151.人参湯  (理中湯)

〔出典〕

【傷寒論】
166.傷寒服湯薬.下利不止.心下痞.服瀉心湯(=甘草瀉心湯)已.復以他薬下之.利不止.
 医以理中與之.利益甚.理中者.理中焦.此利在下焦.赤石脂禹餘粮湯主之.復不止者.
 当利其小便.赤石脂禹餘粮湯.《太陽病下篇》
398.霍亂.頭痛発熱.身疼痛.熱多欲飲水者.五苓散主之.寒多不用水者.理中丸主之.《霍亂病篇》
408.大病差後.喜唾.久不了了.胸上有寒.当以丸薬温之.宜理中丸.《陰陽易差後勞復病》

【金匱要略】《胸痺心痛短気病第九》
・胸痺.心中痞留.気結在胸.胸満.脇下逆搶心.枳實薤白桂枝湯主之.人参湯亦主之.

〔構成〕


〇人参.乾姜.甘草炙.白朮各三両.
  (人参、乾姜、甘草、白朮各2)
〇右四味.擣篩.蜜和為丸.如子黄許大.以沸湯數合.和一丸.研碎.温服之.
 日三四.夜二服.腹中未熟.益至三四丸.然不及湯.湯法.以四物.依両數切.
 用水八升.煮取三升.去滓.温服一升.日三服.

若以下は人参湯の方後の加減

若臍上築者.腎気動也.去朮.加桂四両。
吐多者.去朮.加生姜三両。
下多者.還用朮。
悸者.加茯苓二両。
渇欲得水者.加朮。足前成四両半.
腹中痛者.加人参.足前成四両半.
寒者.加乾姜.足前成四両半.
腹満者.去朮.加附子一枚.
服湯後.如食頃.飲熱粥一升許.微自温.勿発掲衣被.

〔方意〕
・心下痞硬する(大簇)者、心下痞し喜ば唾し了了たらざる者(南呂)。(方機)
・暑病(いわゆる霍乱)にして嘔吐下利し心下痞硬する者(紫円)。(方機)
・心下痞硬し、小便利せず、或は急痛し、或は胸中痞する者を治す。(方極、方極附言)

〔病位〕太陰位で、虚証
〔脈侯〕軟弱
〔舌侯〕湿潤
〔腹侯〕軟弱、胃部を按圧すると抵抗があり、不快感を覚えることがある。
   胃部に拍水音を認めることが多い。


〔応用の勘所〕
・水瀉性下痢、胃部膨満感、身体および四肢の寒冷感
〔鑑別〕桂枝人参湯、小建中湯、真武湯など
〔応用〕
・胃下垂症、胃アトニー、胃液分泌過多症、胃酸過多症、胃潰瘍、胃酸欠乏症、胃腸カタル、
 コレラ様吐瀉病、胆石症などで胃部痞硬し、食欲なく足冷、あるいは下痢胃痛囃を伴うもの。
 小児の吐乳症、自家中毒症。心臓弁膜症、心臓神経症で心悸亢進し、心下痞硬または
 足冷のあるもの。喘息で胸痺あるいは裏寒するもの。
 肋間神経痛、肋膜炎、疑似狭心症で胸痛心下痞手足冷のもの。
 蛔虫症、悪阻、よだれなどで生唾や胃の黄色い水が多く口に出るもの。
・柔痙で自汗厥冷するもの。腰痛で寒性の下痢するもの。糖尿病で足冷、中焦虚寒のもの。
 浮腫、萎縮腎で胃弱心下痞のもの。吐血、喀血、腸出血、痔出血、子宮出血などで胃虚寒のもの。
 神経衰弱で貧血足が冷えて眠れぬもの、あるいは心悸亢進するもの。
 肺結核の軽症または回復期で倦怠、胃弱。足冷のもの。
 カタル性鼻炎、アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎などでくしゃみが多く、胃症状、足冷のもの。
 帯下で足冷、小便自利、あるいは目まい、頭重、軟便のものなど。


〔効能・効果〕薬局製剤

手足などが冷えやすく、尿量が多いものの次の諸症‥
胃腸虚弱、胃アトニー、下痢、嘔吐、胃痛

理中丸として丸薬をそのまま飲む、丸薬を水で煎じて飲む、料として煎じて飲む3通りあるが
料が一番効く様にある。
貧血気味、手足が冷えることがある
心下痞(時に心下痞硬)、腹痛、腹痛、時に下痢(必ずしもなくてよい)
尿利異常(小便自利、小便薄く量が多い)、喜唾(甘草乾姜湯に似る)、
胸痛を伴うことがある(心中痞、胸痞、一般には枳縮二陳湯、千金当帰湯)
胸焼けはあまり訴えない、食の味がない、食後眠たくなる(半白天麻湯に似る)

胃潰瘍の疼痛~人参加三味(加当帰、木香、香附子)


「人参湯の類方」

附子理中湯~人参湯で自利、嘔逆、厥冷、拘急、心腹拘急
理中安蛔湯~人参湯+茯苓、烏梅、蜀椒。人参湯証で回虫症を兼ね、回虫を吐く傾向、生唾多い
扶老理中湯~+茯苓、附子、麦門冬、羸老、冷気、悪心、食欲不振、腹虚満拘急、短気及び霍乱
   嘔逆、厥冷、心煩気悶、流汗のもの
桂枝人参湯~協熱利。表証と下痢。心下痞硬、動悸、発熱、下痢
道挽湯~桂枝人参湯+枳実、茯苓、赤痢などに使う
連理湯~桂枝人参湯+黄連、茯苓、腸結核に使われた