尾台榕堂自家製剤  

和訓 類聚方広義 重校薬徴 付録2
吉益東洞原著、尾台榕堂校註、
西山秀雄訓訳 創元社刊 第4刷 を底本としました。
漢字も一部現代字にしていますね了承願います。

大簇丸(たいそうがん) 乃ち人参大黄丸なり。
〇腹満、心下痞硬、飲食停滞、大便難を治す
大黄40銭、黄芩20銭、人参20銭
右三味擣(=搗)篩して末となし、糊丸梧桐子大の如くし、毎服30丸、白湯にて之を下す。


夾鐘(きょうしょう)丸(夾鐘円)  乃ち硝石大円なり、今当帰を去る。
〇腹中に結毒あり。或は心下痞硬する者を治す。
大黄24銭、硝石18銭、人参6銭、甘草6銭
右四味各々別に杵きて散となし、苦酒3合を以て先に大黄を入れ、煮て2合に作り諸薬を入れて
飴状の如くし、火より下ろし冷ます。硝石を入れ、之を杵きて膏丸となし、梧桐子大の如くし、
毎服30丸、之を飲用す。杶按ずるに、古今の方家硝石を用いると称し煙硝の硝石を以てす。
非なり、此の硝は水硝の硝なり。


姑洗(こせん)円(姑洗丸)  乃ち控喘丹(控涎丹か)なり
〇諸痰飲、水毒を治す。
甘遂、大戟、白芥子各等分
右三味杵て篩い末となし、蜜丸梧桐子大の如くし、毎50丸、生姜湯を以て之を服す


仲呂丸(ちゅうりょがん)  乃ち如神丸なり
〇水毒、大小便不通の者を治す
大黄6両、甘遂、牽牛子各3両
右三味杵て篩い末となし、糊丸緑豆の如くし、毎服20丸、白散にて之を下す。



蕤賓丸(ずいひんがん)  乃ち平水丸なり
〇脚気腫満、大便せざる者を治す
商陸4両、甘遂2両、芒消、芫花、呉茱萸各3両
右五味を末となし、蜜丸梧桐子大の如くし、飲服すること3丸、日に3回


夷則丸   乃ち海浮石丸なり
〇腹満せず、その人我満すと言う者を治す
海浮石、大黄、桃仁各等分
右三味杵て篩い、糊丸梧桐子大の如くし、毎30丸、白湯にて之を服す。知らざれば稍々之を加う


南呂丸   乃ち滾痰丸(こんたんがん)なり、今甘遂を以て沈香に代う
〇諸痰飲、咳嗽、大便不通なる者を治す
黄芩4両、甘遂、青礞石(緑泥片石のこと)各2銭、大黄8銭
右四味、杵きて篩い末となし、梧桐子大の如くし、毎服20丸、日に三服、或は340丸に至る。
温水にて之を下す。礞石を製するの法、青礞石、焰(えん)硝各等分を土器中にて煆過し金色
となるを以て度となす。研飛して晒し乾し用ゆ。(注 焰=焔)


黄鐘散   乃ち芎黄散なり
〇諸上衝変転して治せざる者を治す
大黄3両、川芎6両
右二味杵いて篩い末となし毎服6分、酒或は湯にて送下す。
治せざれば稍1銭を加う。下るに至を以て度となす。若し結毒、痼疾ある者は毎夕臥するに臨んで之を服す。


黄鐘丸   乃ち三黄丸なり
〇大便難、煩悸して心下痞する者を治す
大黄40銭、黄芩、黄連各20銭
右三味杵いて篩い末となし、糊丸梧桐子大の如くし、毎服230丸白湯にて送下す。下るを以て度となす。
若し急に之を下すときは即ち酒にて之を服す。


紫円   本蜜を以て之を煉る。今之を糊丸とす。或は蜜丸にて之を用う。
〇胸腹の結毒或は胸満大便難、水毒ある者を治す
代赭石、赤石脂、巴豆各20円、杏仁4銭
右四味、先ず二味を杵きて末となし、別に巴豆、杏仁を研り中に入れて合治し、糊丸緑豆大の如くし、
病症の深浅を量って之を服す。12分より1銭に至るを度となす。若し差えざる者あれば毎日之を服す。
或は5丸或は10丸、
若し赤石脂なきときは即ち塩蔵鉄粉を以て之に代う。
  〇塩蔵鉄粉を製するの法
   上鉄屑2銭、食塩2分、之を攪し、密器に之を蓄え、封蔵すること十日、諸を床下地上に置き、
   取り出して之を研り、水飛して晒し乾し以て赤石脂に代う。


