69.五苓散

〔出典〕

【傷寒論】

71.脉浮.小便不利.微熱消渇者.(太陽中篇)
72.發汗已.脉浮數煩渇者. (太陽中篇)
73.傷寒汗出而渇者.(太陽中篇)
74.有表裏證.渇欲飮水.水入則吐者.名曰水逆.(太陽中篇)
163.心下痞不解.其人渇而口燥煩.小便不利者.(太陽下篇)
398.霍亂.頭痛發熱.身疼痛.熱多欲飮水者.五苓散主之.(霍亂病篇)

【金匱要略】

・假令痩人.臍下有悸.吐涎沫而癲眩.此水也.五苓散主之.(痰飮嗽病篇)
・脉浮.小便不利.微熱消渇者.宜利小便發汗.五苓散主之.(消渇小便利淋病篇)
・渇欲飮水.水入則吐者.名曰水逆.五苓散主之.(消渇小便利淋病篇)

〔構成〕薬局製剤

・猪苓十八銖.去皮.澤瀉一兩六銖.白朮十八銖.茯苓十八銖.桂枝半兩.去皮.
・右五味.擣爲散.以白飮和.服方寸匕.日三服.多飮煖水.汗出愈.如法將息.
(猪苓3.0 澤瀉4.0 白朮3.0 茯苓4.0 桂枝2.5  湯)
(猪苓1.1 茯苓1.1 沢瀉1.9 桂皮0.8 白朮1.1 以上末1日量、分3)

〔方意〕

・大いに汗出でて煩燥し、小便不利し、身熱し、消渇する者正症なり。発汗して脈浮数にして
 煩渇する者もまた用うべし。(方機)
・発熱して煩渇し、水を飲まんと欲し、水口に入れば則ち吐する者(紫円)発熱して
 小便数なる(発汗と同意なり)者或は渇して水を飲まんと欲する者。(方機)
・頭痛し発熱し汗出で悪寒し身疼痛して水を飲まんと欲する者。(方機)
・発熱し嘔吐し下利し渇して水を飲まんと欲する者(紫円)。(方機)
・心下悸して、涎沫を吐し、頭眩する者(紫円)。(方機)
・消渇、小便不利し、若しくは渇して水を飲まんと欲し、水入れば則ち吐す者を治す(方極)

〔病位〕少陽の準位で、実の状態が多くはない
〔脈侯〕浮、浮数、あるいは浮弱
〔舌侯〕多くは乾燥し、微黄ないしは微白苔のある事がある
〔腹侯〕微満、あるいは軟で、これを按ずれば微力あり、胃部振水音を認めることが多い


〔応用の勘所〕渇、尿利停滞、発汗傾向、渇して水を飲み、水が入れば吐く

〔鑑別〕茯苓甘草湯、猪苓湯、越婢加朮湯、白虎加人参湯など

〔応用〕
・感冒、流感、水瀉様下痢、胃拡張、胃アトニー症、胃下垂、熱射病及び日射病、腎炎、ネフローゼ、
 膀胱炎、尿毒症、心臓性浮腫、癲癇、メニエル、船暈、夜尿症、糖尿病、小児の吐乳、
 慢性頭痛または片頭痛など


脈、腹力は中等度より弱、頬が赤みを帯びている
表証+裏の駆水
上衝
・水毒証:小便不利(時に自利)、渇、胃内停水、浮腫、下利、嘔、水逆
・表 証:脈浮、頭痛、発熱悪寒、
自汗(桂枝二越婢一湯や麻杏甘石湯に比べてしとしと出る)
伊藤道斉の主証治方実訣には
  「①発熱、②頭痛、③頭眩、④嘔吐、⑤疼痛、⑥煩、⑦汗、⑧渇、⑨下痢、
   ⑩小便不利、⑪心下痞、⑫臍下悸、⑬眠るを得ず、⑭乾燥、⑮涎沫を吐す
」  とある

臨床応用は広く口渇、嘔吐、下痢、水逆、急性胃腸炎、二日酔い、溜飲証、
頭痛、偏頭痛、メニエル、暑気あたり、乗り物酔い、慢性腎炎、ネフローゼ症候群などに利用する