49.桂枝茯苓丸

〔出典〕

【金匱要略】《婦人妊娠病第二十》
・婦人宿有病.経斷未及三月.而得漏下不止.胎動在臍上者.
・為痼害妊娠.六月動者.前三月経水利時胎.下血者.後斷三月也.所以血不止者.其不去故也.当下其.桂枝茯苓丸主之.

〔構成〕

・桂枝.茯苓.牡丹去心.桃仁去皮尖.熬.芍藥各等分.
・右五味.末之.煉蜜和丸如兔屎大.毎日食前服一丸.不知加至三丸.
  (桂枝.茯苓.牡丹去心.桃仁去皮尖.熬.芍藥各等分.)

〔方意〕

・漏下して止まず、胎動臍上にある者。(方機)
・婦人衝逆し頭眩し、或は心下悸し、或は肉筋する者(夷則)。(方機)
・経水利せず、面部或は手足腫れる者(湯或は散として之を服し夷則或は低当丸を兼用す)(方機)
・病に血症の変あり、手足煩熱し、小便不利する者(夷則)。(方機)
・拘攣し、上衝し、心下悸し、経水に変あり或は胎動く者を治す。(方極)
・拘攣、上衝し、心下悸し、及び下血し、或は胎動し、若くは経水に変ある者を治す(方極附言)

〔病位〕少陽の準位で、実証
〔脈侯〕沈遅で微力がある、あるいは沈数、あるいはやや浮で微力がある
〔舌侯〕唇口乾燥、舌乾燥して無苔、あるいは微白苔
〔腹侯〕微満、微力あり、臍傍の抵抗圧痛及び腹直筋の異常緊張は左側に多い


〔応用の勘所〕

月経異常あるいは閉経あるいは出血その他の血症状、
のぼせ、頭重、頭眩、頭痛などの上衝症状と臍傍の抵抗圧痛

駆瘀血剤、下腹の血によって以下の症状が起こる
・頭痛、眩暈、上衝、足冷え、下血、腰痛、腹痛、月経閉止

〔鑑別〕

桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、苡附子敗醤散、大黄虫丸、下血湯、
抵当湯および湯、当帰芍薬散、温経湯など

〔応用〕

・月経異常を伴う諸疾患。
・子宮及びその付属器の炎症
・子宮出血妊娠時の下血、産後の諸症
・甲状腺腫、乳腺腫瘍、痔疾、虫垂炎、蕁麻疹、湿疹、葡萄膜炎など

・便秘なら加大黄、シミあれば加苡仁

治療百話5集、p369、矢数道明

使用目標
体力はしっかりとして充実
赤ら顔、多血質、脈も腹も充実して力がある
臍の左から下にかけて、or、下腹部全体に抵抗・圧痛が認められる
皮膚も筋肉もふとって緊張有り
訴えは多血質によるもので、のぼせ症、頭痛や頭重、肩こり、めまい、下腹の膨満感、時に痛みを訴え、
下腹部の鬱血のため脚への血行が阻害され足が冷えたり浮腫を来したりすることが多い

応用  多種多様に応用される、大きく5つに分けられる

1、婦人科的疾患
現代の病名では、子宮内膜炎、実質炎、子宮周囲炎、卵巣炎、月経不順、月経困難症、月経過多症、
月経閉止、代償月経、胎盤の残留、お腹の中で死亡した胎児の分娩、後屈や前屈など子宮の位置異常、
子宮筋腫の初期、などで流産癖のあるもの、または更年期障害や血の道症など

2.皮膚病
瘀血が表面に現れたものととらえる。紫斑病、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎、にきび、シミ、手掌角皮症、脱疽、
打撲傷、下肢静脈血栓症、イボなど

3.神経性疾患
瘀血による神経症、ノイローゼ、ヒステリー、躁鬱病、メニエール病、いわゆる血の道症や更年期障害に
現れる自律神経失調症など、これらは瘀血の改善で軽快する

4.眼科領域
瘀血に起因するのも、麦粒腫、眼瞼炎、フリクテン、虹彩炎、眼底出血、中心性網膜炎、ベーチェット病にも応用

5.その他雑病
瘀血によって起こった虫垂炎の軽症のもの、痔疾患、睾丸炎、前立腺肥大症、動脈硬化症、高血圧症、
肝炎や坐骨神経痛、リウマチ、甲状腺腫、バセドウ病、喘息、排腸筋の痙攣、下肢静脈瘤、腹部大動脈瘤、
下肢血栓症、肥満体質者の足のむくみなど

方解

桂枝‥のぼせを引き下げて気血をよくめぐらし、凝りや塊を軟かくし
茯苓‥水分の停滞をめぐらし、浮腫を去り、動悸を鎮め、めまいを治し
桃仁‥血液の停滞をめぐらして血行をよくし、便通をつけて、消炎、解熱の作用がある
牡丹皮‥凝り固まった瘀血を去り、血熱をさまし、殺菌の作用を有す
芍薬‥血の滞りをめぐらし凝りを軟わげ、筋肉の痙攣を緩解し、鎮痛、鎮痙の作用がある

5つの生薬の総合的な作用より、下腹部に停滞凝血した瘀血を和らげてめぐらし、炎症を去り、
疼痛を緩解し、瘀血によって起こった色々な症状を治す