再造散、三因方、通天再造散による
欝金2.5 皀角刺、白牽牛子、伯州散(元は反鼻を用う)各6.0 大黄5.0
右散と為し、1回2.0~4.0 1日1-3回


再造散
欝金5銭、皀角刺1銭、大黄10銭、牽牛子6銭、反鼻6銭
治、大風、癥毒を治す。新湖痼を択ばず此を服して可なり。


参連湯
人参、黄連各2.0~4.0
右水一合を以て5勺に煎じ、滓を去り、頓服す


鼹鼠丸。鼹鼠散
鼹鼠霜
右一味、温湯にて送下す
黴毒にして、諸薬効なく、骨節疼痛する者を治す


龍葵丸(龍葵散)
軽粉、巴豆(各3両)龍蔡(10両を霜と為す)
修治は梅肉散の如くす
一身発瘡し(痒痛し)或は疼痛する者を治す


硝石大円(一名夾鐘円)
大黄(20銭)、消石(15銭)、甘草、人参(各5銭)
右4味、各別に末と為し、苦酒6合を以て、先ず大黄を煮て、2合を減じ、甘草、人参を内れ、
更に煮て飴状の如くし、火を下し、乃ち硝石を内れ、之を撹して丹と為し、兎糞大の如きを飲服す。
(苦酒6合を3合に作るあり。)
腹中結毒、心下痞硬する者を治す。


七宝丸
黄連(4両)
研し細末と為し、猪胆1個を洗って、其の中に薬末を入れ、綿を以って之を縫い、
童便5升を以って文火に上し、
之を煮たる後、乾かし細砕し、硃砂、麝香を衣として梧桐子大の丸薬とす。
骨蒸、伝層、邪気の陽病に属するものを治す。


嚙(ロが石)砂散(医宗金鑑方) 
滷(氵が石)砂(1銭)、軽粉、雄黄(各3分)、冰片(5厘)
研して細末と為し、清水を以て服用。
耳痔、耳甍、耳梃を治す
※手持ち辞書にこの字なし:嚙(ロが石)、滷(氵が石)硼の硼の字かも


梅肉散
梅肉、塩蔵する者を霜となす。梔子霜(各7分5厘)巴豆、軽粉(各2銭5厘)
右4味、別に巴豆を研り泥を作り、3味に入れ散となし、毎服2分或3分、病重き者は1銭を服す。
熱湯にて之を送下す。諸悪瘡、結毒、及び下疳毒を治す。


梅肉丸
梅肉、梔子(各1銭半)焼いて性を存す。巴豆、軽粉各7分。
右4味細末とし、共に和し、搗くくこと千回。
治。悪瘡毒、疳瘡、無名の頑瘡、黴毒、便毒、疥癬、沈痼内攻の症。



伯州散。乃ち『大同類聚方』の伯耆薬なり。
蝮蛇、蟹、鹿角(各等分)
右3味、各焼いて霜と為し、合法し、酒にて毎服9分。
毒腫、膿ある者を治す。


処方、主治の詳かならざるもの

七宝承気丸。
十乾承気丸。
十乾丸。
陥胸丸。
消塊丸。
十棗丸。
鉄砂煉。

上記の各処方の解説は大体に於て、東洞先生家塾方(村井杶校定)に拠る。尚本書に記載なきも、
左記家塾方を参考の為、記録す。


林鐘丸。乃ち甘連大黄丸なり。
心煩し大便せざる者を治す。
大黄(6両)甘草、黄連(各2両)
右3味、杵きて篩い、末と為し、糊丸、梧桐子大の如くし、毎服30丸、白湯にて之を送下す。


無射丸(ぶえきがん)。乃ち牡蛎角石散なり。
諸瘡瘍膿出でて止まざる者を治す。
牡蛎、鹿角霜(角1銭)、軽粉(五分)
右3味の内にみ2味を杵き篩い、末と為し、軽粉を以って鶏子白に合治し、
煉りて膏となし、瘡上に貼る。


大呂丸。乃ち備急円なり。今糊を以って丸ず。
大黄、乾姜、巴豆(各等分)
右3味、先ず2味を杵いて末と為し、別に巴豆を研り合治して、糊丸緑豆大の如くし、
毎服1、2丸、下るを以って度と為す。知らざれば稍加う。


