〔出典〕
【傷寒論】《太陽病下篇》
・156.傷寒五六日.嘔而発熱者.柴胡湯証具.而以他薬下之.柴胡証仍在者.復與柴胡湯.
此雖已下之.不為逆.必蒸蒸而振.却発熱汗出而解.若心下満而鞕痛者.此為結胸也.
大陷胸湯主之.但満而不痛者.此為痞.柴胡不中與之.宜半夏瀉心湯.
【金匱要略】《嘔吐暍下利病篇十七》
・嘔而腸鳴.心下痞者.半夏瀉心湯主之.
〔構成〕
半夏半升.洗.黄芩.乾姜.人参.甘草炙.各三両.黄連一両.大棗十二枚擘.
右七味.以水一斗.煮取六升.去滓.再煎取三升.温服一升.日三服.須大陷胸湯者.方用前第二法.
(半夏3.黄芩2.乾姜1.人参2.甘草2.黄連1.大棗2.)
〔方意〕
・心下痞硬し、腹中雷鳴する者(大簇)(方機)
・嘔して腸鳴し、心下痞硬する者(大簇)(方機)
・心中煩悸し或は怒り、或は非傷する者(紫円)(方機)
・心下痞硬し腹中雷鳴の者を治す。(方極)
・心煩し、心下痞硬し、腹中雷鳴し、若しくは乾嘔する者を治す(方極附言)
〔病位〕少陽の準位で、虚実の間
〔脈侯〕ほとんど変化がないが、時に弦、あるいは沈微緊
〔舌侯〕口内やや乾燥、または湿潤、ときに微白苔
〔腹侯〕瀰漫するが硬くはない。胃部の抵抗圧痛と軽度の膨満感及び痞塞感(心下痞)
〔応用の勘所〕
・心下痞、悪心、嘔吐、腹中雷鳴、下痢で熱候がない
・三瀉心湯の中では嘔吐が主証
〔鑑別〕
生姜瀉心湯、甘草瀉心湯、黄連湯、黄芩湯、小柴胡湯、茯苓飲、茯苓沢瀉湯、
人参湯、呉茱萸湯、四逆散、旋覆花代赭石湯、小半夏加茯苓湯、附子粳米湯など
〔応用〕
・胃腸カタルで嘔吐が強いが、多くは熱候のないもの、胃下垂症、胃アトニー、下痢性疾患
・三瀉心湯の中で、本方証はおおむね嘔が主証
心下痞(硬)、心下痞塞感、嘔吐(嘔気)、下痢傾向、腹中雷鳴(腹痛と言うよりも腹鳴)、
悪心、呑酸、気、心窩部痛、食欲不振、胃内停水、脈弦やや緊、発熱無し、
白苔著明で多い(時に黄苔)、芝刺(赤い点々が多く舌に見える)、口渇
腹痛はそう激しくない、腹痛激しければ→黄連湯
熱症状‥口苦、喉が渇く、口内炎、舌苔黄
寒症状‥下痢、腹痛、腹鳴などは軽度、暖かい飲食を好む
湿症状‥口粘る、下痢、嘔吐、舌苔膩、雨の日に悪いことも
熱と寒は半々なのでどちらかが強いものは不適
ゲップが強いときは+四逆散か生姜瀉心湯、旋覆花代赭石湯、
便秘あれば調胃承気湯を加える