生薬「熊胆」 熊胆(薬王堂所蔵画像を借用)



【基源動物】  ツキノワグマSelenarctos thibetanus
ヒグマUrsus arctos  など
【 生薬名 】 熊胆 FEL URSI
【 科名 】 クマ科Ursidae
【 別名 】 クマノイ
【薬用部位】 クマの胆石
【 主成分 】 胆汁酸tauro-ursodesoxycholic asid(アルカリ分解するとtaurineとursodesoxycholic asidが得られる)、chenodesoxycholic asid、cholic asid、desoxycholic asid、bilirubin、cholesterolなど
【 薬 性 】 気味は苦寒、帰経は心肝胆胃に属す
【 薬 能 】 清熱、消炎、鎮痛、鎮静作用を有する
 【 品 質 】 熊胆は顆粒状。砕片状で断面に光沢あるものを佳品とする。味はきわめて苦いが臭気なく、口に含んだ後、清涼感のある、やや甘味のあるものが上品である。色調は採集時期により異なる。冬眠中のものは黒く、夏~秋の活動期は琥珀色で佳品とされる。
 【 薬 理 】 熊胆の水溶液を,胆汁瘻を作った家兎に耳静脈内注射すると,胆汁分泌促進作用が認められ,また軽度の利尿作用があるが,膵液分泌には殆んど影響しない。また胃瘻管造設のイヌの胃内に注射した場合,胃液分泌にも変化は認められない。また胆汁瘻を作ったラットにdehydrocholic acid(静注)とursodeoxycholic acid(経口)を投与したところ,前者は強い胆汁分泌作用を示したが,後者はほとんど作用がない。ursodeoxycholic acidは他の胆汁酸に比してリパーゼ促進作用が強い。熊胆の水溶液およびtauroursodeoxycholic acid,ursodeoxycholic acid は鎮痙作用を示し,後2者の効力を比較すると遊離型の方がより強い。 ursodeoxycholic acid はdesoxycholic acid に比して溶血作用弱く,その利胆作用はdesoxycholic acid に次いで強く,cholic acid より強力である。胆管末端部のOddi括約筋(ブタ)の弛緩作用の強さはdeoxycholic acid > chenodeoxycholic acid > ursodesoxycholic acid の順で,ursodeoxycholic acid はむしろ他の胆汁酸より作用が弱い。 ursodesoxycholic acid のマウスに対するLD50(皮下注射)は1000mg/kgで毒性は低い。熊胆の薬効を代表する成分はtauro-ursodesoxycholic acidと考えられるが,他の胆汁との薬理作用において,その主成分をなす胆汁酸に関する限り,目下のところ積極的な相異点は見いだせない。(原色和漢薬図鑑和漢薬図鑑より)

【 効 能 】
●消炎・鎮痛には0.2~1.25gを内服するか、散か丸薬として用い、煎剤にはしない、炎症に外用するときは20~30㎎
●胃のむかつき、食欲不振、二日酔いに1回10~20mgを砕いて服用、粉にすると苦すぎてとても飲みにくい
●古くから胃病に用いられてきた民間薬でその効果は確実である
●日本での臨床研究でC型及びB型慢性肝炎・肝硬変等の肝機能障害に熊胆の60mg1日量を服用するとGOTやGTP等の生検数値が明らかに下降し、しかも牛黄200mgを併用すればその効果は更に良くなることが学会報告されました
●また、日本薬局方に適合の牛黄や熊胆でないと効果が極端に劣ることも報告されました、必ず信用のある薬局で求めて下さい、典型的な安かろう悪かろうの例ですね
●維持量としてはその半分を連用するとよいでしょう

【備 考】 
●日本の熊からも熊胆はとれるが、中国産に比べやや小ぶりです
●ワシントン条約保護動物で入手困難、入手が出来なくなる可能性もあります
●非常に高価なので、どうしても必要なときだけ使用すべきであり、一般に炎症や眼疾患には用いる必要がない
胆汁の利用は、神農本草経には牛膽、牡狗膽、鯉魚膽がみられ、名医別録には豚膽、烏雄鶏膽、「虫苒」蛇膽、蝮蛇膽がみられる。※「虫苒」ゼン‥大きな蛇

 【 出 典 】
●熊脂.味甘微寒.生山谷.治風痺不仁筋急.五藏腹中積聚.寒熱羸痩.頭瘍白禿.面皰(カンポウ).久服強志不飢軽身.(神農本草経・上品)
●小兒の五疳を主治し、虫を殺し、悪瘡を治す。(薬性論)
●熊胆、味苦寒無毒.時気の熱が盛んで黄疸に変じたもの.暑期の久痢、疳𧏾、心痛、疰忤を主治する。(唐本注)
 【 処方例 】 熊胆麝香丸、熊胆丸。奇応丸、黒丸子は家伝薬として有名