一升.去滓.内芒消.再煎沸.頓服之.有膿当下.如無膿当下血.
(大黄1.牡丹皮3.桃仁3.芒消3.冬瓜子3.)

〔方意〕

・腹癰にして之を按ぜば即ち痛み、時時発熱し、自ら汗出で、復た悪寒する者(方機)
・腹中に堅塊あり、経水不順なる者。(方機)
・腹脹満すること鼓の如く、青筋を生じ、或は腫れ、小便利せざる者。(方機)
・少腹に堅塊あり、小便淋瀝する者。(方機)
・臍下に堅塊あり之を按じて即ち痛み及び便に膿血ある者を治す(方極)
・臍下に結毒有り、之を按ずれば即ち痛み、及び膿血を便する者を治す(類聚方広義)

〔病位〕陽明の準位で、実証
〔脈侯〕遅緊または沈実
〔舌侯〕乾燥、苔あれば多くは黄苔
〔腹侯〕腹力充実、右臍傍の圧痛抵抗
  腹部は、腹力中等度ないしは強く、臍下部に著明な抵抗・圧痛(瘀血の腹証=小腹硬満)を認め、
  時として右下腹部の自発痛を伴うことがある。


〔応用の勘所〕
・右臍傍ないしは回盲部の圧痛抵抗、自汗、悪寒、便秘、腹痛、脈遅緊

〔鑑別〕
桃核承気湯、桂枝茯苓丸、薏苡附子敗醤散、桂枝加芍薬湯、大建中湯、下瘀血湯、調胃承気湯、大黄䗪虫丸など
●桃核承気湯‥使用目標は近似。左腸骨窩に索条の抵抗と著明な圧痛(小腹急結)を認め、
  精神神経症状があり、尿量減少はみられない。
●桂枝茯苓丸‥瘀血症状は共通するが、体力は中等度で、便秘はなく、小腹硬満は著明でない。
●猪苓湯‥排尿障害は近似するが、小腹硬満はなく、血症状は認めない。
騰龍湯(本方+よく苡仁、蒼朮、甘草)、本方より緩症
●大黄牡丹皮湯合八味地黄丸‥前立腺肥大症

〔応用〕〔適応〕

・急・慢性虫垂炎、赤痢様疾患、腎石疝痛発作、肛囲炎、痔漏、尿道炎、睾丸炎、副睾丸炎、
 子宮内膜炎、帯下、付属器炎、骨盤腹膜炎、骨髄骨膜炎、淋疾、皮膚病など
・化膿機転のあるときは薏苡仁を加えるとよいことが多い
産婦人科‥卵巣機能不全、月経困難症、更年期障害、子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤腹膜炎、
 骨盤内うっ血症候群。
循環器科‥静脈瘤、血栓性静脈炎。代謝‥高脂血症。
消化器科‥便秘症、痔核痛、直腸炎、急性虫垂炎、肛門周囲炎。
泌尿器か‥尿道炎、前立腺炎、前立腺肥大症、膀朕炎。
皮膚科 ‥湿疹、蕁麻疹、尋常性座瘡、膿皮症(癖、櫛)。


本方は比較的体力が充実し、便秘傾向がある人の、いわゆる瘀血
 (静脈系の鬱血、出血等に関連した症候群)を目標に用いる。
一般に、月経異常、便秘、痔疾、排尿異常などを伴う事が多い。
脈腹力緊張よし。
左臍傍悸、回盲部圧痛抵抗、脈沈緊遅、自汗、便秘、腹痛、黄苔。
下痢でも用いる事がある~急性腸炎の時下痢、裏急後重が強い。
魚の臓物のような悪臭膿血便、排便・排尿が困難で量が少ない。
下腹部が硬く充満している
ニキビには加苡仁、腹力充実、上衝なく症状は下腹部に限局する
「淋の如く小便自調」と圧痛より→尿路結石、前立腺炎に応用。