142.当帰芍薬散

〔出典〕金匱要略

《婦人姙娠病第二十》
・婦人懷姙.腹中痛.当帰芍薬散主之.

《婦人雑病篇第二十二》
・婦人腹中諸疾痛.当帰芍薬散主之.

〔構成〕

当帰三両.芍薬一斤.茯苓四両.白朮四両.沢瀉半斤.芎藭半斤一作三両.
右六味.杵為散.取方寸匕.酒和.日三服.

混和細末にして、散剤として1回1~2gを清酒で服用する、1日2~3回、
散‥(当帰0.4、芍薬2.2、茯苓0.6、白朮0.6、沢瀉1.1、川芎1.1。以上混和末6gを分3)
料‥(当帰3.0、芍薬6.0、茯苓4.0、白朮4.0、沢瀉4.0、川芎3.0。以上18g)

〔効能・効果〕

薬局製剤
比較的体力乏しく、冷えまたは貧血の傾向があるもので、排尿回数多くて尿量少ないものあるいは冷えて下腹部に圧痛のあるもの
冷え性、頭重、めまい、月経不順、婦人更年期障害

〔方意〕

・婦人懐姙し、腹中痛し、其の人、心下に支飲有りて小便少なく、或は冒する者は、本方之を主る(医聖方格)

〔病位〕太陰の準位で虚証。血、停水型。
〔脈侯〕軟弱、沈遅、細小。
〔舌侯〕湿潤、ときに乾燥、無苔
〔腹侯〕軟、あるいは攣急、臍傍の抵抗圧痛、往々にして胃部に拍水音を認める。


〔応用の勘所〕
  一般貧血傾向、身体疲労感あるいは麻痺感、腹痛、月経異常あるいは子宮出血、
  足冷、上逆(頭重、眩暈、耳鳴り、肩こりなど)、腰痛、心悸亢進。

〔鑑別〕
   当帰建中湯、小建中湯、桂枝加芍薬湯、八味地黄丸、人参湯、真武湯、甘麦大棗湯、
   芎帰膠艾湯、桂枝茯苓丸、温経湯、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、苓姜朮甘湯、
   半夏厚朴湯、茯苓飲、炙甘草湯、黄連阿膠湯、黄土湯、酸棗仁湯、芍薬甘草附子湯、
   五苓散など。

〔応用〕
  臍傍症候群(臍傍の抵抗圧痛、腹痛、頭痛、女子では月経異常など)、
  眩暈、更年期障害、子宮出血、冷え性、慢性腎炎、ネフローゼ、高血圧症、
  痔疾、神経痛、慢性関節リウマチ(多くは附子を加える)、
  萎縮性鼻炎、乾性角結膜炎、蒲陶膜炎、白内障、緑内障など


・散と両とではかなり性格が異なる、料は軟便傾向の人によく、このような人に散を用いると下痢っぽくなる。
・散でちょうど良い通じが付く人に料を用いると便秘する。薬1日分に対する芍薬の分量比の差によると考えられる。
・散では胃もたれを起こす人は川芎によると考えられている⇒四君子湯や安中散を併用すると良い
・本方に桂枝と甘草が入ると苓桂朮甘湯の方意となる
・腹痛や浮腫が増加するのは証が違う⇒桂枝茯苓丸を考えてみる


五苓散(利水)+四物湯(和血)-「地黄、猪苓・桂枝」と考えることも出来る

水毒+瘀血、脈腹力ともに軟弱、臍傍の抵抗圧痛は左に多い
時に胃内停水、貧血傾向、血色不良、疲労感、下腹部痛、足腰の冷え、手足の冷え
動悸しやすい、
上逆(頭痛、頭冒眩暈、肩こりなど)、耳鳴り、小便頻数、腹力は様々で一定しない
半身不随
月経不順で生理痛があって帯下は無色か卵色?でやや多い
流産癖があったり、不妊であったりする場合、長期服用により正常の妊娠分娩が期待出来る