七宝丸
黴瘡結毒及び痼疾、骨節疼痛、諸の治すこと能わざるを治す。
牛膝、軽粉(各2銭)、土茯苓(1銭)、大黄(8分)、丁字(5分)
右5味、合して杵き、篩いて末と為し、糊丸緑豆大の如くし、1日8分、分ちて2服となし、
毎4分を朝夕白湯にて之を服す。凡そ6日又7日、結朝後方を服す。


七宝丹
牛膝、軽粉(各2銭5分)、鷄舌香(5銭)、遺糧(1銭半)、大黄(8銭)
右5味、糊丸と為す


後七宝丸
巴豆、丁字(各2銭5分)、大黄(4分)
右3味、先ず丁字、大黄を末と為し、別に巴豆を研り、中に入れ合治して糊丸、
緑豆の如くし、凡そ前方を服すること6日乃至7日にして結朝此方を服す。
1服1銭温湯を以って之を服す。日に1回。


滑石礬甘散。淋痛、小便不利する者を治す。
滑石、礬石(各6両)、甘草(3両)
右3味、杵て篩い末と為し、毎服1銭温湯にて之を下す。


鉄砂散。黄胖病を治す。
鉄砂、蕎麦粉(各12銭)、大黄(6両)
右3味、2味を杵て篩い、末と為し、蕎麦粉を和し水を以って之を煉り、
丸じて緑豆大の如くし、毎服1銭、清酒を以って之を下す。日に3。


桃花湯。浮腫、大小便不通の者を治す。
桃花(2銭)、大黄(1銭)
右2味、水2合を以って先に桃花を入れ、煮て1合2勺を取り、
大黄を入れ煮て6勺を取り、頓服す。


小瘡摺方。諸疥癬及び臁瘡を治す。
巴豆、卑麻子(各1銭)、大黄(5分)
右3味、先に2味を研り泥となし、大黄末を入れ綿布にて包み、暖酒中に浸し、
之を摂ること1日5度より7日に至って止む。
8日詰朝温湯に浴すること1日7回にして愈ゆ。若し愈えざれば前方の如くす。


薏苡仁円。小兒の頭瘡及び胎毒、諸毒を治す。大人も亦治を得。
薏苡仁(10銭)大黄(5銭)土茯苓(20銭)
右3味、杵て篩い末と為し、蜜丸弾丸子大。毎1丸、日に3回。


掌善医院方函雑方(奥田家の常用した薬方の一部)

漢方古方要方解説
奥田謙蔵著
医道の日本社刊、第5刷を参考

藿香散(家方)
藿香 益知 縮砂各3.
右3味を1包と為し、水1合を以て、煮て6勺を取り、滓を去りて頓服す。
頭痛、眩暈を発する諸病にして、熱性症候無く、或は下肢寒冷にして頭面熱し、或は宿酔いにして
嘔気、嘔吐を発し、頭重し、身体倦怠を覚ゆる等の者を治す。


白桃花湯(家方)
白桃花(新鮮なるものを蔭乾しと為し用ふ)6.黒丑(即ち黒色の牽牛子)2.大黄2.甘草0.8
右4味を1包と為し、水1合2勺を以て、煮て6勺を取り、滓を去りて頓服す。
脚気水腫、及び爾余の水腫を発する諸疾患を治す。


消滞丸(家方)
大黄10、枳実、神曲各5.茯苓、朮、黄芩、黄連各3.沢瀉2.
右8味、各別に細末にし、糊にて丸と為す
1回2.0乃至4.0。瀉下するを以て度と為す。


烏頭丸(家方)
烏頭4、甘草8.
右2味、各別にし蜂蜜を以て、麻子大の丸と為す。
1回2、3丸。証に由り稍や増す。
悪寒し、四肢冷え、或は筋攣骨痛し、或は腹中絞痛し、或は下痢し、脈沈細にして熱候なき諸症を治す。
凡そ諸種の疾病にして、所謂附子の証を現す者には、皆此の方を其の主方の兼用と為すことを得。


回生散(家方)
熊胆2、麝香1、葛粉(今、澱粉を用ふ)20
右3味、各別に研磨し、混和して散と為し、白湯或は冷水を以て、1回0.2乃至0.5を服用す。


朱蓬蜜(家方)
朱砂(即ち辰砂)1.2 蓬砂(即ち硼砂)2.0 竜脳1.0
右3味、各別に細末にし、合して散と為し、蜂蜜適宜を混和して、之を患処に塗布す。
口内腫痛し、或は舌、歯齦等に瘡を生じ、流涎、疼痛甚だしき諸証を治す。